追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
【第九話】フェルビア学園④
「何故だ……」
恭司は一人で首を傾げながら、ユウカと共に通学路を歩く。
今は街へと続く森の中だ。
崖だの川だの、相変わらず民家と市街地の間にあるとは思えない険しさだったが、恭司は難なくユウカの後ろに付いていった。
恭司の前を歩くユウカの方はというと、何か吹っ切れたのか、割とサクサク進んでいる。
特に遅くも速くもない速度で、自然な動きだ。
恭司は首を傾げるしかなかった。
「…………不気味だ」
山を1つ越えた辺りで、訝しげに呟く。
正面から説得してもリスクを提示しても餌をチラつかせてもまるで動じなかったユウカが、いきなり学校へ行く気になったのだ。
しかもそのきっかけは、単に恭司が諦めただけ……。
謎だ。
「ほらほら、早く行かないと遅刻しちゃうよ?学校までけっこう遠いんだから」
「あ、あぁ……」
考え事をして少し速度が落ちていたのであろう恭司のことを、ユウカの方から注意する。
やっぱり不気味だ……。
「な、なぁ一体急にどうしたんだ?さっきまであんなに嫌がっていたのに、何でいきなり……?」
考えても分からないことは、聞いてみるに限る。
恭司は恐る恐る尋ねてみた。
「別に。君の熱い説得に心打たれたんだよ」
「いやそれは嘘だろ……」
即座にツッコミを入れる。
その後も遠回しに質問してみたが、物の見事に全てはぐらかされてしまった。
納得できないまま道のりは消化され、いよいよ街が見えてくる。
相変わらずの近代的な風景。
この大陸の南にあるという、国の中心となっている街。
そこには沢山のビルが並び、車も人も所狭しと移動を繰り返している。
ユウカは街に到着すると、何気ない動きでビルの陰に向けて歩いていった。
恭司は首を傾げつつもその後ろに付いていくが、付いて行けば行くほど、明らかに怪しげな雰囲気のある場所に向かっていく。
人の気配は歩を進めるたびにどんどんどんどん少なくなっていき、ユウカは最終的に、一つの薄暗いビルの路地に入っていった。
普通の通勤や通学の経路からは大きく外れているのであろうそのビルは、他に人は全く見当たらない。
ユウカの家の前に広がる山とも近いそのビルは、今はもうほとんど使われていなさそうな気配を醸し出していた。
ユウカはそれを見て足を止めると、クルリと恭司の前で振り向く。
相変わらず訳の分からないことだらけだが、ユウカは両手を腰に当てると、再び膨らみの少ない胸を張って恭司の前に仁王立ちした。
「さて、ここからは私オリジナルの道のりになります。ちょっと跳ねたり走ったりするけど遅れないように!!」
「え?」
言うが早いか、その言葉を言うと同時に、ユウカの姿が突然消えた。
いや、厳密には消えたのではなく、瞬動で移動したのだと分かっている。
恭司はユウカが移動した方向……上を見上げると、ユウカはその薄暗いビルの側面で見つけることができた。
タイルの敷き詰められたビルの壁に、ユウカは事もなげに垂直に立っている。
まるで忍者の如しだった。
恭司は一人で首を傾げながら、ユウカと共に通学路を歩く。
今は街へと続く森の中だ。
崖だの川だの、相変わらず民家と市街地の間にあるとは思えない険しさだったが、恭司は難なくユウカの後ろに付いていった。
恭司の前を歩くユウカの方はというと、何か吹っ切れたのか、割とサクサク進んでいる。
特に遅くも速くもない速度で、自然な動きだ。
恭司は首を傾げるしかなかった。
「…………不気味だ」
山を1つ越えた辺りで、訝しげに呟く。
正面から説得してもリスクを提示しても餌をチラつかせてもまるで動じなかったユウカが、いきなり学校へ行く気になったのだ。
しかもそのきっかけは、単に恭司が諦めただけ……。
謎だ。
「ほらほら、早く行かないと遅刻しちゃうよ?学校までけっこう遠いんだから」
「あ、あぁ……」
考え事をして少し速度が落ちていたのであろう恭司のことを、ユウカの方から注意する。
やっぱり不気味だ……。
「な、なぁ一体急にどうしたんだ?さっきまであんなに嫌がっていたのに、何でいきなり……?」
考えても分からないことは、聞いてみるに限る。
恭司は恐る恐る尋ねてみた。
「別に。君の熱い説得に心打たれたんだよ」
「いやそれは嘘だろ……」
即座にツッコミを入れる。
その後も遠回しに質問してみたが、物の見事に全てはぐらかされてしまった。
納得できないまま道のりは消化され、いよいよ街が見えてくる。
相変わらずの近代的な風景。
この大陸の南にあるという、国の中心となっている街。
そこには沢山のビルが並び、車も人も所狭しと移動を繰り返している。
ユウカは街に到着すると、何気ない動きでビルの陰に向けて歩いていった。
恭司は首を傾げつつもその後ろに付いていくが、付いて行けば行くほど、明らかに怪しげな雰囲気のある場所に向かっていく。
人の気配は歩を進めるたびにどんどんどんどん少なくなっていき、ユウカは最終的に、一つの薄暗いビルの路地に入っていった。
普通の通勤や通学の経路からは大きく外れているのであろうそのビルは、他に人は全く見当たらない。
ユウカの家の前に広がる山とも近いそのビルは、今はもうほとんど使われていなさそうな気配を醸し出していた。
ユウカはそれを見て足を止めると、クルリと恭司の前で振り向く。
相変わらず訳の分からないことだらけだが、ユウカは両手を腰に当てると、再び膨らみの少ない胸を張って恭司の前に仁王立ちした。
「さて、ここからは私オリジナルの道のりになります。ちょっと跳ねたり走ったりするけど遅れないように!!」
「え?」
言うが早いか、その言葉を言うと同時に、ユウカの姿が突然消えた。
いや、厳密には消えたのではなく、瞬動で移動したのだと分かっている。
恭司はユウカが移動した方向……上を見上げると、ユウカはその薄暗いビルの側面で見つけることができた。
タイルの敷き詰められたビルの壁に、ユウカは事もなげに垂直に立っている。
まるで忍者の如しだった。
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