バーテンダーに落ちて酔わされ愛されて
XⅣ
「ただいまーって、あれ…ショーマは?」
お手洗いから戻ると部屋にはマユしかいなくて、ショーマの姿はなかった。
あ…ショーマの匂いだけは残ってる。
ショーマが普段から使っている香水は2年前私がプレゼントしたもので、それをずっと愛用してくれているんだ。
「ショーマさんは仕事に戻ったよ」
「そっか」
忙しいのにわざわざパスタ作ってくれたり、カクテル作ってくれたりとありがたいな…。
「ショーマさんが気になる?」
突然そんなことを訊いてくるもんだから「は?」なんて言葉と共に変顔レベルに変な顔をしてしまった、と思う。
「なんで?」
ショーマが気になるなんて、そんな事一度も訊いてこなかったのに急にどうしたんだろう。
「んー、なんとなく」
なんとなくって、なんて適当な。
「気になるって言うか、今日はちょっと元気ないなーとか?」
「え、元気ないの?」
「うん。笑い方とかでね、なんとなく分かる」
何それエスパーかよって言うマユだけど、自分でもなんで分かってしまうのか分からないからどうして?なんて問われても答えようがないからね。
長年一緒にいるからその勘としか言いようがない。
「へぇ~」だとか「ふーん」だとか、マユから訊いてきたのに特別そんなに興味はありませんみたいな顔をしていて何なんだこの子、と思いながら酒をあおった。
「あ、そうだ」
何を思い出したのか、マユはすぐさま別の話題をしようとしていて…女子は話題が尽きないなぁ、と自分も同じ女でありながらそんなことを思った。
「ショーマさんって2年アメリカに行ってたんだよね?」
「うん、そうだよ」
ショーマはあたしが高校を卒業する前に修行に行くと言って、アメリカに2年間バーテンとしての弁業や技術を学び磨いてきた。
その腕前は世界大会に出れるほどの実力となって帰ってきていてビックリしたものだ。
「私の知り合いにもさ、技術を磨くためにアメリカに行ってるんだけどレベルが高すぎるしショーマさんの名前を出せば誰でも知ってるらしいよ」
「え、ショーマ本当に有名なんだ」
別に疑ってるわけとかじゃないけど、ショーマは大会とかにも一切出ないし、あたし自身カクテルはショーマのものしか飲んだことがないからどれくらいレベルが高いだとかショーマがどれほど名が知れているのかあたしには全然分からない。
だからこうして話を聞くのは新鮮なんだ。
「アンタ本当に知らないよね」
「うん、まぁ」
そういうのに疎いのもあるかもしれないけど、興味がないってのも大きく影響している気がする。
「あの若さで世界レベルの技術に、それをたった2年で習得したんだよ!?すごくないわけがないの!」
「そ、そう…なんだ」
「アヤナ、本当分かってない」
そう言われても分からないものは分からないし、もう笑うしかないです。
「そんな人に想ってもらっているって言うのに…」
「思ってもらってる?何が?」
「へ!?あ、いや別に何でもないよ」
「……そう」
突然焦ったマユに少しだけ違和感を覚えたけど、教えてくれるはずがないからあたしは訊くことを止めた。
それにしてもショーマが世界的バーテンダーか…。
それならショーマはこの日本って言う狭い国を出ても外国で勝負できるし、優雅に暮らせるはずなのにどうしてこんな隠れ家みたいなお店を作って働いているんだろう。
もっといいところで働けるはずなのに、どうして。
そんな疑問があたしの脳内を埋め尽くした。
「ねぇ、この国じゃないといけない理由があるのかな?」
「え?」
「外国でお店を出せない理由があるのかな?」
「え、まってそれはショーマさんのこと?」
「そう」
「はぁ-…アンタそれは……あー、私の口からは言えない」
ふと気になって訊いてみたのにマユからは意外な答えが返ってきてあたしは目を丸くした。
私の口からは言えないってことは、マユはその“理由”を知ってるってわけで、幼馴染のあたしが何一つ知らないと言うこと。
なんだか、あたしの胸に小さな穴が開いたような気がした。
「そっか」
___…穴の開いたそこから、トプトプと何かが零れだす。
             【カリフォルニア・レモネード/永遠の感謝】
