追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
【第一話】記憶喪失⑦
「私の名前か……聞きたい?」
そう言って、少女は上目遣いに尋ねてくる。
可愛さを狙っているあざとさが感じられなかった分、素で少しどきりとした。
だが、
そんなことを考えている場合じゃない。
「そりゃあまぁ……聞きたいな。でなきゃ呼びづらい」
恭司は答える。
変な誤解を防ぐための、事実と言う名の盾みたいなものだった。
しかし、
少女には分からなかったようだ。
諦めたようにため息を吐き出す。
その表情は少し、寂しそうだった。
「……私は……私の名前は……『ユウカ』。『ユウカ・バーレン』。改めて……よろしくね」
少女……ユウカは、まるで気力を振り絞るかのように、そう言った。
覚悟を決めたような、何か大切なものを放り投げたような、そんなイメージを恭司は持った。
だが、
それが何故なのか。
何故、少女はこんなにも自分の名を名乗るだけのことに苦しんでいるのか。
恭司には分からない。
だから、
そのまま思い切って尋ねた。
「どうして、そんなに気まずそうにするんだ?」
「え?」
恭司の返答が意外だったのか、ユウカはキョトンとした。
恭司は何故キョトンとされるのかも分からなくて、さらに頭の中にクエスチョンマークを浮かべる。
「え?何でって……。そんなの私の名前を聞いたら一発じゃない」
「…………いや……分からないな。本気で分からない。一体どういうことなんだ?」
ユウカは手を口元に当てて考えた。
恭司を見る限り、特に嘘をついているような感じはしていない。
おそらく本当にそうなのだろう。
そう考えると、恭司が分からない理由もすぐに出た。
「そっか。記憶喪失だからか」
納得がいった。
だから恭司はユウカの名前を聞いても分からなかったのだ。
ユウカは一人でウンウンとうなづき、恭司はそれを見て不満そうに顔をしかめた。
「おい。一人で納得してないで説明してくれよ。一体どういうことなんだ?」
恭司は尋ねる。
ユウカは恭司を見ると、真剣な瞳で口を開いた。
「教えてもいいけど…………これ、私にとっては少し重要なことだから、他の人とかにあんまり他言しないでね」
「……?まぁ、恩もあるし、言うなと言うなら言わないが……」
「別に恩なんて感じなくてもいいけど……これは少しばかりマジな奴だよ。悪意を感じたら即殺すから」
「…………悪意?なんだかよく分からんが物騒だな……。まぁでも大丈夫だ。俺は口がかたいからな」
「記憶の無い人がどの口でそんなことを……。……まぁ良いや。それはね、恭司。私の……母親に関することなの」
「母親?」
ユウカは頷く。
「普通の人はね……私の名前を聞くと敏感に反応するの。それは、私の名前の一部分がある人と同じだから」
「それが……ユウカの……母親?」
「うん。私のお母さんね……反社会派の革命軍のリーダーなの」
そう言って、少女は上目遣いに尋ねてくる。
可愛さを狙っているあざとさが感じられなかった分、素で少しどきりとした。
だが、
そんなことを考えている場合じゃない。
「そりゃあまぁ……聞きたいな。でなきゃ呼びづらい」
恭司は答える。
変な誤解を防ぐための、事実と言う名の盾みたいなものだった。
しかし、
少女には分からなかったようだ。
諦めたようにため息を吐き出す。
その表情は少し、寂しそうだった。
「……私は……私の名前は……『ユウカ』。『ユウカ・バーレン』。改めて……よろしくね」
少女……ユウカは、まるで気力を振り絞るかのように、そう言った。
覚悟を決めたような、何か大切なものを放り投げたような、そんなイメージを恭司は持った。
だが、
それが何故なのか。
何故、少女はこんなにも自分の名を名乗るだけのことに苦しんでいるのか。
恭司には分からない。
だから、
そのまま思い切って尋ねた。
「どうして、そんなに気まずそうにするんだ?」
「え?」
恭司の返答が意外だったのか、ユウカはキョトンとした。
恭司は何故キョトンとされるのかも分からなくて、さらに頭の中にクエスチョンマークを浮かべる。
「え?何でって……。そんなの私の名前を聞いたら一発じゃない」
「…………いや……分からないな。本気で分からない。一体どういうことなんだ?」
ユウカは手を口元に当てて考えた。
恭司を見る限り、特に嘘をついているような感じはしていない。
おそらく本当にそうなのだろう。
そう考えると、恭司が分からない理由もすぐに出た。
「そっか。記憶喪失だからか」
納得がいった。
だから恭司はユウカの名前を聞いても分からなかったのだ。
ユウカは一人でウンウンとうなづき、恭司はそれを見て不満そうに顔をしかめた。
「おい。一人で納得してないで説明してくれよ。一体どういうことなんだ?」
恭司は尋ねる。
ユウカは恭司を見ると、真剣な瞳で口を開いた。
「教えてもいいけど…………これ、私にとっては少し重要なことだから、他の人とかにあんまり他言しないでね」
「……?まぁ、恩もあるし、言うなと言うなら言わないが……」
「別に恩なんて感じなくてもいいけど……これは少しばかりマジな奴だよ。悪意を感じたら即殺すから」
「…………悪意?なんだかよく分からんが物騒だな……。まぁでも大丈夫だ。俺は口がかたいからな」
「記憶の無い人がどの口でそんなことを……。……まぁ良いや。それはね、恭司。私の……母親に関することなの」
「母親?」
ユウカは頷く。
「普通の人はね……私の名前を聞くと敏感に反応するの。それは、私の名前の一部分がある人と同じだから」
「それが……ユウカの……母親?」
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