【コミカライズ】献身遊戯 ~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「めちゃくちゃ甘ったるいエッチがしたい」2
唇を舌で探られ、私は〝きた〟と心の中でつぶやく。
慎重に開いてみると、彼の舌がぬるりと侵入してきた。
「ん……ふ、はぁ……」
甘くて頭がボーッとする。
清澄くんはキスをしていて楽しいだろうか。
男の人は、はやく気持ちいいことがしたいんじゃないの?
ホテルでの熱烈なキス、佳恋と颯斗が初めて体を重ねた第一話を思い出す。
想いを隠し合ったままのキスにドキドキが止まらなかった。
焦げ付くような恋心を秘めた佳恋と体を先に繋げることになったというのに、颯斗は彼女に夢中でキスをしたのだ。
それだけで満たされた気持ちと、切ない欲望が伝わってきて、読んで入る方もキュンと心が疼く。
それを再現しているような、清澄くんのキス。
まるでずっと片想いをしてきて、今日やっと待ちわびたキスをするチャンスがやってきたような、長く甘いキスだ。
ホテルまで来ておいて、そんな矛盾にじりじりと胸が焼き付く。
唇を繋げながら、彼は私をゆっくりと倒した。
大きな枕に沈む私の頭を撫で、繊細に前髪を指で分ける。
「愛莉……怖がらないで」
一瞬だけ戸惑った顔をしたのがバレたのか、清澄くんは優しくつぶやいた。
ドキドキは鳴り止まないのに、ふわふわと浮かび上がりそうな安心感もある。
「うん……」
「かわいい。こっち見て」
清澄くん、すごい……。
声のかけ方も、触れ方も、女の子の扱いがすごく上手だ。
触って欲しい場所も、触って欲しくない場所も、言われたい言葉も、全部知られているような感じがする。
「清澄くん……」
彼がTLヒーローに徹してくれているのだとわかると、途端に自分もヒロインみたいに甘えたくなった。
こんな気持ちになるのは初めてだ。
どうしたら相手が満足するかばかりを考えてしまうのが癖で、甘えるなんて発想は今までなかったのに。
「触っていい?」
言葉だけで胸がいっぱいになる。
恥ずかしくてうなずけなくて、どうしたらいいかわからず彼の瞳を見つめた。
清澄くんは全部わかっていると言うように、「リラックスして」と甘く囁く。
「……あっ……清澄、く……」
どうしよう、気持ちいい。
「素直だな、愛莉」
彼の言う通り、たぶん、全部顔に出ている。
だってこんな触れられ方は初めてなのだ。
私を気持ちよくさせるための、尽くすだけの触れ方。
ゆっくりと進む愛撫には、恐怖もない。
エッチの最中に女の子が出す声はすべて演技で、TLの描写だって全部フィクションだと思っていたのに。
清澄くんとこうしていると、演技ではない濡れた声が漏れてしまう。
「んっ……あ……」
しばらく続けられるとすっかり彼に身を委ね、骨抜きになって体を開いている自分がいた。
すっかりバスローブが剥がれ落ちてほとんど裸になっている私に比べ、清澄くんはまだウエストの紐さえ解けていない。
清澄くんのことも気持ちよくしなきゃいけないのに。
そう思っても力が入らず、彼に任せることしかできなかった。
「あっ、清澄くんっ……」
いやらしい音が立つのに彼の指は優しく動いている。
どこをどうしているのか、もうわからないほど頭の中は真っ白だった。
「どうしたの?」
「清澄く、私、なんだか」
なんだかおかしい。
今まで一度も「イく」というのを経験したことがないけれど、まさかこれがそうなのかもと過る。   
なにかに向かって体が麻痺していくような、昇りつめていくような。
「待って、待って、清澄くん、お願い」
「いいよ。そのままイッて」
演技なんてしている余裕はなかった。
声は抑えようとしても勝手に出るし、体は痙攣しているみたいに小刻みに揺れる。
「待って、やだ、もうダメッ……」
体の奥に迫ってくる切ない感覚に抗えなくて、彼に抱きついて耐える。
「んん、んんんんっ」
顔を押し付けて身を震わせた。
指の刺激は続いていたが、私が気持ちよさに耐えきり脱力すると、やっと解放くれる。
「はぁ……はぁ……」
「イッたね」
意識が朦朧とする。
すごかった……。
なんだったんだろう、今の。
放心状態とはこのことだ。
「……清澄くん……」
清澄くんはどうしてこんなことをしてくれたんだろう。
ホテルに入ってから今まで、彼は私を気持ちよくさせることしかしていない。
恋人のように、TLのヒーローとヒロインのように、ずっと優しく導いてくれている。
「清澄くん……私も……」
正直、ここまでの展開にいっぱいいっぱいで、これから彼に同じことを返せる気力が残っているか微妙なところだ。
でも、がんばりたい。
なにをしたらいいだろう。
触る?  舐める?
なんでもできる。
不思議。
こういうとき、いつもどこかで微かな嫌悪感があったはずなのに、清澄くんにはなんでもしてあげたいと思ってしまう。
尽くしてもらった後では、自分も同じ分だけ返したくなるのだろうか。
 
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