追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノベルバユーザー520245

【第七話】任務④

「まぁ……分かりました。本当はまだまだまだまだ質問したいことが山積みですが、貴方は私の恩人であり家主であり依頼主です。ご命令には従わせていただきますよ」

「ありがとう。忠義心溢れる部下を持てたようで私は幸せだ。さらに”息子”にまでなってくれたら、本当に言うことは何もないのだけれどね」

「……私も良い上司を持てて幸せですよ」


後半部分はスルーした。


「つれないね……。クレイアのリーダーの娘という点を除けば、まあまあ良い物件と思うが……」

「その点はむしろ全く気になりませんけどね。クレイアについてまだそう詳しく知っているわけではありませんが、私自身がそれ以上の嫌われ者だ」

「なら付き合ってみればどうかね?性格的な相性も良さそうだし、ユウカは意外と尽くすタイプだぞ?」

「尽くすというよりは依存に見えないこともないですがね……。ただ、別にそれ以前の問題ですよ。知り合ってまだ何日も経っていないのに何を言っているんですか……」

「若いのに固いね、君は。そんな君に、二人の愛を育む素敵なイベントを用意してみた」

「……話聞いてました?それに時間がないんじゃ……」

「聞いてたしすぐ済む話だよ。さあ、これだ」


アベルトはそう言って1枚の紙をテーブルに出した。

企画書のようで、タイトルに大きく『LOVE祭り』と書いてある。


「…………これは?」


恭司は疑心100%の表情で尋ねた。

中身の内容を見ても悪ふざけとしか思えない。


「これをそのうち学校行事として執り行うつもりだ。参加したまえ」

「嫌なんですけど……」


企画書の参加条件の中に『カップルの男女』と書かれている。

さっきまでの話はこのための布石だったということだ。


「今日せっかく戻らなければならないのならせめてこれを共有しておこうと思ってね。いい企画だろう?」

「上機嫌だった理由がやっと分かりましたよ……」


なんてくだらない理由だと、恭司は辟易する気持ちで一杯だった。

アベルトはずっとこれを話したかったのだろう。


「でも、これはさすがに受けられるか分かりませんよ……。ユウカの協力が必要です」

「まぁ、追い追いの話だからそう畏まらなくてもいいんだよ。君はまだ入学すらしていない身だからね。今はまだ頭の片隅に置いておく程度でいい」

「はぁ……」

「ただ、私としても、君がこれに乗ってくれることを心より期待しているよ。なんせこれは、仕事の話でもあるのだから」

「……仕事の話?」

「あぁ。このイベントで、『ボルディス』の長男を暗殺してほしいんだ」

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