【変態ゴレてん】変態少年が異世界に転生してゴーレムになったから魔改造を施したけれど変態は治りませんでした。追伸、ゴーレムでも変態でも女の子にモテたいです。

ヒィッツカラルド

第29話【奇襲の乱戦】

グラナダの村では、あちらこちらから村人の悲鳴が響き、激しい破壊音と共にオーガの咆哮が轟いていた。

複数のオーガたちが村に侵入して暴れまわっている。

建物を壊し、人々を襲っている。

オーガに掴まった村人が頭から丸噛りにされていた。

その凶行から村人たちが必死に逃げ惑っているのだ。

俺は積み重なる薪の山を踏み台に家の屋根に飛び乗ると、屋根板を踏み鳴らしながら走った。

家の下の路地にはオーガの大きな背中が見える。

『とやっ!!』

俺は助走を付けて屋根からダイブした。

3メートルあるオーガの頭に背後から飛び迫る。

『食らえ、この野郎がっ!!』

そして、俺はオーガの延髄に左腕のブレードを突き刺した。

ズブリと刀身がオーガの後ろ首に突き刺さる。

「ウガガァァアアア!!!」

刃先は深く刺さっていたが、オーガは悲鳴を上げているが倒れもしない。

人間ならば致命傷になる外傷だろう。

しかし、生命力の高いオーガにとっては、この程度では致命傷にならないようだ

「ぐがぁぁあああっ!!!」

オーガが叫びながら背中にしがみつく俺に手を伸ばしてきた。

ガシリと左肩を掴まれる。

俺は刺したブレードを引き抜くと今度は横から斜めに首を突き刺した。

「カッガッガァガァァアアア!!!」

口や首から鮮血を散らして悶えるオーガが掴んだ俺の肩に力を込める。

そして、自分の体から俺を引き離すと力任せに投擲した。

投げられた俺は近くの家の壁に背中から激突して止まる。

『畜生……』

「ギィァアアアガカッ!!!」

しかし、俺を投擲したオーガは自分の掌を見ながら悲鳴を上げていた。

その掌からは太い指が三本失くなっていた。

傷口からは派手に血も吹き出している。

小指に関しては切れかけて、皮一枚でぶら下がっていた。

俺の肩からは三本の鋭利な鉤爪が見えている。

三本の暗器だ。

その刃先がオーガの指を惨くも切り取ったのだ。

「ゴッ、ゴァゴゥゴゴゴォ……」


血塗れのオーガは戸惑っていた。

首や口から大量に鮮血を溢して咳き込んでいる。

『まだ、倒れないか……』

俺が再びオーガに飛び掛かろうと腰を落とした瞬間であった。

俺とオーガの間にクレアが横切るように割り込んだ。

閃光のようにレイピアが振るわれる。

白衣を靡かすクレアの姿は白い微風のようだった。

流れるように美しい。

「グガッァアアア!!」

刹那、オーガが悲鳴を上げた。

その両目が横一の字に切られている。

飛び掛かったクレアがレイピアでオーガの両眼を切りつけたのだ。

失明したオーガは悲鳴を上げながら倒れ混む。

死んではいないが目が見えないのだ、これでもう戦闘不能だろう。

手足をジタバタさせて踠いている。

「アナベル、まずは村人を避難させるぞ!」

『クレア、それはお前に任せる。俺は時間稼ぎをするからよ!!』

「ならば、任せるぞ!!」

『おうよっ!!』

俺とクレアは別々の方向に走り出す。

クレアは泣きながら道の真ん中で立ち尽くしている子供を抱え上げると村の外を目指した。

俺は新たなオーガに飛び掛かった。

『とやっ!!』

「ガルルルっ!!」

だが、闇雲に振られた裏拳で殴られ弾かれる。

『げっふぅ!!』

俺は数回ゴロゴロと地面を転がると、スチャリと何事もなかったかのように立ち上がった。

その俺に向かってオーガが歩み寄る。

『まだまだ、行けるぜっ!!』

だが、キツイ──。

俺の体のダメージの話ではない。

それは、体格、パワー、リーチ、人数。

それらすべてが、オーガのほうが勝っている。

俺は思わず愚痴っていた。

『なんでこいつら、突然村を襲撃してるんだよ。しかも大人数でよ!?』

そもそもがダンジョンに引きこもっているようなヒッキーなモンスターだろ。

勝手にダンジョンから出てくるなって感じだ。

職場放棄ですか?

転職ですか?

俺は不平を考えながら立ち上がった。

『くそっ……』

右肘が動かない……。

肘のボールジョイントが砕けて稼動しないようだ。

これは少し不味いな。

『ここからは、片腕か……』

俺が悔しさを漏らすと馬の蹄音が辺りに響きだした。

かなりの震動が地を轟かせている。

俺が道の先を見ると、馬に股がる兵士の一団がこちらに向かって走ってきていた。

騎兵隊だ。

逃げていた村人が叫んだ。

「兵士が来たぞ!!』

町から援軍が来たのだ。

あのボンクラ息子が事の状況を説明して援軍を寄越したのだろう。

『た、助かる……』

いや、助かった……。

騎兵の数は30騎はいるだろう。

しかも少し遅れて50人ほどの歩兵も後ろを走ってくる。

計80人は居そうだった。

『この数なら勝てるか!?』

そもそも勝たなくてもいいのだ。

オーガを村から追い返せれば勝利である。

そして、村の中で騎馬兵とオーガたちが激突した。

オーガの振るう巨拳に殴られた騎兵たちが返り討ちにあっていく。

だが、騎馬兵たちは槍やランスを突き立てオーガたちを串刺しにしていった。

ぶつかり合う戦力は五分五分に伺えた。

『よし、俺も加戦するか』

そう考えた俺が身構えたところで背後から声を掛けられる。

クレアだ。

『アナベル、こっちを手伝え。後は兵士に任せて、今度こそ子供たちの避難を優先させるぞ!』

『分かったよ!』

俺も右腕が壊れている。

ならば、それが得策だろう。

俺は子供を数人連れたクレアと合流すると、一緒に子供たちを村の外まで連れ出した。

俺が女の子の手を引き、クレアは男の子ばかりの手を引いていた。

流石はショタコンなダークエルフだ。

子供相手にも男女差別があるようだな。

怯える子供たちが俺やクレアの足にしがみついている。

だが、ここなら安全だろう。

『おっ、冒険者たちも援軍で加わったぞ』

「!これで人間側が数的にも完全に優勢になっただろうさ」

『おおっ、あれって、この前、家に来た冒険者たちじゃあねえか。確かグフザクって言ったっけな。あらあら~、張り切ってるね~』

こうしてオーガのグラナダ村襲撃事件は、一旦の解決を迎えた。

オーガは俺が倒した1匹を含め、7匹が討伐された。

3匹のオーガは逃げたのだ。

人間サイドの被害は兵士が22人死亡。

冒険者は5名が死亡。

村人の被害は逃げ遅れた者たちが11名ほど亡くなった。

負傷者に関しては、兵士冒険者共に半数である。

そして、俺とクレアは現在のところ、複数の兵士たちに囲まれていた。

武器を突き付けられて、降伏を促されている。

隊長クラスの兵士が曰く。

「貴様らがオーガを村まで招いたのだなっ。逮捕するぞ!!」

俺とクレアが声を揃えて否定した。

「『そんな、バカな~……」』

誤解だ……。

俺とクレアのオーガ事件は、まだまだ解決しないようだ。

事件は続く。


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