バーテンダーに落ちて酔わされ愛されて
XXカカオフィズ
早起きだなんてよく言ったもんだ。
起床したのは朝の8時半で、慌ててシャワーを浴びて服を選んで、髪をセットして綺麗にメイクをして…てしていたらあっという間に10時になってしまい、この家のインターホンが鳴らされた。
ギリギリ間に合ったけど朝ご飯を食べていないお腹は朝ご飯を求めていて、さっきからキュルルっていってうるさい。
「はーい……あはっ、おはよう」
鳴ってしまうお腹を押さえながら迎えに来てくれたショーマを出迎えると「ギリギリに起きたでしょ」って図星を突かれてしまった。
ショーマに1泊2日分の荷物が入ったキャリーケースを持ってもらい、目的の温泉地に向かうために彼の愛車の助手席に乗り込んで自分の好きな音楽をかけながら車は発進した。
途中道の駅で軽食やお菓子を買い、それを食べながら、そして運転で手が離せないショーマに食べさせたりもした。
何故か照れてたっぽいけど。
「着いた~」
1時間半ほど走った車は目的地である旅館に到着した。座りっぱなしだったからあちこちグーッと伸ばした後、目の前の旅館を再度目にして言葉を失くす。
一言いうなら“なんじゃこりゃ”。
今、あたしはショーマに一つと言わず聞きたいことがいくつかある。
まず1つ、こんな豪華なところに泊まっていいの?
そして2つ、いやいやここ一拍一体いくらするんだよ、絶対高いに決まってるじゃん。
そして3つ、ショーマさんショーマさん貴方あたしとの温泉旅行の為に一体いくらお使いになったの?
そして4つ、ショーマさんショーマさん貴方の稼ぎがどれくらいなのか私はすこぶる気になります。
それから後、もう少し聞きたいことがあるのだけど細かいことばっかだからここでは言うべきことじゃないわね。
訊きかけている言葉をあたしはぐっと飲み込んで、ショーマのじっと見つめ、目で訴える。
「何?」
「いや、私が言いたいこと絶対分かってるでしょ」
そうやって目を細めてるってことはあたしの考えを分かってる証で、わざとそう言ってるんだ。
「アヤナはお金のことなんて気にしなくていいよ」
「いやいや、半分は出すって」
温泉に行きたいって言い出したのあたしなのになんで全部ショーマが出す感じになってるのかさっぱりなんだけど。
それはちょっと違うって。
「ばーか」
「ば、バカっ!?」
なんでバカって言われないといけないの?あたし間違ったこと言ってないじゃん!
「本当バカ」
「ちょっと、人をバカバカ言わないでくれる?」
「あのね、女の子に払わせるわけないでしょ」
「え、」
そういうもん…?あたしショーマに女の子扱いされてるの?
「だからアヤナは何も言わず、何も聞かずに俺と楽しく過ごしてればいいよ」
その言葉と共に微笑んだ彼の顔を見てポポポ、と顔が火照っていく。
な、なな、何これなんでショーマに対してドキドキしたり赤くなったりしてるの?意味、分かんない。
ショーマに女の子扱いされていると聞かされてしまい、幼馴染で兄的存在であった彼なのにこの一瞬で兄的存在というものにピキピキと亀裂が入った。
「アヤナ、分かった?」
「っ…わか、分かったよ」
ズイッと綺麗な顔が覗きこんできて視界いっぱいにショーマの顔が映り込み、一瞬高鳴ってしまった胸に気づかれないようになるべく不自然にならないようにパッと顔を知らした。
息がかかるくらい近い。下手すればキスができてしまうほどの距離。
なんで、どうしてこんなにもショーマにドキドキして意識なんてしちゃってるの?
ヤバい、今の私最高に変。最高におかしい。
ユアに振られてから頭やられてしまったな。
極めつけはマユのあの言葉のせいだ。
「じゃあ中入ろっか」
「あ…」
サラリと取られた手はショーマの温かくて大きな手に包まれ、その手に引かれながら私は旅館の中へと足を踏み入れた。
入って一言、凄いなんてものじゃない。まさに“豪華”。
女将さんが直々にお出迎えしてくれるし、仲居さんに案内された部屋は広くて露天ぶろ付きの素晴らしすぎる部屋だった。
ちょっと、マジで一泊二日なのになんでこんなに豪華なのか…。
温泉に行きたいと言ったのは紛れもないあたしなんだけど。
でも、それを考えてしまったら頭が痛くなるから考えるということはもう止めた。
こうなったらとことん癒されて楽しむしか道はないじゃん。
「部屋に露天風呂ってヤバい!入り放題だね!」
「一緒に入る?」
露天風呂にキャッキャしてたらそんなセリフが耳に入って来て一瞬にして思考回路が停止した。
動きを止めた私は「え?」と呟きながらショーマの方を見るとにっこり笑みを浮かべていた。
これは…どっちだ。
「冗談だよ」
本気にした?なんて訊かれ、あたしは答えるのに一瞬言葉が詰まった。
「最近のショーマの冗談は、冗談に聞こえないよ」
本当に冗談なのか、からかっているのか、本音…なのか分かりづらい。
ならあたしは?
