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静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~

あきや

22.静かなところ

[せっかく来たんだし、手伝ってもいい?]
[気持ちは嬉しいけど、さすがにその恰好はまずいと思うぞ]
断られてしまった。
私にはいまいちどんな格好なのかわかっていないのだけど、作業着ではないのはわかる。
[代わりと言っちゃなんだが、取れたて野菜でも食っていくか?
 この葉っぱなんかはうまいぞ。]
アピロスさんからキャベツの葉を一枚渡される。
その表面をなで、感触を確かめる。
虫食いのない、みずみずしくしっかりした葉のようだ。
食べてみる。
シャキシャキした触感と共に、果汁のように甘い汁が口に広がる。
想像以上に美味しい。

そういえば前世でも今世でも、取れたてのキャベツを食べるのは初めてだ。
私はキャベツのポテンシャルを見くびっていたらしい。

[とてもおいしい!]
[そいつはよかった。
 これなんかもうまいぞ。]
そう伝えると、アピロスさんはたくさんの葉を渡してきた。

こういうおばちゃん、田舎の畑に居そう。

[ありがとう。
 でももう十分だよ。]
[そうか。
 欲しくなったらいつでも来いよ。
 それじゃ、アタイは収穫に戻るな。]
[邪魔しても悪いですし、僕たちは庭の散歩でもしましょうか。
 庭と言っても、コリー様は倹約家ですので、あまり華やかなところではありませんが。]

私にはそれが見えない。
見た目が派手でも質素でも、どちらでも変わらない。

[いいよ。行こう。]

クリシと共に、柔らかい地面を歩く。
見えなくても、光輝く太陽から、強い日差しを浴びていることがわかる。
そういえばこちらに目覚めてから、こんなに太陽を浴びるのは初めてだ。

[少し休憩しましょうか]
しばらく歩いた後、クリシは立ち止まる。
そして私の手を動かし、何かに触れさせる。
椅子のようだ。
座って休もうということだろう。
私はその椅子に腰を下ろす。
クリシも隣に座っているらしい。

ここは日差しが柔らかい。
どうやら木陰のようだ。
ほんのり温かく、時々心地良い風が肌を撫でる。
見えなくても、鮮やかな木漏れ日と美しい自然が目に浮かぶ。
クリシの暖かい手を、右手に感じる。

とても静かなところだ。
本当はずっと、こういうところを求めていた気がする。

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