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静かなところにいる ~転生したら盲目難聴でした~

あきや

15.ある女の記憶

「姦淫の女だ!
 石打にしろ!
 投げない者はこの女の仲間と見なす!」

武装した男が叫ぶ。
目の前にいる群衆が、こちらに罵声を飛ばしながら、石を拾う。

どうやら記憶の主は、罪を犯して死刑に処されているらしい。

目の前の男の一人が、口を開く。
「この人を裁く資格があるのか?」
その一言により、騒がしかった辺りが一瞬で凍り付く。
「貴様、今何か言ったか?」
「お前にはこの人を裁く資格があるのか?
 彼女よりも罪のない、清く正しい人間なのか?
 彼女は体を売る以外に、生きる術をなくしただけだ。
 誰が彼女をここまで追い詰めた?
 この石を彼女に投げる資格のある者がいるのか!?」
「黙れ!
 お前はこの魔女に操られているな?
 こいつに構うことはない!
 早く石を投げろ!
 それとも、貴様らも魔女の手下か!?」
叫ぶような男の問いに、怯えた女が石を投げる。
それが合図かのように、一斉に石が飛んでくる。
「やめろ!
 おかしいと思わないのか!?」
その男は飛び出し、庇うように身をかがめる。
その姿に、石を投げていた連中が躊躇する。
「構うな!
 そいつは魔女の手下だ!
 やれ!」
その声で、再び石が投げられる。
もう止まらない。
石が男にぶつかり、鈍い音がする。
「ごめんな。
 俺がお前を、買ったせいで。
 お前は、悪くない。
 悪いのは、俺だ。
 これは、俺が受けるべき、罰だ。」
その男が、記憶の主を強く抱きしめてくれる。
「ごめ、んな……」
しかし抱きしめる力も、徐々に弱くなる。
記憶の主は男を地面に引き倒し、覆いかぶさるようにその上に乗る。
視界が閉じていく。

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