追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
【第十話】謎の転校生②
「…………」
思わず口を閉じてしまった。
避けたはずの話題が帰ってきたのだ。
偽装だらけの恭司の近辺のことを長く話すのは危険だし、これは本来は話題を早く変えるべき展開だが、
しかし、
ここで話題を変えるための適当な切り返しは出来なかった。
それくらい衝撃的だったのだ。
ユウカが学校でこういう扱いを受けていることは知っていたし、ユウカ本人からも色々話を聞いていたが、
実際の状況の一端を見て恭司が感じたのは、他ならぬ『絶望感』だ。
ラウドのような、同じ学生でありながら貴族という立場にいる人間から口撃されるのはまだ分かる。
所詮は学生という、精神的にも未熟な中で、貴族という生まれながらの優位性を持った人間から言われる言葉なのだ。
それなら許せはしないまでも、年齢・立場的にまだ納得しようもある。
だが、
明らかな大人の、それも教師という立場にいる人間からこうまであからさまな差別を受けて、何も感じずにいられるはずはない。
まだ実際な所を見てはいないため何とも言えないが、ユウカが学校でどういう扱いを受けているのかはあまりにも分かりやすく垣間見えていた。
「ちなみに、君もあの方の親戚ということは、ユウカ・バーレンとも……」
先生……トラストは、すぐに対象を恭司に移してきた。
元々それを聞きたかったのか、恐ろしく冷たい視線が恭司を貫く。
しかし、
予想に容易いこの質問に対し、恭司の返答は既に決まっていた。
すぐに即答する。
「ええ。親戚です」
本当ははぐらかすなり伏せるなり方法はあるのかもしれないが、結局どの選択も選ばなかった。
恭司にとって、ユウカとは今後も一緒にいることは決まっているのだから、それなら最初からセットにされた方が都合もいいという判断だ。
恭司はここに、友達や思い出を作りにきたわけではない。
目的さえ達成できれば、他は正直どうなっても構わなかった。
「……そうか。辛い学校生活になるかもしれないが、どうか挫けずに」
言葉とは裏腹に、トラストの視線は相変わらず冷たいものだった。
まるで汚物や敵を見るように、その目は言葉以上の説得力を持って恭司に突き刺さる。
この先生は、そう遠くないうちに自分たちの敵に回るだろう。
恭司は確信した。
そうして、
結局それ以降トラストから情報を引き出すことは出来ず、ただ廊下を歩くだけとなった。
会話も無くなり、関係性も勿論出来ていない。
それどころか恭司のことを視界にも入れずに無視する有様だ。
最初に職員室を訪れた時と態度をこうまであからさまに変えているあたり、存外大胆な一面もあったらしい。
ユウカ関連に対するそれと他の生徒に対するそれで態度を明確に分けているのだろう。
ユウカ、いやクレイアに関わる者に対しては問答無用ということだ。
公平を原則とする教師が間違ってもやっていいことではないが、抗議したところで無駄な時間を過ごすだけなことは目に見えている。
思わずため息の一つでも吐いてしまいそうだった。
(まぁ、気を取り直すしかねぇな)
恭司はトラストのことは気にしないよう努め、前だけを見て歩き出した。
互いが無視し合っているのだから当たり前だが、2人は無言のまま教室への道のりを消化する。
当初の「関係性を築く」という目的からは完全に逸脱しているが、これはこれでいい情報収集になった。
後はユウカ本人のことだけが気掛かりだが……
この状況を鑑みて、ユウカの考えていることくらいは容易に想像がつく。
恭司は無言のまま思考をふんだんに巡らしながら、トラストと共に教室までの道のりをゆっくりと歩いた。
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思わず口を閉じてしまった。
避けたはずの話題が帰ってきたのだ。
偽装だらけの恭司の近辺のことを長く話すのは危険だし、これは本来は話題を早く変えるべき展開だが、
しかし、
ここで話題を変えるための適当な切り返しは出来なかった。
それくらい衝撃的だったのだ。
ユウカが学校でこういう扱いを受けていることは知っていたし、ユウカ本人からも色々話を聞いていたが、
実際の状況の一端を見て恭司が感じたのは、他ならぬ『絶望感』だ。
ラウドのような、同じ学生でありながら貴族という立場にいる人間から口撃されるのはまだ分かる。
所詮は学生という、精神的にも未熟な中で、貴族という生まれながらの優位性を持った人間から言われる言葉なのだ。
それなら許せはしないまでも、年齢・立場的にまだ納得しようもある。
だが、
明らかな大人の、それも教師という立場にいる人間からこうまであからさまな差別を受けて、何も感じずにいられるはずはない。
まだ実際な所を見てはいないため何とも言えないが、ユウカが学校でどういう扱いを受けているのかはあまりにも分かりやすく垣間見えていた。
「ちなみに、君もあの方の親戚ということは、ユウカ・バーレンとも……」
先生……トラストは、すぐに対象を恭司に移してきた。
元々それを聞きたかったのか、恐ろしく冷たい視線が恭司を貫く。
しかし、
予想に容易いこの質問に対し、恭司の返答は既に決まっていた。
すぐに即答する。
「ええ。親戚です」
本当ははぐらかすなり伏せるなり方法はあるのかもしれないが、結局どの選択も選ばなかった。
恭司にとって、ユウカとは今後も一緒にいることは決まっているのだから、それなら最初からセットにされた方が都合もいいという判断だ。
恭司はここに、友達や思い出を作りにきたわけではない。
目的さえ達成できれば、他は正直どうなっても構わなかった。
「……そうか。辛い学校生活になるかもしれないが、どうか挫けずに」
言葉とは裏腹に、トラストの視線は相変わらず冷たいものだった。
まるで汚物や敵を見るように、その目は言葉以上の説得力を持って恭司に突き刺さる。
この先生は、そう遠くないうちに自分たちの敵に回るだろう。
恭司は確信した。
そうして、
結局それ以降トラストから情報を引き出すことは出来ず、ただ廊下を歩くだけとなった。
会話も無くなり、関係性も勿論出来ていない。
それどころか恭司のことを視界にも入れずに無視する有様だ。
最初に職員室を訪れた時と態度をこうまであからさまに変えているあたり、存外大胆な一面もあったらしい。
ユウカ関連に対するそれと他の生徒に対するそれで態度を明確に分けているのだろう。
ユウカ、いやクレイアに関わる者に対しては問答無用ということだ。
公平を原則とする教師が間違ってもやっていいことではないが、抗議したところで無駄な時間を過ごすだけなことは目に見えている。
思わずため息の一つでも吐いてしまいそうだった。
(まぁ、気を取り直すしかねぇな)
恭司はトラストのことは気にしないよう努め、前だけを見て歩き出した。
互いが無視し合っているのだから当たり前だが、2人は無言のまま教室への道のりを消化する。
当初の「関係性を築く」という目的からは完全に逸脱しているが、これはこれでいい情報収集になった。
後はユウカ本人のことだけが気掛かりだが……
この状況を鑑みて、ユウカの考えていることくらいは容易に想像がつく。
恭司は無言のまま思考をふんだんに巡らしながら、トラストと共に教室までの道のりをゆっくりと歩いた。
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