お手洗いから戻ると部屋にはマユしかいなくて、ショーマの姿はなかった。
あ…ショーマの匂いだけは残ってる。
ショーマが普段から使っている香水は2年前私がプレゼントしたもので、それをずっと愛用してくれているんだ。
「ショーマさんは仕事に戻ったよ」
「そっか」
忙しいのにわざわざパスタ作ってくれたり、カクテル作ってくれたりとありがたいな…。
「ショーマさんが気になる?」
突然そんなことを訊いてくるもんだから「は?」なんて言葉と共に変顔レベルに変な顔をしてしまった、と思う。
「なんで?」
ショーマが気になるなんて、そんな事一度も訊いてこなかったのに急にどうしたんだろう。
「んー、なんとなく」
なんとなくって、なんて適当な。
「気になるって言うか、今日はちょっと元気ないなーとか?」
「え、元気ないの?」
「うん。笑い方とかでね、なんとなく分かる」
何それエスパーかよって言うマユだけど、自分でもなんで分かってしまうのか分からないからどうして?なんて問われても答えようがないからね。
長年一緒にいるからその勘としか言いようがない。
「へぇ~」だとか「ふーん」だとか、マユから訊いてきたのに特別そんなに興味はありませんみたいな顔をしていて何なんだこの子、と思いながら酒をあおった。
「あ、そうだ」
何を思い出したのか、マユはすぐさま別の話題をしようとしていて…女子は話題が尽きないなぁ、と自分も同じ女でありながらそんなことを思った。
「ショーマさんって2年アメリカに行ってたんだよね?」
「うん、そうだよ」
ショーマはあたしが高校を卒業する前に修行に行くと言って、アメリカに2年間バーテンとしての弁業や技術を学び磨いてきた。
その腕前は世界大会に出れるほどの実力となって帰ってきていてビックリしたものだ。
「私の知り合いにもさ、技術を磨くためにアメリカに行ってるんだけどレベルが高すぎるしショーマさんの名前を出せば誰でも知ってるらしいよ」
「え、ショーマ本当に有名なんだ」
別に疑ってるわけとかじゃないけど、ショーマは大会とかにも一切出ないし、あたし自身カクテルはショーマのものしか飲んだことがないからどれくらいレベルが高いだとかショーマがどれほど名が知れているのかあたしには全然分からない。
だからこうして話を聞くのは新鮮なんだ。
「アンタ本当に知らないよね」
「うん、まぁ」
そういうのに疎いのもあるかもしれないけど、興味がないってのも大きく影響している気がする。
「あの若さで世界レベルの技術に、それをたった2年で習得したんだよ!?すごくないわけがないの!」
「そ、そう…なんだ」
「アヤナ、本当分かってない」
そう言われても分からないものは分からないし、もう笑うしかないです。
「そんな人に想ってもらっているって言うのに…」
「思ってもらってる?何が?」
「へ!?あ、いや別に何でもないよ」
「……そう」
突然焦ったマユに少しだけ違和感を覚えたけど、教えてくれるはずがないからあたしは訊くことを止めた。
それにしてもショーマが世界的バーテンダーか…。
それならショーマはこの日本って言う狭い国を出ても外国で勝負できるし、優雅に暮らせるはずなのにどうしてこんな隠れ家みたいなお店を作って働いているんだろう。
もっといいところで働けるはずなのに、どうして。
そんな疑問があたしの脳内を埋め尽くした。
「ねぇ、この国じゃないといけない理由があるのかな?」
「え?」
「外国でお店を出せない理由があるのかな?」
「え、まってそれはショーマさんのこと?」
「そう」
「はぁ-…アンタそれは……あー、私の口からは言えない」
ふと気になって訊いてみたのにマユからは意外な答えが返ってきてあたしは目を丸くした。
私の口からは言えないってことは、マユはその“理由”を知ってるってわけで、幼馴染のあたしが何一つ知らないと言うこと。
なんだか、あたしの胸に小さな穴が開いたような気がした。
「そっか」
___…穴の開いたそこから、トプトプと何かが零れだす。
             【カリフォルニア・レモネード/永遠の感謝】
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