【変態ゴレてん】変態少年が異世界に転生してゴーレムになったから魔改造を施したけれど変態は治りませんでした。追伸、ゴーレムでも変態でも女の子にモテたいです。

ヒィッツカラルド

第36話 【死霊の習性】

俺とクレアはオーガゾンビの足跡を追い掛けて草原を走っていた。

草原に残る足跡を見ているクレア曰く、オーガゾンビは真っ直ぐ西の山を目指して進んでいるらしい。

アッバーワクー城やグラナダの村とは真逆の方向である。

俺は走りながら銀髪を靡かせるクレアに訊いてみた。

『なあ、クレア』

「なんだ?」

『ゾンビオーガは、どこに向かっているんだ?』

「西の山だな」

確かに進む前方には木々が茂る山が見えた。

『違う違う、そう言うのが訊きたいんじゃあねえってばよ』

「では、なんだ?」

『ゾンビオーガは、何故に、何処に、どうして向かっているんだって訊きたいんだよ』

「なるほど。そう言うことか」

『そう言うことだ』

「おそらくは元住み家だった、西の迷宮だろうさ」

『何故にそこを目指す?』

クレアが俺を一瞥してから言う。

「貴様はつまらない空想小説ばかり読んでないで、これからはもっと学が付く本を読んだほうがいいぞ。馬鹿として育ちきる前に、まだ間に合うかも知れないからな」

『ビッグなお世話だ。それに俺はもう成人した大人だぞ。チ○コはないけれど……』

俺の言葉を聞いてクレアが俺を哀れむ眼差しで見ていた。

眉毛をハの字に曲げて、眉間に皺を寄せている。

『なんだ、その悲しげに汚物でも見るような目付きは……』

「同情の眼差しだ」

俺は走りながら首を振ると溜め息を吐いた。

もういいや……。

話を戻そう。

『それで、ゾンビオーガがなんで迷宮を目指しているんだよ』

「ゾンビと言うアンデッドモンスターには、大きくわけで二つの習性を持ち合わせている」

『習性?』

「本能的な習性だ」

『それはなんだ?』

「一つは食欲だ。兎に角いつも飢えている。生きた生物を見れば食らわんと襲い掛かる習性だ」

『それは知っているぞ。ゾンビらしいゾンビ的なゾンビめいた習性だもんな』

「二つ目は、帰還の習性だ」

『帰還?』

「ゾンビと言うヤツは、他者を食らっていない時は、生前の記憶から産まれた場所や暮らしていた場所に帰還しようと放浪する」

『死んだ後に家に帰りたがると』

「そうだ。帰れる帰れないはともかく、帰還を試みるのだ」

『じゃあ、迷子になったら帰れないんだ~?』

「よくある話だな」

『死んでも迷子って可愛そうだな……』

「先程のナイトゾンビたちが、ガルマルお坊っちゃまたちを追い越して我々と出合ったのは、そのためだ。食らうべき目標を見失ったから、続いて故郷に帰ろうとしていたのだろう」

