バーテンダーに落ちて酔わされ愛されて
XXⅠX
それを聞いたショーマはピクリと反応したけど、何も言わずにウォッカギブソンを作り始めた。ウォッカとドライベルモットを合わせてショートグラスに注いでいく。
最後にパールオニオンをグラスの底に沈めて目の前に出されたウォッカギブソン。
色も何もない透色なそれは、やっぱり何もかも見透かしているような色で、まさにカクテル言葉通り…といったところ。
“隠せない気持ち”
それがウォッカギブソンのカクテル言葉。
「気持ちをさらけ出したい相手でもいる?」
不安そうな顔をして訊いてくるショーマを見て、すぐ“好き”って伝えたいという気持ちが溢れ出てくる。
けど今すぐじゃない。もちろん言うけど、すぐに言ってしまっては意味がないから。
「いるよ」
「そっか…どんな奴?」
どんな奴、か…私の中でショーマは全然変わらない。
「カッコよくて優しくて、気遣いもできるし…私をずっと支えてくれた」
嬉しい時も悲しい時も傍にいてくれて、私が昔意地悪されてたらヒーローみたいに護ってくれたことも覚えてる。
「前からずっと好きだったけどそれは恋愛の好きじゃなかった。私のヒーローみたいな存在だったから」
何があってもその腕の中に包み込んで安心を与えてくれる、それがいつだって心地よかった。
「でも、最近気づいちゃったんだよね。LIKEからLOVEに変わったことに」
「恋愛対象になったってこと?」
「そ。まさかの出来事で最初は私もよく分からなかったし戸惑ったよ」
でも、私が好きだとしても…
「だけど、相手はきっと私のこと恋愛対象として見れないって分かってる」
昔から妹のように接してこられたから、私の気持ちを知っても迷惑だろうし戸惑うだろうけど…それでも伝えるって決めたから。
「アヤナは十分可愛いよ」
そんなちょっとした褒め言葉さえも胸が高鳴って仕方ない。
本当ならテーブルダンダン叩いて悶えたいけど、本人を前にしてそんな事出来るわけもなく。
「で、その人に気持ちは伝えないつもり?」
ちょっとした変化に気づくのは私だって同じだ。いつも通りに見せているけど、全然いつも通りなんかじゃない。
そわそわ、してる。
「伝えるよ、今日」
「え、今日?」
まさか今日伝えると思っていなかった、と言う予想外な私の言葉に驚きを隠さない彼。目を見開いて、驚いたかと思えばまたソワソワしだして落ち着きがなくなる。
不安そうな、悲しそうな、寂しそうな…いろんな感情が入り混じった表情をしているショーマを見つめながら微笑んだ。
「今日伝えたいんだ」
そう、今すぐ。
「ショーマに」
___目の前の、愛しい貴方に。
「好きだよ」
「…え」
私の口から紡がれたのは愛の告白。
また、予想外の連続で口を開いたまま固まってしまった。引いてはないみたいだけど、今は驚きでいっぱいって感じ。
私は言ってしまったことに不安とドキドキが止まらない。
膝の上でギュッと拳を作り、何を言われるのか何を思っているのかを考えて想像して___さらに不安でいっぱいになる。
引かれたら、突き放されたらどうしようって…そればかりが頭の中を占めて怖くなる。
「アヤナ、それ本気?」
今度は私が肩を震わせる番。
下げていた視線を恐る恐る上げれば、視界に映ったのは引いた顔でも不快な顔でもない、真剣そのものだった。
「ねぇ、本気?」
再度訊かれた質問に、私は息を飲んだ。
「本気…だよ」
本気以外の何ものでもない。
「そう、そっか」
「私は…」
私はね、本気だよ。
「付き合いたい」
もしかしたらそれだけじゃ足りなくなるかもしれないけど、今は誰よりもショーマの近くにいたい。
ショーマのことを誰よりも理解できる存在でいたい。
「俺の気持ち、分かって言ってんの?」
ショーマの気持ち、それは知ってるよ。
「私のこと好きじゃないかもしれないけど、私は___」
「そうじゃないっ!」
突然声を荒げたショーマに体が強張って動かなくなった。ショーマが私に向かって怒鳴りつけてくることなんて滅多にないから、それが突然来ると怖いと思ってどうしようもなくなる。
そういうのって大抵私が悪いから、また今回も私が何かダメなことを言ってしまったか、してしまったんだろう。
カウンターの向こう側にいた筈のショーマだけど、この微妙な距離がもどかしかったのかカウンターから出てきて私の隣のスツールに腰を下ろして向かい合った。
「その言葉、何年前から俺が言うの我慢してたか分かる?」
「何年前って…」
ねぇ、それってどういうこと?
