雨音

不知火

僕と君

帰宅後、僕は嫌いな鏡の前に立ち、まじまじと自分の身なりをみた。身長は低く、女子の平均より少し高いくらいで、体格もこれと言った特徴はない。運動部のような筋肉もなければ、文化系のような繊細な体つきでもない。顔はよく見ても中の下。肌も綺麗ではなく、今は二カ所にニキビがある。なんとなく野暮ったい顔で、印象に残るのは手入れもしていない太い眉毛だろう。したほうがいいとは思うのだが、あいにく綺麗な眉毛というものも手入れの方法もわからない。流石に繋がるのがまずいことは知っているため、そこだけは処理をするようにしている。その眉を隠すために髪を伸ばし、今では目が見えるか怪しいレベルにまでなっている。校則がゆるくて助かった。まあそれを高校を選ぶ基準にしたのだが。

対してあの子は、と思い浮かべる。身長は僕より少し低い、つまり平均だ。光を反射するほど白い肌。あごあたりまで伸びた黒いショートカットは、ゆるい内巻きのカーブがかかっている。目はこれでもかとはっきりした二重。小さくて少しつぶれたような鼻は小動物っぽさを演出している。小さな口は、笑った時に見える八重歯を隠している。

つまるところ、僕が釣り合うようなレベルの人ではない。その現実にモヤモヤし、それを吹き飛ばすために机に向かい課題に一心不乱に取り組んだ。
そんなことをしてもこのモヤモヤは晴れないということを知りながら。

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