追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノベルバユーザー520245

【第十二話】実技訓練⑦

「分かんないけど、もしかしたらそのための『イベント』なのかもしれないね。そういう戦闘系のイベントはランキング変更の対象になることもあるし」

「……マジか」

「マジマジ。別に強制でもないから絶対とはいえないけど、お父さんならそのくらいの根回しはしてそうだよね」

「……してそうだな」


実技訓練をまともに6ヶ月やっても18位分しか更新することが出来ないが、アベルトがこの半年の間に企画するイベントで2位分短縮できるなら話は別だ。

全校生徒参加でもない『イベント』で全校生徒対象のランキングを操作することは通常有り得ない話だと思うが、逆にそれを餌にして参加者を増やす目論見なのかもしれない。

……まぁ、その場合には『カップル限定』という部分が障害……いや厄介な種になりそうだが、その辺りはアベルトの権力で何とかするのだろう。

恭司はため息を吐き出した。


「……?どうかしたの?」

「いや……」


次は恭司が足を開いて座りながら、ユウカに背中を押されつつ答える。

……ユウカにイベントの『カップル限定』という部分はまだ伝えていない。

いずれは話さなくてはならないと分かっているが、言いづらいので後回しにしているのが現状だった。


「ふぅん?恭司が私に隠し事なんて珍しいね?さては……」


ユウカは恭司の背中を床に向けて押しながら、含みのある声音で話しかける。

分かるはずなど無いと分かっていながら、恭司は冷や汗を浮かび上がらせた。

確かにユウカとは毎日毎日常に一緒にいるが、恋人という関係には勿論なっていないし、男女の一線を超えた訳でもない。

ギリギリではあるものの、その部分については徹底して守り切っているのだ。

だからこそ、

こんなイベントの話が出てきてしまえば途端に意識してしまう。

仮の設定だとしても無関心ではいられないはずだ。

そして、

恭司はまだそれに対する対策も何も出来ていない。

いずれ来ると分かってはいるが、それに対して腹を括っている訳でもなければ、何か打開策がある訳でもないというのが現状だった。

そのため、

今はそれをユウカに知られる訳には絶対にいかない。

ユウカがどれだけ勘付いていようが、何としても誤魔化さなければならないのだ。

恭司は前屈で体を曲げながら、ドキドキしつつユウカの言葉を聞く。


「体が密着しているからって、エッチなことを考えているね?」

「……………………」

「……………………」

「……………………」


考えてない。


「まぁとにかく、今は授業だな。Bクラスの実力がどんなもんかもまだ分かんねぇし」

「あっ!!誤魔化した!!」

「誤魔化してません」

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