バーテンダーに落ちて酔わされ愛されて

花厳曄

XⅡ

「んっ、美味しい!」




マユはクイッと気持ちよく一口目を頂くと、目を見開いて言った。


マユに続きあたしも一口目を頂くと、バーボンともう一つものの甘味をライムとレモンがキリッと引き締めてくれるすっきりとした爽快な味わいが口に広がった。


本当に美味しくてますますショーマのカクテルにハマってしまう。




「2人ともお腹空いてるでしょ?」




そう言えば何も食べてなかったや、と何も入ってない胃のことを思い出して頷くと「それ食膳に飲むやつだから今サラダとか簡単に作ったもの持ってくるね」と言って一度部屋を出ていったショーマ。

ショーマがいなくなるとすかさずマユが「相変わらずいい男~ッ」と悶えた。




「なんであんないい男なのに彼女がいないの!?」


「知らないよ。私が訊きたいくらい」


「私彼女に立候補してもいい!?」




立候補って、マユにはあたしの上司でもある青木さんって言う素敵な彼氏がいるじゃん。


何を言ってるのこの子。まぁ、それが冗談だってことも知ってるけどね。




「ま、冗談だけど」


「多分だけど、ショーマ好きな人でもいるんじゃない?」




あたしの憶測にすぎないけど、そんな感じがする。


何故?って言われてもなんとなく、幼馴染として長年の付き合いの勘としか言いようがないからはっきりとは言えない。




「それ、アヤナだったりして」


なんて冗談をマユが言い出すから、飲んでる途中だったカクテルを吹き出しそうになって我慢したら、鼻に入ってしまい鼻が痛い。


なんてことを言い出すんだこの子。




「あり得ないこと言わないで」




珍しく真面目トーンで返したら「冗談じゃん」と拗ねられた。


マユが拗ねたところでショーマが戻ってきて話の続きをすることがなくなり、どこかホッとした。




「はい、サラダとパスタね」




目の前にはサラダと美味しそうな和風カルボナーラが2人分置かれた。


美味しそうと目を輝かせるマユを視界の端に、そう言えばご飯なんて当たり前だけどメニューにないよね?と首を傾げてショーマに問えば、



「だから特別って言ったでしょ」


なんて返ってきて、あたしとマユの為に急遽作ってくれたんだとショーマにも感謝した。




「ショーマ」


「何?」


「ありがとう。ショーマのそういうとこ好きだよ」


「………ん、ありがと」




何だろ、少し変な間があったけど返事してくれたしいいか。


ショーマに感謝しつつ、ショーマ手作りのカルボナーラを頬張った。


めっちゃ美味しい。カクテルも美味しければご飯も美味しいって出来る男すぎる。


あたしが頬張る傍でマユも同じように美味しい美味しいしながらめっちゃ食べてた。




「あ、そうだ」



そんな時ふと思い出した。




「そうだショーマ、あたしが昨日飲んだカクテルの名前なんだっけ?」




ショーマは結局教えてくれなくて、自分で意味調べるからいいよって言ったけど名前を忘れてしまったから調べることもできなくなったわけ。




「あぁ、あれね」




そうそう、あれだよ。
さぁ教えて、と待ってたら…




「教えない」




と返ってきて思わず、「はぁぁぁぁぁ??」なんて大きい声を出してしまい、隣で黙々と食べていたマユに五月蝿いと凄い目つきで睨まれた。



「な、なんで教えてくれないのっ?」


「だって、まだ調べてないでしょ?」




ギクリ…と見抜かれてしまい、やっぱりあのカクテルの名前だけは教えてもらえなかった。


どうして教えてくれないのかさえも教えてはくれないから余計に気になる、けど…ショーマが教えないって言うならいいかなっても思う。



死ぬほど気になるけどね。




「トイレ行ってくる」


「はーい」




会社にいるときからトイレに行ってなかったから今になって凄い行きたくなり、2人に一言残してあたしはトイレに駆け込んだ。



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