あたしはどっちであってほしいの?
冗談であってほしいのか、それとも本音であってほしいのか……それさえも、分からない。
あたしの心は今、何を___誰を求めているんだろう。
「ショーマ、お腹空いちゃった」
「そうだな。お菓子しかつまんでないしもう昼時だし食べよっか」
さっきまでの微妙な空気はなくなり、話題はお昼ごはんをどうするか。
旅館でもいいけど、どうせなら夜ご飯を豪華に食べたいっていう願望があるから旅館近辺にある美味しい飲食店を紹介してもらい、あたし達はそのお店でしゃぶしゃぶを堪能していた。
脂がのりすぎていないお肉にさっぱりとしたポン酢が絡まって口の中を幸せにする。
野菜もお肉に負けず劣らずどれも新鮮で、鍋に入れる前の輝きに瑞々しさときたらどれだけいい野菜を使っているのか分かってしまうほど。
あたしはというと…
「んん~っ、美味しいっ」
美味しさのあまり悶えていた。
しゃぶしゃぶを初めて食べたわけじゃないのに、今まで食べてきたしゃぶしゃぶは本物じゃない!とでも言われているかのような美味しさで、参りましたと言わざる負えないような味。
いいとこの肉を使ってるなぁって素人の舌でも分かる。
「ご馳走様でした」
両手を合わせて挨拶をしたあたしの視界に入ったのは綺麗に食べきった器や鍋で、あんなに美味しいもの食べきれないわけないじゃない。
「ご馳走様、美味しかったな」
「うん、幸せって感じ」
「ふ…おおげさ」
素直な感想を述べたつもりなのに鼻で笑われた。
けど、怒りなんて湧いてくるはずもなく「幸せならいいんですー」と返してデザートのバニラアイスを頬張った。
アイスを食べきるとお腹はもう満腹状態で、これ以上は何も入らない。
「ねね、旅館に戻って温泉入ろう?」
「もう?」
もう、呟いたショーマをギロリと眼を鋭くして睨みつけるように見ると「あ、やっちった」て顔をした彼。
あたし達は一体何しにここへ来たっていうの!
「温泉入りに来たのに沢山入らないでどうするよ!何回でも入るよショーマ!」
「分かった分かった」とあたしを落ち着けようと頭をポンポンと撫でてきて、それに気持ち良さを感じていたときハッと正気に戻った。
してやられた、これはきっとあたしをよしよしと落ち着かせて「じゃあ他も観光してみようよ」っていう作戦に違いない。
「そうはいかないんですけど」
「ん?」
何が?って表情してもダメだかんね。
そんな心の声と共にショーマに視線を注げば、私の考えていることが伝わったのかフッっと鼻で笑われた。
「観光に誘導でもすると思った?」
まさにあたしの考えていたことをピンポイントで当ててきて、コクコク首を縦に振れば「そんなわけないじゃん」と彼はくしゃっと優しく微笑んだ。
「温泉、入りまくろっか」
「うんっ」
その言葉を待っていましたと言わんばかりに元気良く返事をすると、ショーマがあたしの手を取って元来た道を戻り始めた。
目の前に広がるのは大きな背中で、小さい時から見てきた背中は大きかったけど立派な大人になった彼の背中はもっと大きくなったように見えて仕方がない。
昔はよくこの背中に抱きついてたなとか、幼少期はあたしが本当チビで背中まで手が回らないってムキになってしょっちゅうギューって抱きついてたっけ。
今、突然抱き着いたらどんな反応するかな。
抱き返してくれる?笑ってくれる?それか、困ったような反応しちゃうかな。
困らせたくはない、困った反応は見たくない…こっちが寂しくなっちゃうから。
この前ショーマ離れ出来てないなって自覚したばっかりだから絶対落ち込んじゃうもん。
それなら何もせずに今の距離を保つ方がよっぽどいい。
旅館に戻る帰り道、何種類温泉があるだとかどの温泉から楽しもうかなとか、どれだけ湯の中に浸かることが出来るかとか、そんな話ばかりをしているとあっという間に旅館に戻って来てしまい、部屋に早足で戻りタオルや浴衣を手にすると早く行こうと今度はあたしがショーマの手を引いて温泉へと向かった。
起床したのは朝の8時半で、慌ててシャワーを浴びて服を選んで、髪をセットして綺麗にメイクをして…てしていたらあっという間に10時になってしまい、この家のインターホンが鳴らされた。
ギリギリ間に合ったけど朝ご飯を食べていないお腹は朝ご飯を求めていて、さっきからキュルルっていってうるさい。
「はーい……あはっ、おはよう」
鳴ってしまうお腹を押さえながら迎えに来てくれたショーマを出迎えると「ギリギリに起きたでしょ」って図星を突かれてしまった。
ショーマに1泊2日分の荷物が入ったキャリーケースを持ってもらい、目的の温泉地に向かうために彼の愛車の助手席に乗り込んで自分の好きな音楽をかけながら車は発進した。
途中道の駅で軽食やお菓子を買い、それを食べながら、そして運転で手が離せないショーマに食べさせたりもした。
何故か照れてたっぽいけど。
「着いた~」
1時間半ほど走った車は目的地である旅館に到着した。座りっぱなしだったからあちこちグーッと伸ばした後、目の前の旅館を再度目にして言葉を失くす。
一言いうなら“なんじゃこりゃ”。
今、あたしはショーマに一つと言わず聞きたいことがいくつかある。
まず1つ、こんな豪華なところに泊まっていいの?
