バーテンダーに落ちて酔わされ愛されて

花厳曄

XXV

平気?何言ってるの、平気なわけがないじゃん。
ちょードキドキしてるんだけど、平静を装うのに必死なだけなのに。
まぁ、ショーマに悟られないようにそうしてるってのもあるんだけど。

上を着て戻ってきたショーマはフカフカのソファに座る私の隣に座ると、ソレちょうだいと飲みかけのココアを一口飲んだ。

…か、間接キス。いや、何ドキドキしまくってるんだ私。

ディープキスやそれ以上の行為をしたことある人間がなんで間接キスなんかでこんなに胸がドキドキ五月蝿いんだ。


「アヤナ、明日どっか行く?」

「え、あー…ゆっくりしたいしドライブ、とか?」

「いいね、お店の開店時間までゆっくりドライブしよっか」


本当にドライブなんかでよかったのかと気になったけど、ショーマは楽しみな顔をしていてそれでよかったんだとホッとした。
その横顔はまるで10数年前のものに感じて、あの頃も優しく笑って接してくれていたなとココアを飲み終えてから寝る準備をしたんだけど…ここで問題発生。

忘れていたよ、ショーマの家に泊まるっていうことを。


「ねぇ私、ソファ___」

「アヤナは俺とベッド」


ソファーで寝ると提案しようとしたらそれを遮られ、一緒にベッドで寝ることを強制された。
確かに2人で眠れないこともない大きさのベッドは眠り心地がよさそうで、ぐっすり眠れるなんて思った。

独り暮らしのはずなのにダブルベッドだなんて贅沢すぎる。
家は広いし、大きいし、家具も2人分はあるんじゃないかってくらいの大きさに収納スペース。

私は手を引かれるがままショーマと同じベッドに潜り込んだ。
温泉の時とはまた違う近さ。あの時は布団が並べて敷かれていたから若干の境界線があったような感じだけど、今なんて境界線なんてないに等しい。
ショーマじゃなければ完璧食べられてしまっても可笑しくない状況なわけで、ほら…。


「おやすみアヤナ」


彼は紳士だから唇ではなく、頬に軽くキスを落とした。部屋が暗くてよかった、赤いどころじゃなくてきっと真っ赤だ。

一度は危険な香りがしていたのに、なんだか甘い香りに変わっていて___目を瞑れば、その香りに包まれながら意識が薄れていった。

意識が完全に飛ぶ寸前、


「アヤナは俺が護るから」


それが夢か現なのかは分からない。


「…好き」


これが夢ならばと、そんな風に思ってそう言ったような気がする。


【スティンガー/危険な香り】


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