【コミカライズ】献身遊戯 ~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~

西雲ササメ

「好きって言われると、我慢できない」5




「おはようございます!  穂高さん、なんか今日はいつにも増してキラキラしてますね!」

出勤後、いつもと同じようにと心がけてルーティンである経済動向のチェックをしていた俺のところへ、さっそく若林が寄ってきた。

「おはよう若林。なんだキラキラって」

「いつも格好いいですが、今日はさらに格好いいんです!  なんでだろう……」

そうか。
そうだよな、わかっちゃうか。

なんたって俺、もう童貞じゃないからな。
本物のミスターパーフェクトだから。

愛莉とデートした夜、俺はついに彼女とエッチをした。
控えめに言って最高だった。
これまでの素直に反応してくれる姿もかわいかったけど、本音の言えない彼女が泣きながら好きだと伝えてくれたことが、なによりうれしかった。
トキメキすぎて正直それだけでイくかと思った。

彼女が勇気を出してくれたから、俺も勇気を出せた気がする。
俺が求めていた心の通う初体験、佳恋と颯斗に負けないめちゃくちゃ甘いエッチだった。

最初は彼女が佳恋に似てるから始まった関係だった。
ピュア♡ラブの佳恋を見るとキュンとするのは変わらないが、多分、今は逆だ。
愛莉が佳恋に似てるからじゃなくて、佳恋が愛莉に似てるから──。

「もしかして、穂高さん彼女できたんですか?」

「えっ」

愛莉の姿を妄想しながらも頭の中にしっかりと経済動向を描いていた俺だが、それを若林の質問が一気にぶっ壊す。

「な、なんで?」

「だからご機嫌なのかなって。ほら、合コンの日野さんとも上手く行ってるのか気になりますし」

どうして普段天然なくせして、こういうときだけ察しがよくなるんだ。

「日野さんと付き合ってるんですか?」

「付き合ってない」

キッパリと吐き捨て、俺は外国為替を映したのPC画面を見つめながら、「付き合うわけないだろ」と言い直した。

黒背景の画面に、ぼんやりと若林が反射している。
奴は「そうですか」となぜかホッとした顔をしていた。

「そうですよね。穂高さん、もうすぐ異動しちゃうんですし。こんな時期に彼女作らないか……」

「そ。どうせもう会わないから」

俺は口の端で笑い、わざと意地の悪い顔を向けてやる。
朝のルーティンを終えると、引き継ぎ書の作成画面に切り替えた。

そうだ。
俺はもうすぐ異動する。

この関係は、それで終わりなんだ。




 

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