そして2つ、いやいやここ一拍一体いくらするんだよ、絶対高いに決まってるじゃん。
そして3つ、ショーマさんショーマさん貴方あたしとの温泉旅行の為に一体いくらお使いになったの?
そして4つ、ショーマさんショーマさん貴方の稼ぎがどれくらいなのか私はすこぶる気になります。
それから後、もう少し聞きたいことがあるのだけど細かいことばっかだからここでは言うべきことじゃないわね。
訊きかけている言葉をあたしはぐっと飲み込んで、ショーマのじっと見つめ、目で訴える。
「何?」
「いや、私が言いたいこと絶対分かってるでしょ」
そうやって目を細めてるってことはあたしの考えを分かってる証で、わざとそう言ってるんだ。
「アヤナはお金のことなんて気にしなくていいよ」
「いやいや、半分は出すって」
温泉に行きたいって言い出したのあたしなのになんで全部ショーマが出す感じになってるのかさっぱりなんだけど。
それはちょっと違うって。
「ばーか」
「ば、バカっ!?」
なんでバカって言われないといけないの?あたし間違ったこと言ってないじゃん!
「本当バカ」
「ちょっと、人をバカバカ言わないでくれる?」
「あのね、女の子に払わせるわけないでしょ」
「え、」
そういうもん…?あたしショーマに女の子扱いされてるの?
「だからアヤナは何も言わず、何も聞かずに俺と楽しく過ごしてればいいよ」
その言葉と共に微笑んだ彼の顔を見てポポポ、と顔が火照っていく。
な、なな、何これなんでショーマに対してドキドキしたり赤くなったりしてるの?意味、分かんない。
ショーマに女の子扱いされていると聞かされてしまい、幼馴染で兄的存在であった彼なのにこの一瞬で兄的存在というものにピキピキと亀裂が入った。
「アヤナ、分かった?」
「っ…わか、分かったよ」
ズイッと綺麗な顔が覗きこんできて視界いっぱいにショーマの顔が映り込み、一瞬高鳴ってしまった胸に気づかれないようになるべく不自然にならないようにパッと顔を知らした。
息がかかるくらい近い。下手すればキスができてしまうほどの距離。
なんで、どうしてこんなにもショーマにドキドキして意識なんてしちゃってるの?
ヤバい、今の私最高に変。最高におかしい。
ユアに振られてから頭やられてしまったな。
極めつけはマユのあの言葉のせいだ。
「じゃあ中入ろっか」
「あ…」
サラリと取られた手はショーマの温かくて大きな手に包まれ、その手に引かれながら私は旅館の中へと足を踏み入れた。
入って一言、凄いなんてものじゃない。まさに“豪華”。
女将さんが直々にお出迎えしてくれるし、仲居さんに案内された部屋は広くて露天ぶろ付きの素晴らしすぎる部屋だった。
ちょっと、マジで一泊二日なのになんでこんなに豪華なのか…。
温泉に行きたいと言ったのは紛れもないあたしなんだけど。
でも、それを考えてしまったら頭が痛くなるから考えるということはもう止めた。
こうなったらとことん癒されて楽しむしか道はないじゃん。
「部屋に露天風呂ってヤバい!入り放題だね!」
「一緒に入る?」
露天風呂にキャッキャしてたらそんなセリフが耳に入って来て一瞬にして思考回路が停止した。
動きを止めた私は「え?」と呟きながらショーマの方を見るとにっこり笑みを浮かべていた。
これは…どっちだ。
「冗談だよ」
本気にした?なんて訊かれ、あたしは答えるのに一瞬言葉が詰まった。
「最近のショーマの冗談は、冗談に聞こえないよ」
本当に冗談なのか、からかっているのか、本音…なのか分かりづらい。
ならあたしは?
