追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
【第三話】アベルト・バーレン⑧
「選択肢をあげられなくてすまないね。だが、君の犯した罪の代わりとしては破格だと思うがね。なんせ、君は武術や魔法以前に、かつての時代の覇者の一人だ。実力で何とかできるだろう」
「…………」
恭司は黙ってしまった。
返せる言葉など無い。
「……まぁ、具体的な内容についてはユウカにでも話しておこう。君はもう疲れているだろう?ゆっくり休みたまえ」
「……ユウカに話すのですか?」
恭司はアベルトの気遣いに感謝する前に、そう尋ねた。
そこは、とても気になったのだ。
「あぁ、どうせ隠すことなど出来ないし、そうするメリットも無いからね。言うよ。全てだ」
「……私はまだこの世界のことをそれほど分かってはおりませんので、何とも言えませんが……これはおそらく危険な仕事でしょう?そんなものに、実の娘を巻き込むおつもりですか?」
恭司は真剣な面持ちでそう尋ねる。
出来れば、ユウカは巻き込みたくない。
だが、
「あぁ、そのつもりだ。アレは普通の娘じゃない。分かるだろう?君と同じ技を使えるんだ。アレは、そういう存在だ」
曖昧な表現だったが、理解は出来た。
確かにそうだと思った。
思ってしまった。
恭司がユウカの技を使えたんじゃない。
ユウカが、恭司の技を使えるのだ。
三谷恭司と同じ技を持っているのだ。
つまりユウカは、三谷恭司と同じ系列にいる人間だということなのだ。
「あの子のことについては、また追い追い話そう。とにかく、君のことはユウカに伝える。だから君は、これからはユウカに話を聞いて、ユウカと行動をしなさい。私が許可する。ユウカと一緒にいるんだ」
「…………」
『行動をしなさい』
「行動を共にしなさい」じゃない所が変に気になった。
だが、
おそらくは単なる言い回しの違いだろうと、恭司は頷くにとどめた。
些細な話だ。
追求するほどのことじゃない。
アベルトはそこでバツが悪そうに頭をかくと、すぐに踵を返すと思いきや、おもむろに恭司のことをジッと見つめてきた。
何を考えているのかは分からない。
だが、
その視線には熱がこもり、何かを期待する光があった。
そして、
そのさらに奥には、得体の知らないものに対する不安と恐怖もあった。
「…………」
アベルトの頭の中に、強大な葛藤が生まれているのが分かる。
でも、
恭司にできることなんて無いし、その余裕も無い。
アベルトはそれからずいぶん長い間そうしていたが、結局、そのままクルリと踵を返した。
恭司に背を向け、その足はリビングから出るための扉へと向いて歩き出した。
恭司はそれを、ホッとしたような不安なような、よく分からない顔で見送ることしかできなかった。
そして、
アベルトは扉へとたどり着き、取っ手に手を掛ける。
その背はやはり、まだ迷いが残っていることを雄弁に語っていた。
「…………」
恭司は黙ってしまった。
返せる言葉など無い。
「……まぁ、具体的な内容についてはユウカにでも話しておこう。君はもう疲れているだろう?ゆっくり休みたまえ」
「……ユウカに話すのですか?」
恭司はアベルトの気遣いに感謝する前に、そう尋ねた。
そこは、とても気になったのだ。
「あぁ、どうせ隠すことなど出来ないし、そうするメリットも無いからね。言うよ。全てだ」
「……私はまだこの世界のことをそれほど分かってはおりませんので、何とも言えませんが……これはおそらく危険な仕事でしょう?そんなものに、実の娘を巻き込むおつもりですか?」
恭司は真剣な面持ちでそう尋ねる。
出来れば、ユウカは巻き込みたくない。
だが、
「あぁ、そのつもりだ。アレは普通の娘じゃない。分かるだろう?君と同じ技を使えるんだ。アレは、そういう存在だ」
曖昧な表現だったが、理解は出来た。
確かにそうだと思った。
思ってしまった。
恭司がユウカの技を使えたんじゃない。
ユウカが、恭司の技を使えるのだ。
三谷恭司と同じ技を持っているのだ。
つまりユウカは、三谷恭司と同じ系列にいる人間だということなのだ。
「あの子のことについては、また追い追い話そう。とにかく、君のことはユウカに伝える。だから君は、これからはユウカに話を聞いて、ユウカと行動をしなさい。私が許可する。ユウカと一緒にいるんだ」
「…………」
『行動をしなさい』
「行動を共にしなさい」じゃない所が変に気になった。
だが、
おそらくは単なる言い回しの違いだろうと、恭司は頷くにとどめた。
些細な話だ。
追求するほどのことじゃない。
アベルトはそこでバツが悪そうに頭をかくと、すぐに踵を返すと思いきや、おもむろに恭司のことをジッと見つめてきた。
何を考えているのかは分からない。
だが、
その視線には熱がこもり、何かを期待する光があった。
そして、
そのさらに奥には、得体の知らないものに対する不安と恐怖もあった。
「…………」
アベルトの頭の中に、強大な葛藤が生まれているのが分かる。
でも、
恭司にできることなんて無いし、その余裕も無い。
アベルトはそれからずいぶん長い間そうしていたが、結局、そのままクルリと踵を返した。
恭司に背を向け、その足はリビングから出るための扉へと向いて歩き出した。
恭司はそれを、ホッとしたような不安なような、よく分からない顔で見送ることしかできなかった。
そして、
アベルトは扉へとたどり着き、取っ手に手を掛ける。
その背はやはり、まだ迷いが残っていることを雄弁に語っていた。
コメント