静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~
27.できること
口話法の練習を始めてから、数日経った。
練習の結果、日常会話で使うくらいの単語なら、
クリシから合格をもらえるようになった。
我ながら物覚えがいいと思う。
もしかすると、記憶喪失というのは本当で、エピソード記憶は失われてしまったけど、
話し方といった手続き記憶は何となく覚えているということなのかもしれない。
ともかく、私にはこの方法を使って話したい相手がいる。
馬車の揺れが止まり、クリシが私の手をなぞる。
[着きました]
学校だ。
ちなみに大勢の人の前ではあまり口話法を使わないことになった。
別にやましいことはないのに。
クリシに連れられて、学校に入る。
早速覚えた発音を使って、挨拶をしてみよう。
「こんにちは」
カロさんの手が私に触れる。
[驚きました。まさかこんなにはっきりと言葉を話されるなんて。
 どうやって学んだのですか?]
[それは秘密です。
 ちょっと話をしたい子がいるのですが、いいでしょうか?]
[もちろんです]
[ありがとう。
 その子を探すために、またみんなに触らせてもらいますね。]
[はい]
小さな手が私に触れる。
私はその子達の頭に触れ、目的の子を探す。
いた。
[この子の名前はなんて言うの?]
[シディです。
 彼ですか?]
[はい。
 この子を借りていきますね。
 長い話になるので。]
[わかりました]
私はシディ君の手を引き、付いて来るように促す。
そして馬車に乗り込む。
[シディは不安を感じているのか、緊張しているようです。
 僕の方から状況を説明させていただきます。]
[お願い]
[実はエク様は『触れた相手の前世を見る』という奇跡を持っているんだよ。
 その力を使って学校の子供たちの前世を見ていたんだけど、
 特に君の前世は興味深かったみたいなんだ。]
クリシが私の手をなぞり続ける。
どうやらシディ君に話すことを、私にも伝えるつもりらしい。
そんなに気を使わなくてもいいのに。
[僕たちはこれから屋敷のエク様の部屋に行くよ。
 そこで君の前世を調べるために、エク様は時間をかけて君に触れることに……
 いや、触れるといっても、変なことをするわけじゃないから!
 そんな緊張しないで!]
シディ君はかなり緊張しているらしい。
危険な趣味を持っている悪役令嬢に拉致されたと思っているのかもしれない。
好感度を上げなくては。
馬車の揺れがとまる。
どうやら着いたようだ。
馬車を下り、部屋に移動する。
そしてベッドに座り、シディ君も隣に座るように促す。
ここでなら思う存分口話法を使える。
「ちょっと唇に触るね。」
指先をシディ君の唇に当てる。
とりあえず、それだけでいい。
簡単な言葉であれば、唇の動きと状況で、何を喋ったのかわかるように訓練したのだ。
少年の口内の感触を味わってみたいけど、やめておこう。
私は決して、少年を拉致して指先を舐めさせるのが趣味の悪役令嬢ではない。
「喋ってみて」
「あの、頑張ります。」
何を?
「君は頑張らなくていいんだよ」
「すごい!本当にわかるんですね!」
いいリアクションだ。
練習した甲斐がある。
「ありがとう。それじゃあ早速だけど、前世を見させてね。」
「はい」
私はシディ君の前髪をかき上げ、おでこの位置を確かめる。
そしてそこに、自分のおでこを近付ける。
イメージが流れ込んで……
来ない。
というか、シディ君の感触が無くなった。
クリシが私に触れる。
[シディがダウンしました。瞬殺でしたね。]
まるで頭突きでもしたかのような言いようだ。
そんなに強くぶつかった?
