【第六話】ラウド・ウォーリア⑨

「さて、それでは私たちはこれで失礼するわ。なんか悪目立ちしちゃってるぽいし。あなたたちも早く撤収した方がいいと思うわよ」


メルディは恭司に向かってそう言った。

ユウカと恭司の二人を見て、この少女は恭司に対して言うべきだと判断したのだ。

ついさっき、遠くから歩いてほんの数分会話に入ってきたばかりだというのに、強気で悪評高いユウカではなく、明らかにその他大勢と見える恭司に声を掛けてきた。

メルディは、この二人の行動の、本当の主導は恭司にあると見抜いているのだ。

流れもあるだろうが、さっき感じた違和感も手伝って、恭司は嫌な感覚を覚えた。


「ええ。ありがとうございます。ユウカ共々、早急にこの場を去ることに致します」


恭司は事務的な口調を崩さない。

だが、

メルディは恭司のその言葉にむしろ満足したような微笑みを浮かべ、さっさとレジの方に歩いていった。

ラウドはそれに対し特に何も言わずに、その後ろをついて行く。

主従関係はイマイチ見えないが、ラウドがあの少女の行動に口を挟まないことだけは分かった。

兎にも角にも、メルディの登場で話は急速的に収束し、終わったのだ。

恭司は訝しみに満ちた瞳で、会計中のメルディの背中を見つめる。


「ユウカ……。アレが何者か分かるか？」

「ううん……。さすがに分かんないかな」

「そうか……」


ユウカのメルディに対する認識は既に聞いている。

だが、

それでも尚聞きたくなるくらい、あの少女は異質な存在だった。

おそらく、恭司の今後にも関わってくる人物だろう。

なんせあのラウドを、実質的にあの少女一人で抑えつけたのだ。

謎は増える一方だが、それらは結局、今の段階では解消しようもないものばかりだ。

恭司とユウカは心の中に妙なしこりを残しながらも、既に会計を終えた二人の後に続いてレジへと進む。

店を出たその時には、もうあの二人の姿はなかった。

どうやら、これ以上の余計なトラブルは起きずに済みそうだ。

恭司とユウカは速やかに家までの帰路につくと、少し早歩きでその場を立ち去る。

注目されるのも嫌だったし、何よりこの騒ぎを聞き付けて何か厄介なものが割り込んでくるかもしれないからだ。

 恭司はユウカの隣をせかせかと歩きながら、あの貴族という存在に対する対処法を、一人頭の中で考えていた。