雨音

不知火

君の秘密1

のちにあのつり目の美人があの子が言っていた麻里だと知った。
あの相合傘未遂事件の次の週の委員会の活動日まで、結局あの子には会えなかった。実際には、麻里を少し警戒してクラスまで行けていないというところが大きい。そのため僕は昼休みにカースト上位が行きそうなところをくまなく探した。屋上に続く階段や人でごった返す購買、新しくできた噴水のあるお洒落な中庭。しかし見つけることはできなかった。ここまで行動パターンが合わないとは、驚きでしかない。


委員会の活動があるこの日に雨が降っているのはもはや当然のことだし、むしろ晴れている方が落ち着かなそうだ。

活動自体は何事もなく進行がすすみ、無事終了した。今回ばかりは僕から君に話しかけなくては。そう思い君を探した。
「まってよ。聞きたいことがあるんだ。」
「あれ、しもべの役割を放棄した君が王様になんの用だね?」君はすこし固い顔をしていた。
「なんで先週別のところから帰ったの?」
「うーん、君にはまだまだ教えていない秘密がたくさんあるのさ。」
「なにそれ。僕と彼が入れ替わってるってことは知ってたの?」
「君は校舎の構造が分かってないみたいだねえ。」
なるほど。コの字型の校舎の恩恵を受けたのは彼だけではないみたいだ。彼が僕らのことを見つけたのと同じく、彼と僕のことも見えていたというわけか。僕のハッとした表情に気づき、にやけ顔を浮かべる。
「じゃあなんで」
「女の子の秘密に立ち入ろうなんて、君は野暮だねえ。」僕がなにも言えないでいると、
「じゃ、今日は傘持ってるから。」と歩き出してしまう。
「ま、まって。実は今日、僕傘持ってないんだ。」恥ずかしすぎて蚊の鳴くような声になってしまった。
君の背中がふと止まる。

「この傘一人だと大きいんだよね。」

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