【コミカライズ】献身遊戯 ~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「俺としてみる?」4
ヒロインである佳恋(かれん)と、ヒーローである颯斗(はやと)は幼なじみ。
佳恋は高校時代、憧れの先輩との初エッチに失敗し、それを佳恋のせいにされたことがトラウマとなり異性と深い関係になれずにいた。
社会人になっても男性経験はその先輩のみのまま、不安を覚える佳恋。
幼なじみの颯斗は学生時代から物静かで大人びたタイプで、そんな佳恋の話にも興味がなさそうに「ふーん」と流すだけ。
それでも、事情を知らず不用意に佳恋に近づく男がいないよう、いつも彼女のそばにいてくれた。
佳恋はずっと言えずにいた。
いつの間にか、颯斗を好きになっていたこと。
強がって「そろそろ彼氏がほしいな」なんて言っても、相変わらず颯斗は「ふーん」と流すだけ。
今では彼はモテる男に成長していて、言わないだけできっと彼女がいる。
そう思っていた佳恋は、この恋が叶うことはないとあきらめている。
そろそろ颯斗の邪魔をするのは終わりにしなければ。
そんな気持ちで佳恋は、『誰でもいいから抱いてもらって、トラウマを克服してみる』と告げる。
そしたら颯斗から冒頭の──『誰でもいいなら、俺と試してみればいい。絶対に傷つけたりしないから』という台詞が返ってきたのだ。
第一話なのに、ふたりは体の関係になってしまう。
『あっ……待って、颯斗。気持ちいい……』
『佳恋……力抜いて。俺につかまって』
なにこれ……。
これはエッチなのに。
しっかり最後までしてるのに。
本当は両想いなはずのふたりの切ない心情、お互いを思いやる言葉、甘くてとろけそうな表情。
どれも心にグッとくる。
そこからはふたりのエッチな欲望が爆発し、体だけの関係が始まる。
佳恋のトラウマを克服するための行為のはずだけど、素直に好きだと明かせないふたりが唯一繋がることができる切ない瞬間。
「な? 純愛だろ」
気づけば三話まで読み進めていた私に、穂高さんはニヤリと笑う。
「うん……素敵。こういう漫画があるって知らなかった」
お酒のせいもあり、思わず素直な感想を漏らしてしまった。
こんなエッチ、知らない。
私にとっては、もっと苦しくて、痛くて、自分の尊厳を失ってしまうような行為だった。
こんなに愛の込もった繋がり方をしたことがない。
こういうエッチなら、私もしてみたいって思うかも……。
「……なんて顔してるんだよ、日野さん」
「えっ」
穂高さんが紅潮しながら目を泳がせている。
どんな顔をしていたのか自分ではわからないけど、頬に手を当てると熱く、じわっと汗をかいていた。
「……隣行っていい?」
「え!?」
なにを思ったか穂高さんは膝立ちになってこちら側へやってきて、まだいいと言っていないのに隣に腰を下ろした。
いったんなにをされるんだろうとドキドキが最高潮になったが、彼は私が持っていたスマホを奪う。
第四話の画面になるよういじった後で、「この話もヤバイよ」と渡してきた。
……ち、近い。
穂高さん、酔っていて気づいていないのかもしれないけど、さっきまでの距離感じゃない。
隣合うと、いつの間にか腕まくりをしている穂高さんの手首の血管とか、テーブルとの隙間に見えるスーツの太ももとか、ワックスの匂いとか、近くなったセクシーな声とか、とにかくいろんなものが五感を刺激してくる。
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