追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノベルバユーザー520245

【第二話】模擬戦⑨

「さすがに!!これ以上は看過出来ない!!」


ユウカは吹き飛ばれながらも器用に体制を整える。

前を見ると、恭司の追撃はまだ続いている様子だった。

息を吐かせるつもりはないということだろう。

次は上からの振り下ろしを考えているようだが、ユウカもいつまでも攻撃され続けるほど甘くはない。

瞬時に判断してその一撃を躱すと、まるで本当の瞬間移動のような速度でその場から撤退した。

さっきまででも十分にあり得ないスピードだったが、今回のはそれをもさらに大きく上回る。

まるで風。

人間に出せる最高速度。

最強の移動術。

誰にも見せたことのない、ユウカの本当の奥の手。

かつて、母親から直々に教わった秘技の一つ、

ーー『瞬動』。


「もう怒った!!これはホントの本気だからね!!」


ユウカは恭司から離れた場所で、木刀を突きに構えた。

どう考えても先手じゃ届かない場所だ。

後手でカウンター狙いだろう。

恭司はそう判断した。

だが、

ユウカはまるでこれから突っ込む予定であるかのように、体重を前に前にと移す。

恭司は瞬間的に判断を修正した。

ユウカはカウンターのタイミングを待つつもりなどない。

これは、間違いなく先手必勝を狙う構えだ。


「こればかりはさすがに光栄に思って!!これはもう、身体能力とかじゃなくて、私の純然たる"技"だから!!」


途端、

ユウカはその場から凄まじい速度で恭司に突き込んだ。

ユウカの立っていた地面は無残なほどに激しく破壊され、正しく一陣の風となって恭司に突きの一撃を放つ。

それはもはや刀技の範疇には収まっていない。

まるで弾丸。

本当に目にも留まらぬ速さで、ユウカは気付けば恭司の背後にまで移動していた。

そして、

ユウカの通ってきた地面は著しくめくり上がり、速さだけでなく破壊力も高かったことが、傍目からでも一瞬で分かった。

しかし……


「何……で……!?」


圧倒的な移動速度に、圧倒的な破壊力。

急所は敢えて外して打ち込んだものの、本当なら恭司は倒れているはずだった。

肩が外れているはずだった。

立っていられないはずだった。

なのに……

恭司は平然と、そこに立ったままだった。

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