その言い方だとショーマが私のこと好きだったみたいに聞こえる。
「俺、アヤナを手に入れることができたらもう放せないよ」
「それでもいいの?」とさっきよりも近い距離で確認してきたショーマに見つめられてだんだんと顔が赤くなっていく。
叶わないと思ってた。
玉砕覚悟で気持ちを伝えたのに…まさか願っていたことが叶うなんて、そんなことがあっていいんだろうか。
「いいの?って台詞は私の方だよ」
目を逸らした私になんで?と顔を近づけてまた距離を詰めてきたショーマ。そのせいで彼の香りがより一層強くなる。
「だって、私ショーマの気持ち知りもしないでずっと…残酷なこと…」
ユアのこと相談したり、酔っぱらった時にはも聞きたくない事もっと言ってしまっていた気もする。
それでも私のこと好きだっていうの?
「それでも好き」
「…っ」
あぁ、もうダメだ…いろんな感情が混ざってどうに求めることができない。
だから、ぷつんと涙腺の糸は切れてしまい、そこからポロポロと少ししょっぱい水が溢れ出す。
「…ふ、うぅ…しょーま、ごめん…っ」
「なんで謝るの。別に気にしてないわけじゃないけど、嫉妬はしてた」
「…っ」
「でも、俺のものになったら本気で逃げられないからね」
「いいっ、それでもいい…っ」
ショーマだけのものになりたいって思っちゃってるんだから、もう重症なんだよ。
「好き、ショーマが好きっ」
「ん、俺もアヤナが好き」
「放さなくて、いいっ…」
むしろ放さないでほしいから。
「…それよりも、私だけを愛して」
小さく小さく呟いた言葉だけども、しっかりとショーマの耳には届いていて___腕を引かれ抱きしめられたかと思ったら、耳元で甘く囁かれた。
「溺れて抜け出せないくらいに愛してあげる」
【ウォッカギブソン/隠せない気持ち】
最後にパールオニオンをグラスの底に沈めて目の前に出されたウォッカギブソン。
色も何もない透色なそれは、やっぱり何もかも見透かしているような色で、まさにカクテル言葉通り…といったところ。
“隠せない気持ち”
それがウォッカギブソンのカクテル言葉。
「気持ちをさらけ出したい相手でもいる?」
不安そうな顔をして訊いてくるショーマを見て、すぐ“好き”って伝えたいという気持ちが溢れ出てくる。
けど今すぐじゃない。もちろん言うけど、すぐに言ってしまっては意味がないから。
「いるよ」
「そっか…どんな奴?」
どんな奴、か…私の中でショーマは全然変わらない。
「カッコよくて優しくて、気遣いもできるし…私をずっと支えてくれた」
嬉しい時も悲しい時も傍にいてくれて、私が昔意地悪されてたらヒーローみたいに護ってくれたことも覚えてる。
「前からずっと好きだったけどそれは恋愛の好きじゃなかった。私のヒーローみたいな存在だったから」
何があってもその腕の中に包み込んで安心を与えてくれる、それがいつだって心地よかった。
「でも、最近気づいちゃったんだよね。LIKEからLOVEに変わったことに」
「恋愛対象になったってこと?」
「そ。まさかの出来事で最初は私もよく分からなかったし戸惑ったよ」
でも、私が好きだとしても…
「だけど、相手はきっと私のこと恋愛対象として見れないって分かってる」
昔から妹のように接してこられたから、私の気持ちを知っても迷惑だろうし戸惑うだろうけど…それでも伝えるって決めたから。
「アヤナは十分可愛いよ」
そんなちょっとした褒め言葉さえも胸が高鳴って仕方ない。
本当ならテーブルダンダン叩いて悶えたいけど、本人を前にしてそんな事出来るわけもなく。
「で、その人に気持ちは伝えないつもり?」
ちょっとした変化に気づくのは私だって同じだ。いつも通りに見せているけど、全然いつも通りなんかじゃない。
そわそわ、してる。
「伝えるよ、今日」
「え、今日?」
まさか今日伝えると思っていなかった、と言う予想外な私の言葉に驚きを隠さない彼。目を見開いて、驚いたかと思えばまたソワソワしだして落ち着きがなくなる。
