【変態ゴレてん】変態少年が異世界に転生してゴーレムになったから魔改造を施したけれど変態は治りませんでした。追伸、ゴーレムでも変態でも女の子にモテたいです。

ヒィッツカラルド

第17話【深夜の来訪】

 俺がファイアービートルから油を取ってきた日から三日ぐらいが過ぎた。森の中には喉かな日々が流れている。太陽はポカポカで風はサラサラなのだ。まさに毎日がスローライフ天国その物であった。ニートには最高な日々である。

 何よりも、オッパイがプルンでお尻がプルルンのクレアとの同居生活が叶っているのだ、まさに天国そのものである。これが夢なら覚めないでもらいたい。

 そして、あれから俺がファイアービートルを狩りに行ったが討伐ミッションは発生しなかった。どうやら一度クリアしたミッションは再チャレンジできないのかも知れない。

 そもそもが、どうやったらクエストやらミッションやらが発生するのか原理が分からなかった。謎である。

 でも、ファイアービートルを十匹倒したし、脂も大量に確保できた。これでしばらくは油に困らないだろうさ。

 まあ、ボーナスポイントも若干稼げたから良しとして置くことにした。

 そして、とある晩の話である。

 時間帯は夜更け。森の中からは、奇怪な鳥の鳴き声が聞こえて来ていた。いつものことである。

 何でも極楽鳥獣レインボーインコの鳴き声らしい。件の鳥は全長2メートルぐらいの大型の怪鳥で、鳥種なのに夜行性だとか。でも、草食で人間は襲わないらしいから問題は無いとのことだった。

 そのような怪鳥の鳴き声を聞きながら、俺とクレアは洞窟ハウスで寛いでいた。ランタンの灯りだけがパチパチと僅かな燃える音を立てている。

 夕食を終えたクレアが自分で使った食器を洗っていた。俺はその後ろでテーブル席に腰掛けながら本を読んでいる。

 本は書庫で見付けた小説である。タイトルは【空手道馬鹿百段】だ。著者は枕夢バクとある。

 この小説がどこの異世界から紛れ込んだかは分からないが、内容は名作だった。

 男臭い空手家オヤジの話であるがアクションシーンがド派手で格好良いのだ。俺のツボである。是非とも実写映画化してもらいたい作品であった。

 俺もこの小説を読んでから、昼間は空手家ごっこをして遊んでいるぐらいだ。正拳突き百回、回し蹴り百回などを繰り返している。お陰で【空手道Lv1】を獲得したぐらいであった。

 なんか楽しく遊んでゲットしたスキルだったので嬉しさが百倍だった。ついでに身体も鍛えられて、少しムキムキになったような気がしている。勿論ながら気のせいなのだが――。

 ただ残念なのは書庫の棚を探しても続編が無い事であった。実に続編が読みたいのだ。それが残念で仕方ない。

「なあ、アナベル……」

『なに?』

 唐突に話し掛けてきたクレアがプルンプルンの唇に人差し指を当てながらシーっと言った。視線は開きっぱなしの窓の外を見ている。

 時は夜更け。外の森は暗い。クレアはその闇を静かに凝視していた。微動だにもしない。森の草木が風に揺れて僅かに音を鳴らしている。

『んん?』

 首を傾げる俺が見るは真剣な眼差しを闇夜に向けるクレアの切れ長な瞳だった。彼女は何かに警戒している。

 そして、クレアは突然にランタンの明かりを消した。室内が闇に沈む。洞窟ハウスの室内が真っ暗になった。

 俺は闇の中で身を屈めると小声でクレアに訊いた。

『どうしたんだよ……?』

「……」

 直ぐに答えを返さないクレアに俺の想像力が先走る。

 えっ、なに、明かりを消して大人の時間に突入ですか!? もう、ドキドキしちゃうな!!

「声を低く話せ」

 そう述べたクレアが窓際に近付いた。壁に背を預けながら、こっそりと窓から外を伺う。

『んん〜……』

 どうやら俺の期待外れのようだ。クレアは真剣である。冗談の通じる空気ではない。

 俺は椅子の脇にかがみながら闇の中でクレアを見守った。するとクレアは外の様子を伺いながら小声で言う。

「何やら深夜の来客だ」

『来客?』

 こんな夜更けに何を言ってるのだろう。俺は木材の首を傾げる。

 そもそもこの洞窟ハウスを建ててから誰一人として来客なんて来た事がない。森の外の近隣には人里もあるが、たぶん俺たちの存在は知られていないだろう。

 それどころか、この森の中で人に会ったことすらないのだ。それだけクレアの隠蔽魔法は優秀だ。偶然程度では見つかるはずがないのだ。

 なのに来客だって?

