詩とは言いきれない短文の呟き

SSKK

あの雪がまってる

指は曲がって
爪は黒ずみ
ごつごつとして

皮膚もすっかり
硬くなってて

すべすべと
柔らかだった
白魚の手は

もう夢物語の
出来事みたいで

日に焼けて
染みだらけの
年老いた顔は皺が寄り

何度見ても
鏡の中に一人の老婆

美しさを問う事もなく
老い支度を急ぐだけの
淡々とした日々

そんな彼女に
心残りがひとつ、あった

忘れてしまうかもしれない
謝らないうちに

遅すぎたかもしれない
認めることが

褒められる事なく
育ったから
言ってあげられなかった

当然だと
教わって来たから
感謝も伝えられずに

子供達にも
それを、強いてしまったーー

次に会えるのは
いつ頃だろうか

先刻言おうとした事が
今にはもう
思い起こせない

女は書字を習えない時代
書き留めることすら 
出来やしない

せめて笑顔で迎えるくらいは
身体が覚えてくれるよう

鏡の前にはしわしわの顔
"白雪"って名前の
お婆ちゃんの話
















コメント

コメントを書く

「詩」の人気作品

書籍化作品