追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノベルバユーザー520245

【第二話】模擬戦⑥

「はぁっ!!」


先手を打ったのはユウカだった。

構えた場所からほとんど一瞬に近い速度で距離を詰め、下から振り上げの一撃を繰り出す。

恭司は瞬間的に体を後ろに引き、その一撃を躱した。

途端にカウンターを準備するが、ユウカの攻撃はそれだけに終わらなかった。

振り上げられた木刀は上に着いた途端にすぐさま下へと向きを変え、今度は振り下ろしの一撃が繰り出される。

二撃の間はほとんど無い。

カウンターと一対の技のようだ。

しかし、

恭司は木刀をそこに挟み込ませると、間一髪、二撃目もギリギリで防いだ。

木刀と木刀がぶつかり合い、ホンの少し膠着した状況に陥る。

だが、

その状態になって数秒もたたないうちに、ユウカは足を振り上げると、そのまま恭司を後方に蹴り飛ばした。


「おいおい……」


飛ばされながら呟く。

蹴られる寸前に足でガードしたためダメージは薄かったものの、どうやら少し本気のようだ。

ガードが間に合わなければ、もしかしたらもう一度寝込む羽目になっていたかもしれない。


(まさかそれが狙いじゃねぇだろうな……)


不穏なことを内心で考えつつも、戦いはもちろん続いている。

ユウカは蹴られて飛ばされている真っ最中の恭司に向けて再び距離を詰め、次は突きの一撃を放ってきた。


「危ねぇな!!」


恭司は足が地に着いた途端、すぐに飛び跳ね、その一撃をギリギリで躱した。

殺せなかった分の勢いは何度も跳んで相殺し、ついでにユウカとの距離も空けようとする。

しかし、

ユウカは素早く体制を整えると、遠ざかる恭司に追いすがった。

まるで飛ぶように跳び、瞬き一つする間にぐんぐんと距離を詰めてくる。

勢いを殺すためとはいえ、恭司も地に足が着くたびに跳んで動いているのだ。

それなのに、

距離はほぼ一瞬にして縮まり、気付けばユウカの振り下ろしの一撃が恭司の眼前に迫っていた。


「マジかッ!!」


恭司はすんでのところで木刀を滑り込ませる。

ユウカの振り下ろしと恭司の防御で、木刀同士の激しい衝突音が響いた。

このまま膠着するかと思われたが、さっきこの状況でユウカに蹴られたことを思い出し、恭司はユウカの木刀を弾いてサッと後ろに跳ぶ。

その腕は、少しばかり痺れていた。


(かなり真面目に強いじゃねぇか……。動き速すぎだろって)


ユウカに先手を取られて以来、本当に怒涛のラッシュだった。

追い討ちの速度が並みじゃない。

それに、

動きだけでなく、木刀を振る速度も速すぎる。

初撃の二連撃の時点からそうだったが、どうやら身体能力だけでなく技量まで高いらしい。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品