あたしはどっちであってほしいの?
冗談であってほしいのか、それとも本音であってほしいのか……それさえも、分からない。
あたしの心は今、何を___誰を求めているんだろう。
「ショーマ、お腹空いちゃった」
「そうだな。お菓子しかつまんでないしもう昼時だし食べよっか」
さっきまでの微妙な空気はなくなり、話題はお昼ごはんをどうするか。
旅館でもいいけど、どうせなら夜ご飯を豪華に食べたいっていう願望があるから旅館近辺にある美味しい飲食店を紹介してもらい、あたし達はそのお店でしゃぶしゃぶを堪能していた。
脂がのりすぎていないお肉にさっぱりとしたポン酢が絡まって口の中を幸せにする。
野菜もお肉に負けず劣らずどれも新鮮で、鍋に入れる前の輝きに瑞々しさときたらどれだけいい野菜を使っているのか分かってしまうほど。
あたしはというと…
「んん~っ、美味しいっ」
美味しさのあまり悶えていた。
しゃぶしゃぶを初めて食べたわけじゃないのに、今まで食べてきたしゃぶしゃぶは本物じゃない!とでも言われているかのような美味しさで、参りましたと言わざる負えないような味。
いいとこの肉を使ってるなぁって素人の舌でも分かる。
「ご馳走様でした」
両手を合わせて挨拶をしたあたしの視界に入ったのは綺麗に食べきった器や鍋で、あんなに美味しいもの食べきれないわけないじゃない。
「ご馳走様、美味しかったな」
「うん、幸せって感じ」
「ふ…おおげさ」
素直な感想を述べたつもりなのに鼻で笑われた。
けど、怒りなんて湧いてくるはずもなく「幸せならいいんですー」と返してデザートのバニラアイスを頬張った。
アイスを食べきるとお腹はもう満腹状態で、これ以上は何も入らない。
「ねね、旅館に戻って温泉入ろう?」
「もう?」
もう、呟いたショーマをギロリと眼を鋭くして睨みつけるように見ると「あ、やっちった」て顔をした彼。
あたし達は一体何しにここへ来たっていうの!
「温泉入りに来たのに沢山入らないでどうするよ!何回でも入るよショーマ!」
「分かった分かった」とあたしを落ち着けようと頭をポンポンと撫でてきて、それに気持ち良さを感じていたときハッと正気に戻った。
してやられた、これはきっとあたしをよしよしと落ち着かせて「じゃあ他も観光してみようよ」っていう作戦に違いない。
「そうはいかないんですけど」
「ん?」
何が?って表情してもダメだかんね。
そんな心の声と共にショーマに視線を注げば、私の考えていることが伝わったのかフッっと鼻で笑われた。
「観光に誘導でもすると思った?」
まさにあたしの考えていたことをピンポイントで当ててきて、コクコク首を縦に振れば「そんなわけないじゃん」と彼はくしゃっと優しく微笑んだ。
「温泉、入りまくろっか」
「うんっ」
その言葉を待っていましたと言わんばかりに元気良く返事をすると、ショーマがあたしの手を取って元来た道を戻り始めた。
目の前に広がるのは大きな背中で、小さい時から見てきた背中は大きかったけど立派な大人になった彼の背中はもっと大きくなったように見えて仕方がない。
昔はよくこの背中に抱きついてたなとか、幼少期はあたしが本当チビで背中まで手が回らないってムキになってしょっちゅうギューって抱きついてたっけ。
今、突然抱き着いたらどんな反応するかな。
抱き返してくれる?笑ってくれる?それか、困ったような反応しちゃうかな。
困らせたくはない、困った反応は見たくない…こっちが寂しくなっちゃうから。
この前ショーマ離れ出来てないなって自覚したばっかりだから絶対落ち込んじゃうもん。
それなら何もせずに今の距離を保つ方がよっぽどいい。
旅館に戻る帰り道、何種類温泉があるだとかどの温泉から楽しもうかなとか、どれだけ湯の中に浸かることが出来るかとか、そんな話ばかりをしているとあっという間に旅館に戻って来てしまい、部屋に早足で戻りタオルや浴衣を手にすると早く行こうと今度はあたしがショーマの手を引いて温泉へと向かった。
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