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静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~

あきや

31.ある鍛冶屋の日常

刀を打つ。
この刀の中には【滴】がある。

この【滴】はとても頑固や。
せやからこそ、少し機嫌を損ねただけで簡単に消えてまう。
儚いもんや。

儂はその【滴】を壊さんよう、慎重に打つ。

本当はこいつにも、今より馴染む姿がある。
淀ませちゃァ、もったいねェ。

儂はこの【滴】が流れたい方へ流れられるように、少しずつ形を変えていく。
これが儂の仕事や。

「こんにちは」
ふと声をかけられる。
彼女や。

「今手が離せねェ。そこでいつも通りやっといてくれや。」
「うん」
彼女は椅子に座り、ナイフを手に取る。
そしてそのナイフで指先を切る。
血が滴る。

いつもの【献血】や。
儂はその光景には目もくれん。
今はただ目の前の【滴】に集中するだけや。

しばらくして、十分な血がたまる。
その瞬間、ピタッと血が止まる。
その指に傷の跡はない。
見慣れた光景や。
彼女は【癒し】の【滴】を持っとる。
「それじゃ、あとはよろしく。
 これ、少ないけど仕事料ね。」
「ああ、まいどあり。」
儂は顔も動かさずに答える。

今、目の前の【滴】から目を離すわけにはいかん。
これは大金がかかった仕事や。
儂はこの頑固なへそ曲がりの気分を損ねんよう、慎重に研いでいく。

完成や。
儂はその刀を手に取り、目の前の作業台を斬る。
手ごたえなし。
作業台にも、一切の傷がない。
次に壁に掛けてあった牛革を斬る。
真っ二つに裂ける。
成功や。

さて、これで面倒な仕事は終わった。
あとは楽しい趣味の時間やで。

儂は彼女の置いていった金を取り、奥へしまう。
あの刀の仕事料に比べたら、端金もいいとこや。
貰えるもんは貰うんやがな。

そして彼女の置いていった血を見る。
きれいな【滴】や。
これを弄っているとき、心が透き通っていくような感覚になる。

次は【万能薬】の精製や。

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