『それで先に俺たちはゾンビたちに出合ったのかよ』

「そもそも冥府魔法のクリエイトアンデッドたる魔法は遺体の運搬魔法だからな」

『死体の運搬魔法なの?』

「そうだ。戦争などの遠征中に死んだ兵士の遺体を故郷に持ち帰るために、死体自らに歩いてもらって故郷まで運ぶ魔法なのだ」

『死体の運搬が面倒臭いから、自分で歩いてもらうってわけかい!』

「そうだ」

それって中国のキョンシーじゃあねえか……。

映画の霊幻道士って、そんな話だったよな。

案外と西洋も東洋も考えることは一緒なんだ……。

「だからオーガゾンビたちは、真っ直ぐ西の迷宮に向かっているのだろう。帰還するためにな」

『結局、そのダンジョンまで俺たちも足を運ばないとならないのね……』

「元々は西の迷宮からオーガが溢れ出た理由も探らなければならなかったのだから、いいのではないのか」

『え~、ダンジョン調査なんて冒険者に任せようぜ。俺たちの任務はオーガ退治だろ~』

また面倒臭いことを言い出したぞ。

俺は冒険者じゃあないんだから、ダンジョン探索なんてやりたくない。

俺は冒険にロマンも感じなければワクワクも感じないのだ。

何せニートですからね。

だから、そんなのグフザクのような本職の冒険者に任せればいいのにさ~。

まあ、俺が不満を述べてもやる気を出したクレアが聞いてくれるとは思えない。

この娘は責任感が強いからな。

一度乗り掛かった船がドロ船でも簡単には降りてくれないだろう。

ここ数ヵ月の付き合いで、それは俺にも分かっている。

だから、面倒臭いが俺も付き合わなくてはならないわけだ。

じゃないと、このオッパイと美尻の側には要られなくなる。

クレアと離れて暮らす──。

それだけは嫌だ。

あり得ない。

いつでもどこでも俺はクレアのナイスボディーをガン見しながら暮らしたいのである。

あの桃乳も桃尻も俺の物なのだ。

そんなこんなで俺たちが草原を走っていると、進む先は森の中に入って行った。

やがて山の谷間をくねくねと進む。

『なあ、クレア。周りは草木だけどゾンビオーガの足跡は追えているのか?』

「森のほうが草原よりは追跡しやすいぞ。孤児だったとは言え、私とてダークエルフだからな」

『ダークエルフとかって関係あるんだ~。まあ、わけは分からんが、クレアが追えているのなら、それでいいけれどね』

そして今度は山の斜面を上り出した。

「ここだ──」

言ったクレアが藪を掻き分けると、草木が覆い繁った遺跡が俺たちの前に姿を表した。

崩れ落ちた神殿だったのだろう。

太い岩の柱だけが数本残っている。

しかし、天井も壁もすべて崩壊していた。

まさに古い遺跡である。

『ここが西の迷宮なのか?』

「その入り口がある遺跡だろう」

クレアは周りをキョロキョロと見回しながら遺跡の奥に進んで行った。

「この遺跡、最近派手な動きがあったようだな」

辺りの地面を見ながらクレアが言った。

『派手な動きってなんだ?』

「おそらくゴブリンの足跡なのだが、多くが遺跡から出て行く方向に進んでいる」

『ゴブリンが洞窟を出て行ったと?』

「逃げ出したのだろう。しかも、大量にな」

『グラナダを襲ったオーガたちと一緒だな。でも、何故に住み家を去った?』

クレアが踵を返すと俺を見ながら言った。

「たまには自分でも考えてみろ。頭を使って考えろ。頭を働かせないと、その内に腐るぞ」

『何を言ってるのさ、クレアは』

俺は自信ありげに胸を張る。

「んん?」

『お前が考えて、俺が行動する。作るのも戦うのも、そう言う約束だっただろう』

「そんな約束したか?」

『してなかったっけ?』

「まあ、どちらでもいい」

そして、クレアは遺跡の中を歩き回った。

おそらく入り口を探しているのだろう。

「とにかくだ。ゴブリンやオーガがダンジョンから出て行き、ゾンビたちがダンジョンに帰ってくる理由を考えれば分かるだろうさ」

『あっ』

俺はポンっと、掌を槌拳で叩いた。

『ズバリ、ここにネクロマンサーが居るってことか?』

「ああ、そうだ。しかも、最近越してきたばかりの新参者のネクロマンサーだ。そのネクロマンサーからゴブリンたちもオーガたちも逃げ出したのだろうさ。奴らとてゾンビに変えられたくないだろうからな」

『厄介なヤツが引っ越してきたわけだ……』

「おっ、あったぞ。ダンジョンへの入り口が」

クレアが見る先にダンジョンの入り口が、地面にポッカリと大きく口を開いていた。

古びた石畳の一角に、地下に進む階段がある。

俺とクレアは二人並んで、闇に下る階段を覗き込んでいた。

『本当に入るの?』

「当然だ」

「ええ~……」

『なんだ、男の子ってヤツは、冒険が大好きだってマリアンヌ様から聞いていたのだが、貴様は違うのか?』

俺は体をモジモジとくねらせながら言った。

「だって僕、女の子だもん~♡」

『なるほど、ジェンダーか』

信じたよ、こいつ……。




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