バーテンダーに落ちて酔わされ愛されて

花厳曄



「なに、それ…変わらないじゃんっ」

ざまぁみろも別れてよかったもあたしからしてみれば同じような言葉。
ショーマはあたしがユアとセフレだったことを唯一知ってる人。

親友はもちろんいるけど話せるようなことじゃなかった。
ユアのことで何か困ったり悩んだりした時は真っ先にショーマに話してたし。

その度に別れた方がいいだとか、幸せになれないだとか言っていたけど、そういうのは聞き飽きてたしそんなことを言ってほしくて話してたんじゃなかった。


「でも結果、ユアって男が選んだのは別の女でしょ?」

「…~ッ、そうだよ!あたしは選ばれなかったの、分かってた…分かってたつもりでいただけだった」


2年間関係を持っていて1度も気持ちを伝えなかったあたしがダメだった。

気持ちを伝えてしまえばもう会ってもらえないと怯えて、いつも喉まで出かかっていた言葉を無理矢理飲み込んで言わなかったから。

グラスを手にしたままだったのを思い出して勢いよく飲めばレモンの酸味が口いっぱいに広がり、冷たくキリッと口内を刺激された。


「まてまて、そんな風に飲むものじゃないのに」

「分かってるよ…。ショーマもう1杯」


今日は浴びるように飲むって決めたから、ショーマが止めてもあたしはやめない。


「はぁ…ほどほどにしときなよ?」


そんなショーマの心配もガン無視してあたしは飲み続けた。


「っざけるな…あたしの方がずっと、好きで…あたしの方が、ユアのこと知ってるし」


___その結果、ものの見事に酔いつぶれた。


「ユアの、優しいとこも…甘いとこ、も……どうやって、抱く…のかも」


飲みすぎて後半は何を言っているかなんて自分じゃ分からないほど。

だから今も独り言のようにブツブツ言っているけど、何を言ってるのか自分では分からない。

もしかしたらユアのことを言ってるのかもしれない。
だとしたら未練がましい痛い女。捨てられたって言うのに…。


「好き、ユア……ユア、が…好きなの」


だけど、そう呟いたのだけは覚えてる…その後は完全に記憶がない。


「ユアユアユアって、本当なんなわけ」


午前0時を過ぎた店内はショーマとアヤナの2人だけ。

酔い潰れて寝てしまったアヤナの頭に触れながらショーマは呟いた。


「ねぇ、お前のことよく知ってる男は俺でしょ?アヤナ」


ショーマの切なそうなそんな声も夢の世界に飛んでしまったあたしには届かない。

グラスに残った飲みかけのテキーラ・サンセットが切なげに揺れた。



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