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仇討浪人と座頭梅一

克全

第1話:婦女暴行

「きゃあああああ」
「姫、姫様」

 絹を裂くような少女の悲鳴が聞こえてきた。
 梅一は迷うことなく悲鳴の聞こえた方向に走り出した。

「えっほ、えっほ、えっほ、えっほ」

 荒くれ者の中間十四人が、まだ幼いと言えるような少女二人を大きな声をあげながら胴上げし、連れ去ろうとしていた。
 梅一の脳裏に、最近頻発している中間達による連続婦女暴行が浮かんだ。
 幸い今の梅一は遊び人の姿をしているから、助けに入るのに問題はない。
 問題は梅一といえども十四人もの荒くれ中間相手に勝てるかだった。

「なっ、邪魔するな、さんぴん」

 梅一が覚悟を決めて少女達を助けようとした時、中間達の前にちぐはぐな服装をした浪人者が立ちはだかった。
 粗末な衣服から浪人なのは分かるのだが、旅装のように菅笠をかぶり、小袖の上に背割り羽織を着て両手には手甲を着けている。
 裁着袴に脚絆を着け、紺足袋を穿き足元は武者草鞋を履いている。
 なのに柄袋や鞘覆いはしていないし、旅行李も担いでいない。

「やい、やい、やい、やい、さっさとどきやがれ。
 どかないと叩きのめすぞ」

 乱暴の限りを尽くす荒くれ中間だからこそ、浪人者の放つ強者の気配を本能的に嗅ぎ分けたのだろう。
 普通ならそのままぶちのめして先を進むところを、止まってしまった。
 それでも虚勢を張ってしまうのは、暴力を売りにしているからだろうか。
 周囲の人々に、貧乏浪人者に気圧されたと思われたくないからだろうか。

「鶴姫様!
 振姫様!
 どうか姫様方をお助け下さい」

 御供の老女なのだろうか。
 息も絶え絶えに追いかけてきた。
 護衛の供侍も中間もいたであろうに、命懸けで追いかけてきたのは老女だけだ。

「ちっ、町方が来たら厄介だ、やっちまえ」

「死ねやぁあああああ」
「邪魔しやがって」
「死ね、さんぴん」
「ごらぁああああ」

 少女二人を担いていない、先頭にいた四人が浪人に襲い掛かった。
 腰に差していた木刀を抜いて叩きのめそうとしている。
 修羅場慣れしている梅一は、木刀に鉄芯が入れられている事に気がついた。
 木刀にしては重そうにしていたからだ。
 重いと素早く振り回すことはできないが、その分破壊力がある。
 一対一なら早さはとても大切だが、十四人対一人なら不利にはならない。

「ぐっ、はっ」

 梅一は浪人に助太刀しようと一歩踏み出したのだが、その必要はなかった。
 浪人は素早さに自身がある梅一でさえ驚くほどの体裁きで中間達を叩きのめした。
 目にも止まらに早さで中間達の中に入りこむと、最初の一人を刀を抜くことなく、柄頭で腹を突いて血反吐を吐かせた。

「げっ、ぼっ」

 次も刀を抜かずに鞘尻で腹を突いて血反吐を吐かせた。
 踊るように舞うように、斃した中間から鉄芯入りの木刀を奪うと、後は浪人者の独り舞台だった。

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