追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノベルバユーザー520245

【第十五話】殺戮④

「戦闘中とか気を付けてね。アレって気にしちゃダメな時ほど気になるから、大事な所で集中切らしちゃダメだよ?」


予想外に真面目なアドバイスが返ってきた。

てっきり「潰せばいいよ」とか返ってくると思っていただけに、恭司としては調子が狂う。

今さら嘘だとは言いづらい……。


「そ、そういえば、ククルはアレからどうしたんだろうな」


恭司はボロを出す前に話題を変えることにした。

今しがたの直近の謎について、ユウカにバトンを渡す。


「カバン教室のはずだし、まだ校内にいるんじゃない?すごいショック受けてそうな感じだったから、まだあそこにいたりして」

「あり得るな……。まさかあそこまで動揺されるとは思ってなかったからな……」

「まぁ、クレイアにとっては三谷恭司って神様みたいなものだしね。それが届きそうで届かなかったのが悲しいんだと思うよ」

「なんだか複雑な心境だな……」

「でも、だからってこのまま放置するわけにはいかないよね?どうするの?」

「………………」


思わず黙ってしまった。

適当な相槌でも何でもいい。

こんなにも普遍的な、答えならいくらでも見つかるやり取りに黙ってしまった。

ただの三谷恭司として、普通に答えようとした言葉を飲み込んだせいだ。

失敗だった。

気が緩んでいた。

恭司は“表情”と言葉を作り直し、答える。


「んー、まぁ、あんなのにいつまでも構ってても仕方ねぇし、しばらくは放置でもいいだろ。それより、今日は早く帰ろうぜ。昼飯食ってねぇから腹減っちまった」

「え?う、うん……」


不自然な流れで、いつもとは明らかに“らしくない”内容で繰り出された方針。

恭司は元々こういうのは上手くない。

口から飛び出した方針はあまりに恭司のいつも通りではなく、違和感は間違いなく“剥き出し”だった。

しかし、

ユウカはそれを、尋ねなかった。

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