仇討浪人と座頭梅一
第55話:煩悶
巳之介が定刻に戻ってこないと分かって、梅一は自ら確かめに行こうとした。
だが、次期頭目就任が決まった梅一に危険なまねをさせるはずがなかった。
養父はもちろん、小頭も古参幹部も梅一をどこにも行かせなかった。
巳之介の行き先は、池原雲伯は使った町駕籠の駕籠かきから聞き出していた。
だから巳之吉が一橋家上屋敷に忍び込んで何かあったのは直ぐに分かった。
並の盗賊ならここで巳之介を見捨てる。
少し情の篤い盗賊団なら、直接一橋家上屋敷に探りを入れる。
だが梅一の所属する盗賊団は慎重で老練だった。
大手門下に屋敷を構える大名家に出入りしてる商人に接触した。
魚屋や八百屋、豆腐屋や納豆屋など、毎日屋敷に訪問する商人から情報を得た。
領国から単身赴任している若い下級家臣は、毎朝出入りの振り売りから納豆や煮物を買い、朝食や夕食のおかずにしているのだ。
直接大名家と商いしている者は、それなりに口が堅いが、下級家臣相手に商いをしている振り売りの口は、酒を飲ませるととたんに軽くなる。
そんな振り売りから得た情報だと、一橋家上屋敷に盗賊が入り込んだという。
腕に覚えのある用人が槍で深手を負わせたが、相手は大手門下にある大名屋敷に忍び込むほど大胆不敵な盗賊なので、深手を負いながら逃げたという。
全ての橋御門の番兵も辻番所も番兵も、不審な者は見ていないと断言しているので、盗賊は大名屋敷に隠れ潜んでいると一橋家から各藩邸に知らせがあったという。
梅一たちは巳之介が傷を負ったのは間違いないと考えた。
傷を追っていなければ、上手く化けて御門橋も辻番所もすり抜けるはずだ。
同時にまだ捕まっていないのも確かだった。
体面を重視する武家が、屋敷に盗賊の侵入を許したばかりか、仕留め損ねて取り逃がした事を公表までしているのだ。
必ず生きていて、捕まっていないのは確かだった。
養父と梅一が頭となり、巳之介の救出作戦が検討された。
集めた噂から予測して、槍傷を受けているのは間違いない。
隠れ潜んでいる場所も、大手御門下の大名屋敷に限られる。
小普請方と御作事方の屋敷や勘定所なら、一橋家の威光で強引に調べられる。
だが幕閣を構成する老中や若年寄の屋敷や、両酒井と松平越前家の屋敷までは、いくら一橋家でも強引に調べる事はできないだろうと考えた。
問題は警備が厳重になっているであろう大名屋敷に侵入する方法と、見つけ出した巳之介を安全に盗人宿にまで連れてくる方法だった。
うかうかしている時間はなかった。
巳之介が受けたという傷が深手だったら、愚図愚図していると手遅れになる。
最低でも傷薬を届けるか、槍傷を縫い合わせる事のできる者を送らなければならないと考えていた。
だが、次期頭目就任が決まった梅一に危険なまねをさせるはずがなかった。
養父はもちろん、小頭も古参幹部も梅一をどこにも行かせなかった。
巳之介の行き先は、池原雲伯は使った町駕籠の駕籠かきから聞き出していた。
だから巳之吉が一橋家上屋敷に忍び込んで何かあったのは直ぐに分かった。
並の盗賊ならここで巳之介を見捨てる。
少し情の篤い盗賊団なら、直接一橋家上屋敷に探りを入れる。
だが梅一の所属する盗賊団は慎重で老練だった。
大手門下に屋敷を構える大名家に出入りしてる商人に接触した。
魚屋や八百屋、豆腐屋や納豆屋など、毎日屋敷に訪問する商人から情報を得た。
領国から単身赴任している若い下級家臣は、毎朝出入りの振り売りから納豆や煮物を買い、朝食や夕食のおかずにしているのだ。
直接大名家と商いしている者は、それなりに口が堅いが、下級家臣相手に商いをしている振り売りの口は、酒を飲ませるととたんに軽くなる。
そんな振り売りから得た情報だと、一橋家上屋敷に盗賊が入り込んだという。
腕に覚えのある用人が槍で深手を負わせたが、相手は大手門下にある大名屋敷に忍び込むほど大胆不敵な盗賊なので、深手を負いながら逃げたという。
全ての橋御門の番兵も辻番所も番兵も、不審な者は見ていないと断言しているので、盗賊は大名屋敷に隠れ潜んでいると一橋家から各藩邸に知らせがあったという。
梅一たちは巳之介が傷を負ったのは間違いないと考えた。
傷を追っていなければ、上手く化けて御門橋も辻番所もすり抜けるはずだ。
同時にまだ捕まっていないのも確かだった。
体面を重視する武家が、屋敷に盗賊の侵入を許したばかりか、仕留め損ねて取り逃がした事を公表までしているのだ。
必ず生きていて、捕まっていないのは確かだった。
養父と梅一が頭となり、巳之介の救出作戦が検討された。
集めた噂から予測して、槍傷を受けているのは間違いない。
隠れ潜んでいる場所も、大手御門下の大名屋敷に限られる。
小普請方と御作事方の屋敷や勘定所なら、一橋家の威光で強引に調べられる。
だが幕閣を構成する老中や若年寄の屋敷や、両酒井と松平越前家の屋敷までは、いくら一橋家でも強引に調べる事はできないだろうと考えた。
問題は警備が厳重になっているであろう大名屋敷に侵入する方法と、見つけ出した巳之介を安全に盗人宿にまで連れてくる方法だった。
うかうかしている時間はなかった。
巳之介が受けたという傷が深手だったら、愚図愚図していると手遅れになる。
最低でも傷薬を届けるか、槍傷を縫い合わせる事のできる者を送らなければならないと考えていた。
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