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静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~

あきや

23.村

[村へ行く準備ができました。
 案内いたします。]
[よろしくね]
いよいよ外に出る許可をもらった。
もうクリシの補助さえあれば、かなりいろいろなことができるようになった。
私は危なげなくクリシの後をついていく。

[こちらの馬車にお乗りください]
私はクリシに促された通り、馬車に乗り、座る。
すると、知らない大きな手が私に触れる。
[スタシモティタです。
 私も同行します。]
スタシモティタというと、あの時を止めるという奇跡の担い手だ。
頼もしい。
[私のわがままに付き合わせてしまって、ごめんね。]
[それが役目です]
その少しぶっきらぼうだと感じるような一言で、会話が止まる。
これ以上の言葉は不要ということか。

スタさんと呼ぶことにしよう。
時を止める強キャラでぶっきらぼうなスタさん。
しっくりくる。

しばらくすると、背もたれに押し付けられる力を感じる。
馬車が動き出したようだ。

この移動はどれくらいかかるんだろう?
クリシの手を取る。
[村にはどれくらいで着くの?]
[5分程です。すぐですよ。]
すぐ近くだった。
[それくらいだったら歩きでもよかったんじゃないの?]
[いえ、食料を調達する必要があるので。
 それに何よりエク様が徒歩で村に来るなんて、いくら何でも威厳に欠けます。]

また中世身分カルチャーショックが発生。
私には不思議だけど、そういうものらしい。

[着きました。
 ここは貧しい子供たちを引き取り、言葉を教えるところです。]
馬車から降り、クリシに連れられて歩く。
女性の手が私に触れる。
[ようこそいらっしゃいました。
 私はここで教師をしています、カロと申します。
 いつか貴女に感謝を伝えたいと思っていました。
 この仕事がなければ、私は今頃どうなっていたか……
 貴女には感謝してもしきれません。]

また身に覚えのない感謝をされてしまう。
決して裏のない、心からの感謝のはずだけど、どうしても違和感を感じてしまう。

[貴女こそ、協力してくれて助かってますよ。]
[そんなお言葉を頂けるなんて、光栄の限りです。
 どうか子供たちにも触れてやってください。
 話し言葉はそれなりに覚えたのですが、まだ文字は知りません。
 ですが、貴女に触れられるだけでも喜ぶはずです。]

なんだかやたらと期待が重くて、ちょっと怖い。
けれど、どうやら触ってあげるだけで越えられるハードルらしい。
この好感度チートには感謝です。

小さな手が触れる。
私はその手と握手をする。
そして頭を撫でる。
同時にイメージが流れ込んでくる。

頭に触れても意識が飛ばないようになってきた。
私は私のまま、色々な世界を見る。
現代、中世、近未来、原始、宇宙。
科学、魔法、超能力、奇跡。
時に人として、時に獣として、時に植物として、色々な能力や権力を手にしている。
しかしなんだか、大きな力を使わなければいけない記憶ほど、悩みが深く苦しい気がする。
逆にクリシの前世のような記憶を見つけては、和む。

クリシが触れる。
[これで一通り触れたようです。
 体は大丈夫でしょうか?]
[大丈夫だよ]
[そうですか。あまり無理をしないでくださいね。
 他に行きたいところはあるでしょうか?]

ここに来たいと思ったのは、アピロスさんの前世を見たからだ。

[仕事をしている女性を知りたいな。]
[女性の仕事ですか……
 家事以外ですと、酒場なんかになってしまいますが……]
[じゃあ酒場に行こう]
[わかりました。案内します。]
クリシに連れられて、馬車に乗り込む。

突然クリシが私を抱きしめる!
何事!?
直後、強烈な突風が吹き付ける!
私とクリシは馬車から投げ出され、地面に落ちる。
クリシを下敷きにするように倒れてしまった。
[大丈夫?何が起きたの?]
クリシはよろめきながら立ち上がる。
[魔獣。逃げよう。]
クリシは簡潔に返事をして、私の手を引き走り出す。

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