 クレアはふざけているのか?

 いや、こいつにふざける程の可愛らしいセンスはない。それだけ真面目だからオッパイがデカいのだ。

 ならば……。

 クレアが外の闇を見ながら指折りに数える。

「一、二、三、四、五……。五人だな」

 俺も身を屈めながらクレアに近付いた。

『五人って、誰だよ?』

「身なりからして人間の冒険者だ。重戦士風が二人、軽戦士風が二人、あと魔法使い風が一人だ」

 僧侶は居ないのか。アンバランスだな。

 それよりも――。

『なんで冒険者が?』

「心当たりはないか?」

『ない』

「じゃあ以前街道で商人を襲ったのが噂になったのではないだろうか」

『あれは……。べつに俺たち、何も悪いことをしていないだろう?」

 うん、していない。商人をひん剥いたが何も悪いことはしていない。──はずだ。

「あの商人が何か良からぬ噂でも振り撒いたのかも知れんぞ。ダークエルフのゴーレムマスターが現れたとか」

『それで外の冒険者たちは俺たちを退治しに来たと言うのか?』

 自分で言ってから、有り得ると青ざめる。

「言いがかりだな」

『そうだ、言いがかりだ!』

「だが、外の連中は武器を構えているぞ」

『やる気満々じゃんか!』

 俺も窓枠から顔を半分だけ出して外を窺った。だが、真っ暗で何も見えない。

『何も見えないぞ?』

「私は暗視能力があるから見えている。ダークエルフ族の特性だ」

『そうなの、いいな~』

「おそらく外の連中もナイトアイの魔法で暗視能力を施しているのだろう。だから明かりなしでもこちらを監視できているのだろうさ」

 ナイトアイとは短時間だが夜目が利くようになる便利な魔法だ。他人にも施せる術で、初級の簡単な魔法らしい。

『あっ、それいいな。クレア、その魔法を俺にもかけてくれ』

「私はナイトアイの魔法を覚えていない」

『えっ、そうなの。何でだよ?』

「ダークエルフは暗視能力を持っているのが普通だからな。だからナイトアイを普通は覚えないのだ。不必要だからな」

『なるほどね……。確かに不必要だわな』

 夜目が利くんだから普通は魔法に頼らないよね。しかし、俺だけ夜目が利かないのは不味いよな。俺だけ暗闇で立ち回っていられない。てか、これでは立ち回れない。

 そこで俺は思い出す。

 確か獲得可能スキル一覧に暗視スキルっぽいのがあったよな。そうだ、確か暗視魔眼だ。

 取るか、取るしかないか……。

 この際だ、取っちまえ!

 取る!

【暗視魔眼を習得しました】

 よし、暗くても目が見えるぞ。これ、便利だな~。昼間ってほどではないが、暗闇が明るく見えるぞ。

 俺は獲得したばかりの魔眼で外を見た。

 あれ、右目で見ると暗視だけど、左目で見ると普通に暗いぞ。片目だけ暗視魔眼になったようだった。ちょっと見づらいな。

 まあ、しゃあない。これで頑張るしかないか。

 今度こそと思いながら俺は外の闇を窺う。

『どれどれ~。あっ、本当だ。藪の中に五人居るぞ。大きなハンマーを持った野郎に、戦斧を持った野郎。それに軽装備の戦士に弓矢を構えた野郎。あとローブ姿の魔法使いだな。確かに五人だわ』

 それにしても野郎ばかり五人なんて、なんて色気が無い連中なのだろう。たぶん全員童貞だろうさ。

 クレアが俺の顔を見詰めながら驚いた顔で言った。

「何故に貴様、急に見えるようになった……?」

『転生者の特性だ。今は気にするな』

「分かった……」

 クレアは素直に納得してくれた。物分かりの良い美女は可愛いな。流石はクレアだぜ。伊達に乳がデカイわけではないな。乳も頭も柔軟だ。

『さて、どうするクレア。このまま壁越しに、にらめっこでもしているつもりか?』

「いや、向こうから動いたぞ」

『本当だ』

 森の中の五人が藪から出て来て洞窟ハウス前の広場に入って来た。柵を越えて俺の畑を横断すると洞窟ハウスに接近して来る。かくれんぼは終わりらしい。襲撃でもするつもりなのだろうか?

