追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
【第四話】告白⑥
「その内容……さすがに少しくらいは覚えているだろう?アベルトさんは俺について、どういうことを話していたんだ?」
「ん?えーっとねー、えーと……」
ユウカは首を捻りながら、自分と恭司の二人分のアイスコーヒーの用意を始めた。
パックからコップ2つにそれぞれ注ぎ、机に置く。
思い出すことより喉の渇きを何とかする方が優先順位が高いのか、ユウカは恭司の隣に座ると、答えを返す前に両手でコップに手を添えてゴクゴクと飲み始めた。
対応は適当だし、座る席もまさかの隣だ。
隣に座ること自体はいつも通りだが、警戒心が無さすぎる。
恭司は徐々に、気を使っているのが馬鹿らしくなってきていた。
「んーとねぇ……恭司が昔、世界中で人を斬りまくったってことと……その恭司がこの世界に時空間魔法で飛ばされてきたってこととー……あとはあの恭司の部屋にあった刀がどうとかこうとかも言ってたかな?」
ユウカは十分に喉を潤すと、かなり適当な感じでそう答えた。
心なしか面倒くさそうに見える。
「俺についての要点は掴んでるじゃないか……。よく平気で話せるな」
「え?何で?別に態度変える必要も無いし。まぁ、恭司が私を襲ってくるなんて話ならさすがにビックリするけど、そんなことないでしょ?」
「まぁ……そりゃあそうだが……。要は人斬りの前科持ちってことだぞ?しかも大量殺人犯だ。口ではそう言っててもって可能性はあるじゃねぇか」
「いやいや大丈夫でしょ。今のところ敵意とか何も感じないし。怖くなったらお父さんに言えばいいんだしね」
「……軽いな……。まぁ、お前がいいって言うんなら、特に問題は無いんだが……」
「でしょ?」
ユウカはそう言って、もう一つ欠伸を漏らす。
本当に興味がなかったのか、それともアベルトに何か言われてるのか、不自然なほどに短かった。
釈然としない気持ちはあるものの、兎にも角にも、恭司についての話はこれで終わったのだ。
てっきり『ずっと騙してたのか!』や『何で隠してた!』『自分に何をする気だった!』といった言い合いは避けられないと思っていただけに、恭司としては完全に拍子抜けだった。
「ちなみに、俺について以外のことは何か覚えてないのか?武術主義がどうとかって話もしてたろう」
恭司は切り替えて、これからの話を行う。
拍子抜けはしたが、解決したのは解決したのだ。
それなら、話を次に進めるべきだ。
しかし……
「あー、言ってたような……言ってなかったようなー……」
ユウカの意識は猛烈に低かった。
あまりにも低すぎた。
警戒心どころじゃない。
お使い頼まれたくらいの認識レベルだ。
「……それ、アベルトさんが提示した、俺がここで生活するための条件なんだよ。俺は、その詳細をお前に聞くように言われてるんだが」
「え?そうなの?んー、言われてみると、確かにそんな感じのこと言ってたかもしれない……。またお父さんに聞いておくよ」
「あぁ……頼むよ……」
恭司は脱力感と共に項垂れた。
聞くことは沢山あるはずなのに、焦りが一気に抜けていくような気持ちになった。
ユウカは頭に再度クエスチョンマークを浮かべている。
ユウカにとって、同居人が人斬りということはさして問題でもないらしい。
普通、そんな人間とこれから行動するなんて命の危機レベルで嫌だろうに、あろうことか何をしなければならないかについても話半分でしか聞いてないとは。
恭司は、これからどうしようかと疲労感にすら襲われるハメとなった。
「まっ、時間はあるんだし、ゆっくり考えたらいいんじゃない?それより、私お腹空いちゃったよ。何か作って、恭司」
「はいはい、分かりましたよ、お嬢様」
もう投げやりだった。
結局、後ろめたさや焦りを感じていたのは恭司だけだったのだ。
「ん?えーっとねー、えーと……」
ユウカは首を捻りながら、自分と恭司の二人分のアイスコーヒーの用意を始めた。
パックからコップ2つにそれぞれ注ぎ、机に置く。
思い出すことより喉の渇きを何とかする方が優先順位が高いのか、ユウカは恭司の隣に座ると、答えを返す前に両手でコップに手を添えてゴクゴクと飲み始めた。
対応は適当だし、座る席もまさかの隣だ。
隣に座ること自体はいつも通りだが、警戒心が無さすぎる。
恭司は徐々に、気を使っているのが馬鹿らしくなってきていた。
「んーとねぇ……恭司が昔、世界中で人を斬りまくったってことと……その恭司がこの世界に時空間魔法で飛ばされてきたってこととー……あとはあの恭司の部屋にあった刀がどうとかこうとかも言ってたかな?」
ユウカは十分に喉を潤すと、かなり適当な感じでそう答えた。
心なしか面倒くさそうに見える。
「俺についての要点は掴んでるじゃないか……。よく平気で話せるな」
「え?何で?別に態度変える必要も無いし。まぁ、恭司が私を襲ってくるなんて話ならさすがにビックリするけど、そんなことないでしょ?」
「まぁ……そりゃあそうだが……。要は人斬りの前科持ちってことだぞ?しかも大量殺人犯だ。口ではそう言っててもって可能性はあるじゃねぇか」
「いやいや大丈夫でしょ。今のところ敵意とか何も感じないし。怖くなったらお父さんに言えばいいんだしね」
「……軽いな……。まぁ、お前がいいって言うんなら、特に問題は無いんだが……」
「でしょ?」
ユウカはそう言って、もう一つ欠伸を漏らす。
本当に興味がなかったのか、それともアベルトに何か言われてるのか、不自然なほどに短かった。
釈然としない気持ちはあるものの、兎にも角にも、恭司についての話はこれで終わったのだ。
てっきり『ずっと騙してたのか!』や『何で隠してた!』『自分に何をする気だった!』といった言い合いは避けられないと思っていただけに、恭司としては完全に拍子抜けだった。
「ちなみに、俺について以外のことは何か覚えてないのか?武術主義がどうとかって話もしてたろう」
恭司は切り替えて、これからの話を行う。
拍子抜けはしたが、解決したのは解決したのだ。
それなら、話を次に進めるべきだ。
しかし……
「あー、言ってたような……言ってなかったようなー……」
ユウカの意識は猛烈に低かった。
あまりにも低すぎた。
警戒心どころじゃない。
お使い頼まれたくらいの認識レベルだ。
「……それ、アベルトさんが提示した、俺がここで生活するための条件なんだよ。俺は、その詳細をお前に聞くように言われてるんだが」
「え?そうなの?んー、言われてみると、確かにそんな感じのこと言ってたかもしれない……。またお父さんに聞いておくよ」
「あぁ……頼むよ……」
恭司は脱力感と共に項垂れた。
聞くことは沢山あるはずなのに、焦りが一気に抜けていくような気持ちになった。
ユウカは頭に再度クエスチョンマークを浮かべている。
ユウカにとって、同居人が人斬りということはさして問題でもないらしい。
普通、そんな人間とこれから行動するなんて命の危機レベルで嫌だろうに、あろうことか何をしなければならないかについても話半分でしか聞いてないとは。
恭司は、これからどうしようかと疲労感にすら襲われるハメとなった。
「まっ、時間はあるんだし、ゆっくり考えたらいいんじゃない?それより、私お腹空いちゃったよ。何か作って、恭司」
「はいはい、分かりましたよ、お嬢様」
もう投げやりだった。
結局、後ろめたさや焦りを感じていたのは恭司だけだったのだ。
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