追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
【第七話】任務⑦
「さて、それでは行ってくる。見送りは結構だ。君も疲れているだろう?ユウカを見習って君も早く寝るといい」
アベルトはそう言ってまとめた荷物を手に取ると、そのまま玄関に向けてさっさと歩いていった。
相変わらず名残惜しい気もしないでもない感じがしたが、言っても仕方のないことだ。
厄介事が増えて憔悴しきった部分もあったので、恭司は素直に「分かりました」とだけ返事をしておいた。
一つも消化出来ないで『やること』ばかりが増えていく今の現状に、焦りはただただ積み上がっていく。
その不安はとても大きく、解消の目処も全く立ちはしないが、アベルトは既に部屋を出たのだ。
少しすると、遠くで玄関のドアが閉まる音も聞こえた。
完全に出て行ったのだろう。
結局見送りには本当に行かなかったが、特に後悔は無い。
(いや、この場合、その気力すら無かったと言う方が正しいか……)
まるで、自分が思考を排除した人形に変えられていくような気がして、恭司は自分に対する無力感だけを、強く感じていた。
「まぁ、それでも、やるべきことは、やらなきゃいけないよな……」
恭司はコーヒーを一気に飲み干すと立ち上がる。
アベルトの言う通り、今日は疲れてしまった。
そろそろ眠らなければいけない。
ユウカも既に眠りについているだろう。
恭司はそのまま、2階の自室へと足を向けた。
しかし、
「恭司……」
いざリビングから出ようとしたその時、
扉を開けてユウカがやって来た。
「ユウカ……」
恭司は意外そうな表情で扉の前に立つユウカを見つめた。
ユウカがこんな時間に起きていることもそうだが、今日の昼の一件の後の様子から、しばらくは話しかけてこないかもしれないと予想していたからだ。
まさかその日のうちに話しかけてくるとは思わなかった。
「えっと……まだ起きてたんだね。お父さん来てたの?」
ユウカは少しモジモジしながらそう尋ねてくる。
ユウカの部屋は一階だ。
おそらく、内容までは分からないでも声くらいは聞こえてただろうとは思うが、そこは気付いていないことにした。
「あぁ、そうなんだ。昼の一件でな……ちょっと話してた」
「ふ、ふーん……。今日の朝帰ったばかりなのに大袈裟だね」
「はは。そうだな」
恭司はコーヒーに口を付けた。
正直もうほとんど残っていないが、妙に緊張して最後の一滴まで飲んでしまった。
恭司が動揺するのは、けっこう珍しいことだ。
「んと、座ってもいいかな?せっかくだしお話したいなって」
「あ、ああ。もちろんだ」
ユウカはそうして、恭司の隣の席へと座った。
いつも通りと言えばいつも通りだが、今だけは少しこそばゆい感じがした。
アベルトはそう言ってまとめた荷物を手に取ると、そのまま玄関に向けてさっさと歩いていった。
相変わらず名残惜しい気もしないでもない感じがしたが、言っても仕方のないことだ。
厄介事が増えて憔悴しきった部分もあったので、恭司は素直に「分かりました」とだけ返事をしておいた。
一つも消化出来ないで『やること』ばかりが増えていく今の現状に、焦りはただただ積み上がっていく。
その不安はとても大きく、解消の目処も全く立ちはしないが、アベルトは既に部屋を出たのだ。
少しすると、遠くで玄関のドアが閉まる音も聞こえた。
完全に出て行ったのだろう。
結局見送りには本当に行かなかったが、特に後悔は無い。
(いや、この場合、その気力すら無かったと言う方が正しいか……)
まるで、自分が思考を排除した人形に変えられていくような気がして、恭司は自分に対する無力感だけを、強く感じていた。
「まぁ、それでも、やるべきことは、やらなきゃいけないよな……」
恭司はコーヒーを一気に飲み干すと立ち上がる。
アベルトの言う通り、今日は疲れてしまった。
そろそろ眠らなければいけない。
ユウカも既に眠りについているだろう。
恭司はそのまま、2階の自室へと足を向けた。
しかし、
「恭司……」
いざリビングから出ようとしたその時、
扉を開けてユウカがやって来た。
「ユウカ……」
恭司は意外そうな表情で扉の前に立つユウカを見つめた。
ユウカがこんな時間に起きていることもそうだが、今日の昼の一件の後の様子から、しばらくは話しかけてこないかもしれないと予想していたからだ。
まさかその日のうちに話しかけてくるとは思わなかった。
「えっと……まだ起きてたんだね。お父さん来てたの?」
ユウカは少しモジモジしながらそう尋ねてくる。
ユウカの部屋は一階だ。
おそらく、内容までは分からないでも声くらいは聞こえてただろうとは思うが、そこは気付いていないことにした。
「あぁ、そうなんだ。昼の一件でな……ちょっと話してた」
「ふ、ふーん……。今日の朝帰ったばかりなのに大袈裟だね」
「はは。そうだな」
恭司はコーヒーに口を付けた。
正直もうほとんど残っていないが、妙に緊張して最後の一滴まで飲んでしまった。
恭司が動揺するのは、けっこう珍しいことだ。
「んと、座ってもいいかな?せっかくだしお話したいなって」
「あ、ああ。もちろんだ」
ユウカはそうして、恭司の隣の席へと座った。
いつも通りと言えばいつも通りだが、今だけは少しこそばゆい感じがした。
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