 五人は少し離れたところに立ち止まる。すると腕を胸の前で組んだ軽戦士が声を張る。

「なあ、ダークエルフの姉ちゃん、聞こえてるんだろう。隠れてないで出て来やがれ!!」

 俺はクレアに言ってやった。

『クレア、ご指名だぞ』

 クレアは俺をチラリと見てから言った。

「アナベル、貴様はここで待機していろ。話が荒々しくなったら突っ込んできてくれ」

『了解』

 話し合いが戦闘に進展したら出て来いって事だろう。俺はゴーレムらしく伏兵なのね。

『じゃあ、お手並み拝見といたしましょうか』

「よし、行ってくるぞ」

『行ってら~』

 スポーツブラにタイトスカート姿のクレアはベルトにレイピアを下げると洞窟ハウスを出て行った。五人組の前に立つ。その背中を俺は見守る。クレアは冒険者たちに臆していない。いつも通り凛々しく振る舞う。

 一人でも凛々しいクレアが言った。

「貴様らは何者だ。我が家に何用かな?」

 軽戦士がスケベそうな眼差してクレアを見ながら言った。

「本当に別嬪なダークエルフの姉ちゃんだな。噂通りだぜ」

「噂とは何だ?」

 軽戦士はニヒルに笑いながら述べた。

「街道でダークエルフのゴーレムマスターに襲われたって言う旅商人が居てな。皆して信じていなかったが、念のために森を調べて見たら、ファイアービートルの森でゴーレムの足跡を見付けたんだ。あの辺にはパペットゴーストも近付かないから、もっと探索範囲を広げてみればビンゴってわけよ」

 あらら、俺の足跡が発見されていたのね……。これは俺が悪いのかな?

「ダークエルフって奴は森の中で足跡すらのこさないから、住み家を見つけ出すのに苦労したんだぜ」

 えっ、クレアって森の中だと足跡すら残さないのかよ。知らんかったわ……。ダークエルフってスゲェ〜な〜。

「良くしゃべる人間だな。それで私になんの用事だ?」

 軽戦士が怪しく微笑む。

「決まってるだろう。お前を捕まえて、散々犯した後に、飽きたら奴隷商人に売り飛ばすんだよ!」

『ムカっ!!』

 ダンッ!

 刹那、俺は飛び出していた。家のドアを突き破り軽戦士に向かって突進して行く。憤怒が瞬時に沸騰して爆発したのだ。この下劣な野郎に我慢が出来なかったのだ。

 俺様のクレアを何だと思っていやがるんだ。半殺しにしてやるぞ!!

『ふぬぅっ!!』

 大振りで乱暴なパンチだった。俺は上から下へ、力任せに拳を振るう。怒りに任せたピッチャーのようなフルスイングパンチである。

「出たな、ゴーレム!」

 だが、俺のパンチは当たらず空を切る。軽戦士は身軽にバックステップを刻んで退避していた。俺の攻撃は難なく躱されたのだ。

 軽戦士は余裕の笑みで述べる。

「ははっ、ゴーレムが居るのは知れている。不意打ちなんて食らわないし、驚きもしないぜ!」

『くそっ!』

 軽戦士が腰からダガーを二本抜いて両手に構えた。逆刃で構えている。短刀の二刀流だ。

 別の仲間たちも武器を構えながら広がった。魔法使いだけが後ろに下がる。

 こいつら戦い慣れていやがるぞ。フォーメーションを築きやがった。

 軽戦士が嫌らしく微笑みながら挑発してきた。

「ダークエルフの姉ちゃん。動けないように手足の健を切って、魔法が唱えられないように舌も抜いてやる。それから飽きるまで犯してやるぞ!!」

 クレアが言い返す。

「ぬかせ、下劣な人間め。貴様のほうこそ身ぐるみを剥いで、全裸で縛って荒野に放置してやる。禿げ鷹の餌だ』

 禿げ鷹の餌は嫌だが、俺も全裸で縛られて放置されたいな。あと、罵倒もされたいな。ご褒美じゃあねえかよ。

 出来たら更に踵の高い靴でお尻を踏まれたいぞ。今度クレアにプレイをお願いしてみるかな。

 こうして初の来訪者と戦闘が始まった。深夜の対決である。



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