静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~
20.母
部屋に戻り、ベッドに横になる。
この感触に、すっかり安心感を感じるようになった。
母さんが私の手を取る。
[帰りながらクリシに話を聞いたわ。
 色々なものが見えてしまって、大変だったわね。]
もう既に色々伝わっているらしい。
たぶん犬の件は除いて。
[うん。だけど久しぶりに光や音を感じて、懐かしかったよ。]
[そうね。きっと光を失ったあなたに与えられた、ヒドリオ様の慈悲なのね。]
ヒドリオ様の慈悲か。
欲を言えば、もうちょっと素直な形で慈悲を示して頂ければ助かるのですが。
せめてコミュニケーションが取れるタイプの神であって欲しいです。
クリシが私に触れる。
[それでは、私はこれで失礼します。
 お大事になさってください。]
そう伝えて、クリシが私から離れる。
部屋で母さんと二人きりになったらしい。
[それで、その奇跡だけど、見えているあなた自身はどう感じるの?
 例えば予言的な光景が見えているとか、その人の深層心理が表れているとか、
 そう感じたりはするのかしら?]
予言に深層心理か。
確かにそうとも考えられるのかもしれない。
しかしやっぱり、前世説が一番しっくりくる。
なぜならまず、私自身に異世界での前世の記憶がある。
そして私が明確に前世を覚えているのも、この奇跡の力によるものだとすれば辻褄が合う。
何より、予言だとか深層心理だとすると、クリシが色々と危ない!
[やっぱり前世なんじゃないかと思うな。]
[そう。それなら、間違いないでしょうね。
 あまり父さんに変なことを言って、心配をかけないようにしなさい。
 それじゃ、私もこの部屋にいるから、何かあったらいつでも呼んでね]
しばらく見守ってくれるらしい。
そんなに重症ではないのだけど、大人しく休んでいよう。
それにしても、父さんの前世はなんとも複雑な記憶だった。
あの女の人は結局、裏切者だったのだろうか?
だとしたら、なぜ裏切る相手のプレゼントを大切に持っていたんだろう?
わからない。
母さんならどう考えるのかな?
私は「母さん」と声を出す。
もちろん自分では聞こえないし、
この世界において意味のある発音ではない。
しかし、それにこたえて母さんが私の手を取る。
[どうしたの?]
[父さんの前世が気になるんだけど、
 どうして敵の女の人は、裏切る相手のプレゼントを大切に持っていたのかな?]
母さんの動きが止まる。
すごく悩んでくれているらしい。
数十秒ほどたった後、母さんが答える。
[難しくて母さんにはわからないわ。
 貴女はどう思うの?]
逆に聞かれてしまった。
わからないから聞いているのに。
けれど、わかる範囲で想像してみよう。
[女の人は父さんのことを、本当に大切に思っていたんじゃないかな。
 本当は裏切りたくなんてなかったんだけど、立場が違うからそうするしかなくて。
 きっと本当は優しい人で、裏切るときもすごく悩んで、
 最後は父さんを殺せなかったんじゃないかな。]
母さんは答えない。
また何か悩んでいるらしい。
しばらくたった後、母さんが答える。
[そういうことかもしれないわね。
 私には全然わからなかったわ。
 父さんに似て、優しい子に育ったのね。]
そして母さんは、私を抱きしめる。
それはクリシや父さんのと比べると、少し遠慮がちなように感じた。
この感触に、すっかり安心感を感じるようになった。
母さんが私の手を取る。
[帰りながらクリシに話を聞いたわ。
 色々なものが見えてしまって、大変だったわね。]
もう既に色々伝わっているらしい。
たぶん犬の件は除いて。
[うん。だけど久しぶりに光や音を感じて、懐かしかったよ。]
[そうね。きっと光を失ったあなたに与えられた、ヒドリオ様の慈悲なのね。]
ヒドリオ様の慈悲か。
欲を言えば、もうちょっと素直な形で慈悲を示して頂ければ助かるのですが。
せめてコミュニケーションが取れるタイプの神であって欲しいです。
クリシが私に触れる。
[それでは、私はこれで失礼します。
 お大事になさってください。]
そう伝えて、クリシが私から離れる。
部屋で母さんと二人きりになったらしい。
[それで、その奇跡だけど、見えているあなた自身はどう感じるの?
 例えば予言的な光景が見えているとか、その人の深層心理が表れているとか、
 そう感じたりはするのかしら?]
予言に深層心理か。
確かにそうとも考えられるのかもしれない。
しかしやっぱり、前世説が一番しっくりくる。
なぜならまず、私自身に異世界での前世の記憶がある。
そして私が明確に前世を覚えているのも、この奇跡の力によるものだとすれば辻褄が合う。
何より、予言だとか深層心理だとすると、クリシが色々と危ない!
[やっぱり前世なんじゃないかと思うな。]
[そう。それなら、間違いないでしょうね。
 あまり父さんに変なことを言って、心配をかけないようにしなさい。
 それじゃ、私もこの部屋にいるから、何かあったらいつでも呼んでね]
しばらく見守ってくれるらしい。
そんなに重症ではないのだけど、大人しく休んでいよう。
それにしても、父さんの前世はなんとも複雑な記憶だった。
あの女の人は結局、裏切者だったのだろうか?
だとしたら、なぜ裏切る相手のプレゼントを大切に持っていたんだろう?
わからない。
母さんならどう考えるのかな?
私は「母さん」と声を出す。
もちろん自分では聞こえないし、
この世界において意味のある発音ではない。
しかし、それにこたえて母さんが私の手を取る。
[どうしたの?]
[父さんの前世が気になるんだけど、
 どうして敵の女の人は、裏切る相手のプレゼントを大切に持っていたのかな?]
母さんの動きが止まる。
すごく悩んでくれているらしい。
数十秒ほどたった後、母さんが答える。
[難しくて母さんにはわからないわ。
 貴女はどう思うの?]
逆に聞かれてしまった。
わからないから聞いているのに。
けれど、わかる範囲で想像してみよう。
[女の人は父さんのことを、本当に大切に思っていたんじゃないかな。
 本当は裏切りたくなんてなかったんだけど、立場が違うからそうするしかなくて。
 きっと本当は優しい人で、裏切るときもすごく悩んで、
 最後は父さんを殺せなかったんじゃないかな。]
母さんは答えない。
また何か悩んでいるらしい。
しばらくたった後、母さんが答える。
[そういうことかもしれないわね。
 私には全然わからなかったわ。
 父さんに似て、優しい子に育ったのね。]
そして母さんは、私を抱きしめる。
それはクリシや父さんのと比べると、少し遠慮がちなように感じた。
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