追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
【第二話】模擬戦⑩
「あ、あり得ない……」
ユウカは愕然とする。
こんなはずではなかった。
この展開は想定していなかった。
ユウカが本気の技を繰り出しても、通じないなんて。
「次は、俺の番だな」
恭司は背後にいるユウカの方にゆっくりと向き直ると、突きに構えた。
ユウカは未だショックを振り切れず、ほんの僅かな時間思考が停止する。
だが、
もう遅い。
恭司は構えた体制から急激に体重を前にシフトさせていくと、あっという間に攻撃体制を整え切ってしまった。
ユウカとの距離はそれなりにあって、とてもここから突きを当てることなど出来ないはずだが、ユウカは戦慄を禁じ得なかった。
出来る気がして、あり得る気がして、また真似される気がして、ユウカの背筋に冷たい汗が一瞬のうちに大滝となって滑り落ちた。
そして、
恭司は刀の切っ先をユウカの少し横に向け、その間に脹脛と太腿の筋肉が凄まじく膨張する。
……これは、ユウカの時にはなかった動きだ。
世界がまるでスローモーションになったかのように、一瞬、恭司の動きが止まって見える。
しかし、
瞬き一つした頃には、止まっていたはずの恭司の姿はそこに無く、いつのまにかユウカの背後に立っていた。
剣技というよりはまるで砲撃のような技だが、恭司のそれは、ユウカのように派手な痕跡を残すことなく、ユウカよりも明らかに速かった。
恭司は、ユウカと同じ技を、ユウカ以上のクオリティでやってのけたのだ。
「恭司……君は一体……」
ユウカが尋ねてくる。
しかし、
それは恭司にも分からなかった。
何で、自分がこの技を使えるのか。
何故、"最初から知っていた"のか。
「分からない……。ユウカのそれを見て、俺は咄嗟に懐かしく感じたんだ。この技を……前にも使っていたことがあったような気がして……試さずにはいられなかった」
「…………」
「悪いことをしたと思っている。もちろん、からかうとかそういうつもりではなかったんだ。ただ……」
「…………」
場に変な空気だけが取り残される。
何気なく始めた腕試しで発覚したそれは、どちらにとっても、あまりにも大きすぎる事実だった。
戦いは自然と終わり、ユウカも恭司もその場に立ったまま、一言も喋らない。
しかし、
「これは……久しぶりに帰ってきたらずいぶんと面白いものが見れた」
その時、2人の背後から突如として声が聞こえた。
「……誰だ?」
恭司はいきなり現れたその男に容赦ない敵意を向ける。
パッと見た感じでは若そうに見えるが、肌の張り具合や服装などを見るに、おそらくは40ほどの歳だろうか。
平均的な身長だが、体つきは異常にしっかりしている。
筋肉がはち切れそうなほど膨らんでいて、服がパンパンになっているほどだ。
そして、
このヒシヒシと伝わってくる圧倒的な存在感。
おそらくは武芸者。
それも……かなりのレベルだ。
「そう睨みつけないでくれ。何も危害を加えにきたんじゃない。ただ家に帰ってきただけだ」
「家に?」
恭司はユウカを見た。
ユウカは頷いている。
どうやらそういうことらしい。
「私の……お父さんです」
ユウカは愕然とする。
こんなはずではなかった。
この展開は想定していなかった。
ユウカが本気の技を繰り出しても、通じないなんて。
「次は、俺の番だな」
恭司は背後にいるユウカの方にゆっくりと向き直ると、突きに構えた。
ユウカは未だショックを振り切れず、ほんの僅かな時間思考が停止する。
だが、
もう遅い。
恭司は構えた体制から急激に体重を前にシフトさせていくと、あっという間に攻撃体制を整え切ってしまった。
ユウカとの距離はそれなりにあって、とてもここから突きを当てることなど出来ないはずだが、ユウカは戦慄を禁じ得なかった。
出来る気がして、あり得る気がして、また真似される気がして、ユウカの背筋に冷たい汗が一瞬のうちに大滝となって滑り落ちた。
そして、
恭司は刀の切っ先をユウカの少し横に向け、その間に脹脛と太腿の筋肉が凄まじく膨張する。
……これは、ユウカの時にはなかった動きだ。
世界がまるでスローモーションになったかのように、一瞬、恭司の動きが止まって見える。
しかし、
瞬き一つした頃には、止まっていたはずの恭司の姿はそこに無く、いつのまにかユウカの背後に立っていた。
剣技というよりはまるで砲撃のような技だが、恭司のそれは、ユウカのように派手な痕跡を残すことなく、ユウカよりも明らかに速かった。
恭司は、ユウカと同じ技を、ユウカ以上のクオリティでやってのけたのだ。
「恭司……君は一体……」
ユウカが尋ねてくる。
しかし、
それは恭司にも分からなかった。
何で、自分がこの技を使えるのか。
何故、"最初から知っていた"のか。
「分からない……。ユウカのそれを見て、俺は咄嗟に懐かしく感じたんだ。この技を……前にも使っていたことがあったような気がして……試さずにはいられなかった」
「…………」
「悪いことをしたと思っている。もちろん、からかうとかそういうつもりではなかったんだ。ただ……」
「…………」
場に変な空気だけが取り残される。
何気なく始めた腕試しで発覚したそれは、どちらにとっても、あまりにも大きすぎる事実だった。
戦いは自然と終わり、ユウカも恭司もその場に立ったまま、一言も喋らない。
しかし、
「これは……久しぶりに帰ってきたらずいぶんと面白いものが見れた」
その時、2人の背後から突如として声が聞こえた。
「……誰だ?」
恭司はいきなり現れたその男に容赦ない敵意を向ける。
パッと見た感じでは若そうに見えるが、肌の張り具合や服装などを見るに、おそらくは40ほどの歳だろうか。
平均的な身長だが、体つきは異常にしっかりしている。
筋肉がはち切れそうなほど膨らんでいて、服がパンパンになっているほどだ。
そして、
このヒシヒシと伝わってくる圧倒的な存在感。
おそらくは武芸者。
それも……かなりのレベルだ。
「そう睨みつけないでくれ。何も危害を加えにきたんじゃない。ただ家に帰ってきただけだ」
「家に?」
恭司はユウカを見た。
ユウカは頷いている。
どうやらそういうことらしい。
「私の……お父さんです」
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