不安そうな、悲しそうな、寂しそうな…いろんな感情が入り混じった表情をしているショーマを見つめながら微笑んだ。
「今日伝えたいんだ」
そう、今すぐ。
「ショーマに」
___目の前の、愛しい貴方に。
「好きだよ」
「…え」
私の口から紡がれたのは愛の告白。
また、予想外の連続で口を開いたまま固まってしまった。引いてはないみたいだけど、今は驚きでいっぱいって感じ。
私は言ってしまったことに不安とドキドキが止まらない。
膝の上でギュッと拳を作り、何を言われるのか何を思っているのかを考えて想像して___さらに不安でいっぱいになる。
引かれたら、突き放されたらどうしようって…そればかりが頭の中を占めて怖くなる。
「アヤナ、それ本気?」
今度は私が肩を震わせる番。
下げていた視線を恐る恐る上げれば、視界に映ったのは引いた顔でも不快な顔でもない、真剣そのものだった。
「ねぇ、本気?」
再度訊かれた質問に、私は息を飲んだ。
「本気…だよ」
本気以外の何ものでもない。
「そう、そっか」
「私は…」
私はね、本気だよ。
「付き合いたい」
もしかしたらそれだけじゃ足りなくなるかもしれないけど、今は誰よりもショーマの近くにいたい。
ショーマのことを誰よりも理解できる存在でいたい。
「俺の気持ち、分かって言ってんの?」
ショーマの気持ち、それは知ってるよ。
「私のこと好きじゃないかもしれないけど、私は___」
「そうじゃないっ!」
突然声を荒げたショーマに体が強張って動かなくなった。ショーマが私に向かって怒鳴りつけてくることなんて滅多にないから、それが突然来ると怖いと思ってどうしようもなくなる。
そういうのって大抵私が悪いから、また今回も私が何かダメなことを言ってしまったか、してしまったんだろう。
カウンターの向こう側にいた筈のショーマだけど、この微妙な距離がもどかしかったのかカウンターから出てきて私の隣のスツールに腰を下ろして向かい合った。
「その言葉、何年前から俺が言うの我慢してたか分かる?」
「何年前って…」
ねぇ、それってどういうこと?
その言い方だとショーマが私のこと好きだったみたいに聞こえる。
「俺、アヤナを手に入れることができたらもう放せないよ」
「それでもいいの?」とさっきよりも近い距離で確認してきたショーマに見つめられてだんだんと顔が赤くなっていく。
叶わないと思ってた。
玉砕覚悟で気持ちを伝えたのに…まさか願っていたことが叶うなんて、そんなことがあっていいんだろうか。
「いいの?って台詞は私の方だよ」
目を逸らした私になんで?と顔を近づけてまた距離を詰めてきたショーマ。そのせいで彼の香りがより一層強くなる。
「だって、私ショーマの気持ち知りもしないでずっと…残酷なこと…」
ユアのこと相談したり、酔っぱらった時にはも聞きたくない事もっと言ってしまっていた気もする。
それでも私のこと好きだっていうの?
「それでも好き」
「…っ」
あぁ、もうダメだ…いろんな感情が混ざってどうに求めることができない。
だから、ぷつんと涙腺の糸は切れてしまい、そこからポロポロと少ししょっぱい水が溢れ出す。
「…ふ、うぅ…しょーま、ごめん…っ」
「なんで謝るの。別に気にしてないわけじゃないけど、嫉妬はしてた」
「…っ」
「でも、俺のものになったら本気で逃げられないからね」
「いいっ、それでもいい…っ」
ショーマだけのものになりたいって思っちゃってるんだから、もう重症なんだよ。
「好き、ショーマが好きっ」
「ん、俺もアヤナが好き」
「放さなくて、いいっ…」
むしろ放さないでほしいから。
「…それよりも、私だけを愛して」
小さく小さく呟いた言葉だけども、しっかりとショーマの耳には届いていて___腕を引かれ抱きしめられたかと思ったら、耳元で甘く囁かれた。
「溺れて抜け出せないくらいに愛してあげる」
【ウォッカギブソン/隠せない気持ち】
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