雨音

不知火

雨と君3

しばらくすると、
「あ、雨止んだね。」
そう言われて空を見ると、鉛色の雲の隙間から青い空がこちらをのぞいている。
「ちょうど別れ道で止むなんて、やっぱり私は運が良いね。」笑顔で君は言う。あわよくば君の家まで送っていこうとした僕は素直には喜べない。
雨以外で君を家まで送る理由はないか瞬時に考える。だめだ。見つからない。
「じゃあ、また明日ね。傘ありがとう。」
「うん、また明日。」
そんな陳腐なやりとりをして各々家路に着く。まったく、自分の気の弱さに辟易させられる。
家に着き、いつも通り二階の自分の部屋に直行した。ベットに体を沈め、目を閉じる。一応進学校に通っているため、課題はやらなければならないが、そんな気分ではない。
まどろみの中思い出すのは、
「雨が傘を鳴らす音が好きなんだ。」という君の言葉だった。不思議な言い回しだなと改めて思う。さすが図書委員だなという単純な思いは君の考え方が移ったからだろうか。

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