追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
【第四話】告白③
「ユウカはね、三谷君。とても、可哀相な娘なんだよ」
アベルトの話は始まった。
持っていく荷物をドサリと床に置き、両腕を組んで、恭司と目と目を合わせる。
これから腰を据えて重大なことを話すという合図だろう。
恭司は生唾をゴクリと呑みほした。
「あの娘は今年で17になるんだ。それまで沢山の同級生と過ごしてきた。なのにね、三谷君。あの娘には友達と呼べる存在が、一人もいないんだよ。これまでの人生の中で、一度も、少しもだ。理由は聞いたかな?」
「確か……ユウカの母親が革命軍のリーダーだと」
「そうだ。原因はほとんどそれなんだよ。アレの母親……私の元妻が、全ての元凶なんだ」
「確か……『クレイア』という組織名でしたか」
「そうだ。元妻に関係していることを差し引いても、厄介な連中だ。区分で言えば『武術主義』にあたる連中だが、やり方が卑劣で残忍すぎる。はっきり言って犯罪者集団だ。『武術主義』の区分にいるがために、むしろイメージを悪くされて、私としても消えてほしく思っている」
「……その連中が、ユウカの周りとの交友関係を邪魔している……」
「そうだ。ユウカの母親がリーダーを務めているからね。周りの見る目はそりゃあ悪いに決まっている。クレイアの手先、犯罪者予備軍、殺人犯の子供……。呼び方は様々だが、ユウカはこれらのレッテルを前提に人と話さなければならない。避けられるくらいならまだいい方だ。攻撃してくる人間も数多くいる」
「…………」
「そんなわけであの娘の交友関係はすこぶる悪い。回復のメドも立たない。いや、クレイアの活動が今後増えていけば、状況はさらに悪くなるだろう。現在進行形で世界中で活動しているから、ユウカへの悪印象も世界中からだ。クレイアに被害を受けた人間からは……もはや殺意すら向けられかねない。そんな打つ手無しの現状で現れたのが……君というわけだ」
「世界中から嫌われ尽くしている、この俺ってわけですか」
「そうだ。その通りだ。他の人間が……例えば私が……ユウカの力になろうとしても、ユウカはそれを憐れみや同情と受け取るだろう。あの娘はそういうことを極端に嫌う。その点君なら……」
「同じ痛みを分かち合って、一緒にやっていける……ですか」
アベルトは頷いた。
その目に浮かぶ感情は、いつかの時のように不安や恐怖が根付いたものではない。
期待の光に包まれたものだった。
恭司はつい頭に手を伸ばしてしまった。
照れ臭い。
「クレイアが存在する限り、あの娘はこれからも友達なんて作れないだろう。性格もあの通りだ。天邪鬼で、一匹狼気質。この状況でその性格じゃあこの先に期待は持てない。だからこそ、君には、本当にユウカの味方となってやってほしいんだ。ユウカのことを信頼してやってほしいんだ。あいつの……友達になってほしいんだ」
「……あなたの言葉を信じる限りでは、私は数万単位の人間を虐殺した殺人鬼……ということですが?」
「承知している。だが、あの娘はそれに対して臆するような人格じゃない。それに……親としての直感だ。君たちは性格的によく合うタイプだよ」
「はぁ……」
恭司は曖昧に頷いた。
まぁ確かに、恭司もユウカのことは嫌いじゃない。
話していて楽しいと思う。
だが、
わざわざ親がそれを殺人鬼相手に頼むというのが、恭司には理解不可解だった。
アベルトの話は始まった。
持っていく荷物をドサリと床に置き、両腕を組んで、恭司と目と目を合わせる。
これから腰を据えて重大なことを話すという合図だろう。
恭司は生唾をゴクリと呑みほした。
「あの娘は今年で17になるんだ。それまで沢山の同級生と過ごしてきた。なのにね、三谷君。あの娘には友達と呼べる存在が、一人もいないんだよ。これまでの人生の中で、一度も、少しもだ。理由は聞いたかな?」
「確か……ユウカの母親が革命軍のリーダーだと」
「そうだ。原因はほとんどそれなんだよ。アレの母親……私の元妻が、全ての元凶なんだ」
「確か……『クレイア』という組織名でしたか」
「そうだ。元妻に関係していることを差し引いても、厄介な連中だ。区分で言えば『武術主義』にあたる連中だが、やり方が卑劣で残忍すぎる。はっきり言って犯罪者集団だ。『武術主義』の区分にいるがために、むしろイメージを悪くされて、私としても消えてほしく思っている」
「……その連中が、ユウカの周りとの交友関係を邪魔している……」
「そうだ。ユウカの母親がリーダーを務めているからね。周りの見る目はそりゃあ悪いに決まっている。クレイアの手先、犯罪者予備軍、殺人犯の子供……。呼び方は様々だが、ユウカはこれらのレッテルを前提に人と話さなければならない。避けられるくらいならまだいい方だ。攻撃してくる人間も数多くいる」
「…………」
「そんなわけであの娘の交友関係はすこぶる悪い。回復のメドも立たない。いや、クレイアの活動が今後増えていけば、状況はさらに悪くなるだろう。現在進行形で世界中で活動しているから、ユウカへの悪印象も世界中からだ。クレイアに被害を受けた人間からは……もはや殺意すら向けられかねない。そんな打つ手無しの現状で現れたのが……君というわけだ」
「世界中から嫌われ尽くしている、この俺ってわけですか」
「そうだ。その通りだ。他の人間が……例えば私が……ユウカの力になろうとしても、ユウカはそれを憐れみや同情と受け取るだろう。あの娘はそういうことを極端に嫌う。その点君なら……」
「同じ痛みを分かち合って、一緒にやっていける……ですか」
アベルトは頷いた。
その目に浮かぶ感情は、いつかの時のように不安や恐怖が根付いたものではない。
期待の光に包まれたものだった。
恭司はつい頭に手を伸ばしてしまった。
照れ臭い。
「クレイアが存在する限り、あの娘はこれからも友達なんて作れないだろう。性格もあの通りだ。天邪鬼で、一匹狼気質。この状況でその性格じゃあこの先に期待は持てない。だからこそ、君には、本当にユウカの味方となってやってほしいんだ。ユウカのことを信頼してやってほしいんだ。あいつの……友達になってほしいんだ」
「……あなたの言葉を信じる限りでは、私は数万単位の人間を虐殺した殺人鬼……ということですが?」
「承知している。だが、あの娘はそれに対して臆するような人格じゃない。それに……親としての直感だ。君たちは性格的によく合うタイプだよ」
「はぁ……」
恭司は曖昧に頷いた。
まぁ確かに、恭司もユウカのことは嫌いじゃない。
話していて楽しいと思う。
だが、
わざわざ親がそれを殺人鬼相手に頼むというのが、恭司には理解不可解だった。
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