いや、きっとそういうことではないんだけど。
シディ君からしたら、(たぶん)きれいな令嬢のお姉さんが、
急にキスを迫ってきたという状況に見えたのかもしれない。
私からは見えないから、あまり意識はしなかったのだけど。
急ぎ過ぎた。
とりあえずゆっくりとシディ君の回復を待とう。
練習の結果、日常会話で使うくらいの単語なら、
クリシから合格をもらえるようになった。
我ながら物覚えがいいと思う。
もしかすると、記憶喪失というのは本当で、エピソード記憶は失われてしまったけど、
話し方といった手続き記憶は何となく覚えているということなのかもしれない。
ともかく、私にはこの方法を使って話したい相手がいる。
馬車の揺れが止まり、クリシが私の手をなぞる。
[着きました]
学校だ。
ちなみに大勢の人の前ではあまり口話法を使わないことになった。
別にやましいことはないのに。
クリシに連れられて、学校に入る。
早速覚えた発音を使って、挨拶をしてみよう。
「こんにちは」
カロさんの手が私に触れる。
[驚きました。まさかこんなにはっきりと言葉を話されるなんて。
 どうやって学んだのですか?]
[それは秘密です。
 ちょっと話をしたい子がいるのですが、いいでしょうか?]
[もちろんです]
[ありがとう。
 その子を探すために、またみんなに触らせてもらいますね。]
[はい]
小さな手が私に触れる。
私はその子達の頭に触れ、目的の子を探す。
いた。
[この子の名前はなんて言うの?]
[シディです。
 彼ですか?]
[はい。
 この子を借りていきますね。
 長い話になるので。]
[わかりました]
私はシディ君の手を引き、付いて来るように促す。
そして馬車に乗り込む。
[シディは不安を感じているのか、緊張しているようです。
 僕の方から状況を説明させていただきます。]
[お願い]
[実はエク様は『触れた相手の前世を見る』という奇跡を持っているんだよ。
 その力を使って学校の子供たちの前世を見ていたんだけど、
 特に君の前世は興味深かったみたいなんだ。]
クリシが私の手をなぞり続ける。
どうやらシディ君に話すことを、私にも伝えるつもりらしい。
そんなに気を使わなくてもいいのに。
[僕たちはこれから屋敷のエク様の部屋に行くよ。
 そこで君の前世を調べるために、エク様は時間をかけて君に触れることに……
 いや、触れるといっても、変なことをするわけじゃないから!
 そんな緊張しないで!]
シディ君はかなり緊張しているらしい。
危険な趣味を持っている悪役令嬢に拉致されたと思っているのかもしれない。
好感度を上げなくては。
馬車の揺れがとまる。
どうやら着いたようだ。
馬車を下り、部屋に移動する。
そしてベッドに座り、シディ君も隣に座るように促す。
ここでなら思う存分口話法を使える。
「ちょっと唇に触るね。」
指先をシディ君の唇に当てる。
とりあえず、それだけでいい。
簡単な言葉であれば、唇の動きと状況で、何を喋ったのかわかるように訓練したのだ。
少年の口内の感触を味わってみたいけど、やめておこう。
私は決して、少年を拉致して指先を舐めさせるのが趣味の悪役令嬢ではない。
「喋ってみて」
「あの、頑張ります。」
何を?
「君は頑張らなくていいんだよ」
「すごい!本当にわかるんですね!」
いいリアクションだ。
練習した甲斐がある。
「ありがとう。それじゃあ早速だけど、前世を見させてね。」
「はい」
私はシディ君の前髪をかき上げ、おでこの位置を確かめる。
そしてそこに、自分のおでこを近付ける。
イメージが流れ込んで……
来ない。
というか、シディ君の感触が無くなった。
クリシが私に触れる。
[シディがダウンしました。瞬殺でしたね。]
まるで頭突きでもしたかのような言いようだ。
そんなに強くぶつかった?
いや、きっとそういうことではないんだけど。
シディ君からしたら、(たぶん)きれいな令嬢のお姉さんが、
急にキスを迫ってきたという状況に見えたのかもしれない。
私からは見えないから、あまり意識はしなかったのだけど。
急ぎ過ぎた。
とりあえずゆっくりとシディ君の回復を待とう。
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