追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
【第十話】謎の転校生④
「え、えーと、君は……」
膠着した状況の中、ようやく担任教師が反応した。
トラストとどこか同じ雰囲気を持つ青年で、細身の体格も顔つきもトラストとどこか似ているなと恭司は思った。
トラストはこの状況を見かねたのか、『良い先生』らしいパーフェクトスマイルで恭司の後に続いて入ってくる。
「お騒がせして申し訳ございません、『クリス先生』。彼が今日転校予定だった、“アベルト・バーレン様の親戚の” ギルス・ギルバート君です」
トラストは困ったような笑顔を浮かべながら、そんなことを言って恭司のことを紹介した。
恭司から見た言葉の剣呑さとは裏腹に、言葉尻にはついほんの先ほどまであった敵対心はどこにも無い。
人間はこうまで完璧に擬態できるものかと、恭司は内心で感心していた。
「あ、あぁ、君がギルス・ギルバート君だったのか。いきなり入ってきたからビックリしてしまったよ。転校初日で遅刻とは、君もなかなか肝が据わってるね」
担任の先生……クリスは、そう言って恭司に歩み寄ってきた。
トラストと似ているからか、その笑顔の表情もどこか嘘っぽく見える。
恭司は会釈だけ返した。
「さて、そういうことなら皆にも紹介しよう!!今日からこのクラスに編入となる、『ギルス・ギルバート』君だ!!これから仲良くしてやってくれ!!」
クリスはそう言って恭司の肩を掴み、生徒たちの方を見ながら大きな声でそう言った。
さっきまで戸惑っていたとは思えないくらい見事な切り替えっぷりだ。
あまりにわざとらしいので肩を掴まれた時に一瞬手を弾きそうになったが、ここでのトラブルはどう考えても面倒事にしかならない。
恭司は我慢することにした。
「さて、せっかくの機会だ。何か自己紹介をしてもらっても構わないかな?」
クリスはそう言って恭司に話題を振ってきた。
初対面で肩を掴んでくることと言いこの口ぶりと言い、少し馴れ馴れしい人だと感じつつも、恭司は仕方なく頷き、クラスの生徒たちの方に向き直る。
「ギルス・ギルバートです。あまり会話の得意な方ではありませんが、精一杯頑張りたいと思います。皆さま今後とも宜しくお願い申し上げます」
少し固かったかもしれないが、恭司的には及第点だった。
個性の薄い定型文に近い挨拶だが、フレンドリーなのは性に合わない。
本当の意味でこれが精一杯だった。
生徒たちの方を見ると、良いのか悪いのかよく分からない顔をしている。
一部の女子にだけ少し熱い視線を感じないでもなかったが、単に転校生が珍しいだけだろうと、そこまで気には留めなかった。
膠着した状況の中、ようやく担任教師が反応した。
トラストとどこか同じ雰囲気を持つ青年で、細身の体格も顔つきもトラストとどこか似ているなと恭司は思った。
トラストはこの状況を見かねたのか、『良い先生』らしいパーフェクトスマイルで恭司の後に続いて入ってくる。
「お騒がせして申し訳ございません、『クリス先生』。彼が今日転校予定だった、“アベルト・バーレン様の親戚の” ギルス・ギルバート君です」
トラストは困ったような笑顔を浮かべながら、そんなことを言って恭司のことを紹介した。
恭司から見た言葉の剣呑さとは裏腹に、言葉尻にはついほんの先ほどまであった敵対心はどこにも無い。
人間はこうまで完璧に擬態できるものかと、恭司は内心で感心していた。
「あ、あぁ、君がギルス・ギルバート君だったのか。いきなり入ってきたからビックリしてしまったよ。転校初日で遅刻とは、君もなかなか肝が据わってるね」
担任の先生……クリスは、そう言って恭司に歩み寄ってきた。
トラストと似ているからか、その笑顔の表情もどこか嘘っぽく見える。
恭司は会釈だけ返した。
「さて、そういうことなら皆にも紹介しよう!!今日からこのクラスに編入となる、『ギルス・ギルバート』君だ!!これから仲良くしてやってくれ!!」
クリスはそう言って恭司の肩を掴み、生徒たちの方を見ながら大きな声でそう言った。
さっきまで戸惑っていたとは思えないくらい見事な切り替えっぷりだ。
あまりにわざとらしいので肩を掴まれた時に一瞬手を弾きそうになったが、ここでのトラブルはどう考えても面倒事にしかならない。
恭司は我慢することにした。
「さて、せっかくの機会だ。何か自己紹介をしてもらっても構わないかな?」
クリスはそう言って恭司に話題を振ってきた。
初対面で肩を掴んでくることと言いこの口ぶりと言い、少し馴れ馴れしい人だと感じつつも、恭司は仕方なく頷き、クラスの生徒たちの方に向き直る。
「ギルス・ギルバートです。あまり会話の得意な方ではありませんが、精一杯頑張りたいと思います。皆さま今後とも宜しくお願い申し上げます」
少し固かったかもしれないが、恭司的には及第点だった。
個性の薄い定型文に近い挨拶だが、フレンドリーなのは性に合わない。
本当の意味でこれが精一杯だった。
生徒たちの方を見ると、良いのか悪いのかよく分からない顔をしている。
一部の女子にだけ少し熱い視線を感じないでもなかったが、単に転校生が珍しいだけだろうと、そこまで気には留めなかった。
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