追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
【第十話】謎の転校生⑧
「いやいつまで驚いてんだ……。教科書見せてもらうようにってことだから見せてくれ」
恭司は小さめの声で話しかける。
ユウカは固まった首をギギギと動かしながら、改めて恭司を見た。
「な、何が何だかサッパリ……」
「盛大に勘違いしているようだから後で休み時間の時に説明してあげよう。ただし今は教科書を見せるんだ」
恭司はなるべく武者修行帰りっぽい感じを意識しながらユウカに囁きかけた。
武者修行帰りっぽいというよりは変態っぽい気がしないでもなかったが、今はとりあえず教科書だ。
ユウカはまるで納得してなさそうな顔をしつつも、渋々カバンを開き、教科書を取り出す。
何故今まで出していなかったのかは疑問の残る所だったが、今は敢えて聞かないことにした。
ユウカは取り出した教科書を開くと、くっ付けられた2人の机の間に置く。
それは、斜線もマーカーも落書きもメモ書きもない、とてもとても綺麗な1冊の本だった。
「ま、まるで新品のようだ……」
使ってないことは明らかだった。
「う、うるさいよ!!私はこんなの無くても問題ないから大丈夫なの!!」
「確かアベルトさんがユウカの学力の低さを嘆いていたような気がするが……」
「歴史は苦手なの!!」
多分歴史だけじゃないんだろうなと、恭司は少し温かい気持ちになった。
通信教育も……場合によっては必要なものかもしれない。
「てか、き……ギルスだって別に頭よくないでしょ。ずっと武者修行 (笑) してたわけだし」
「 (笑) を付けるな。色々と過酷な修行だったんだ」
「ふーん。そうなんだー」
まさかユウカに弄られるとは思わなかった。
ちょっと怒っているらしい。
恭司はため息を堪えながら、新品そのものの教科書を手に取り、パラパラとめくる。
「さすが政府直轄の学校だなぁ……。内容以前に、書いてる文字のほとんどが分かんねぇ……」
「でしょ?私が教科書見ない方針なのも分かろうものでしょ?」
「いや、それも分かんねぇ……」
恭司は不貞腐れるユウカを横目に、教科書の内容に目を通す。
分厚くて分かりにくい教科書だったが、知らない文字は飛ばした。
とりあえず授業で今やっているページを開く。
「何々?えー、今やってるのは、『三谷恭司の凶事について』…………か…………」
「……………………」
「……………………」
思わず教科書を閉じそうになった。
自分のことが教科書に載っていることはアベルトから聞いて知っていたが、初っ端というのは予想外だった。
しかも章分けされて中身がそれなりに詳しく書かれている上に、タイトルがつまらないダジャレとセットというのもショックだった。
ちょっと凹んだ。
(一体何が悲しくて、自分が過去に起こしたことについて授業で学ばなければならないのか……)
恭司はため息を堪えつつ、教科書の続きを読み進める。
今授業でやっているのは『王族狩り:序章』という、読む前から既に物騒な気配が濃厚な章タイトルだった。
自分の記憶を取り戻すにはこれ以上無いくらい良い機会になるだろうが、何とも複雑な心境だ。
(記憶にない自分の黒歴史を全校生徒で一斉に学ばれてるっていうのは、そこはかとなく恥ずかしいものだな……)
読んでいる端から辛い気持ちになっていく。
まるで懺悔でもしているようで、学べば学ぶほど鬱になっていきそうだった。
しかし、
いかに黒歴史とはいえ、自分のことである以上、見て見ぬフリは出来ない。
恭司は読み進める。
それは、約200年前。
恭司の記憶が無くなる前のことであり、時空間魔法で飛ばされる前の、
恭司が本来生きていたであろう時代のことについて、記載されていた。
恭司は小さめの声で話しかける。
ユウカは固まった首をギギギと動かしながら、改めて恭司を見た。
「な、何が何だかサッパリ……」
「盛大に勘違いしているようだから後で休み時間の時に説明してあげよう。ただし今は教科書を見せるんだ」
恭司はなるべく武者修行帰りっぽい感じを意識しながらユウカに囁きかけた。
武者修行帰りっぽいというよりは変態っぽい気がしないでもなかったが、今はとりあえず教科書だ。
ユウカはまるで納得してなさそうな顔をしつつも、渋々カバンを開き、教科書を取り出す。
何故今まで出していなかったのかは疑問の残る所だったが、今は敢えて聞かないことにした。
ユウカは取り出した教科書を開くと、くっ付けられた2人の机の間に置く。
それは、斜線もマーカーも落書きもメモ書きもない、とてもとても綺麗な1冊の本だった。
「ま、まるで新品のようだ……」
使ってないことは明らかだった。
「う、うるさいよ!!私はこんなの無くても問題ないから大丈夫なの!!」
「確かアベルトさんがユウカの学力の低さを嘆いていたような気がするが……」
「歴史は苦手なの!!」
多分歴史だけじゃないんだろうなと、恭司は少し温かい気持ちになった。
通信教育も……場合によっては必要なものかもしれない。
「てか、き……ギルスだって別に頭よくないでしょ。ずっと武者修行 (笑) してたわけだし」
「 (笑) を付けるな。色々と過酷な修行だったんだ」
「ふーん。そうなんだー」
まさかユウカに弄られるとは思わなかった。
ちょっと怒っているらしい。
恭司はため息を堪えながら、新品そのものの教科書を手に取り、パラパラとめくる。
「さすが政府直轄の学校だなぁ……。内容以前に、書いてる文字のほとんどが分かんねぇ……」
「でしょ?私が教科書見ない方針なのも分かろうものでしょ?」
「いや、それも分かんねぇ……」
恭司は不貞腐れるユウカを横目に、教科書の内容に目を通す。
分厚くて分かりにくい教科書だったが、知らない文字は飛ばした。
とりあえず授業で今やっているページを開く。
「何々?えー、今やってるのは、『三谷恭司の凶事について』…………か…………」
「……………………」
「……………………」
思わず教科書を閉じそうになった。
自分のことが教科書に載っていることはアベルトから聞いて知っていたが、初っ端というのは予想外だった。
しかも章分けされて中身がそれなりに詳しく書かれている上に、タイトルがつまらないダジャレとセットというのもショックだった。
ちょっと凹んだ。
(一体何が悲しくて、自分が過去に起こしたことについて授業で学ばなければならないのか……)
恭司はため息を堪えつつ、教科書の続きを読み進める。
今授業でやっているのは『王族狩り:序章』という、読む前から既に物騒な気配が濃厚な章タイトルだった。
自分の記憶を取り戻すにはこれ以上無いくらい良い機会になるだろうが、何とも複雑な心境だ。
(記憶にない自分の黒歴史を全校生徒で一斉に学ばれてるっていうのは、そこはかとなく恥ずかしいものだな……)
読んでいる端から辛い気持ちになっていく。
まるで懺悔でもしているようで、学べば学ぶほど鬱になっていきそうだった。
しかし、
いかに黒歴史とはいえ、自分のことである以上、見て見ぬフリは出来ない。
恭司は読み進める。
それは、約200年前。
恭司の記憶が無くなる前のことであり、時空間魔法で飛ばされる前の、
恭司が本来生きていたであろう時代のことについて、記載されていた。
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