【変態ゴレてん】変態少年が異世界に転生してゴーレムになったから魔改造を施したけれど変態は治りませんでした。追伸、ゴーレムでも変態でも女の子にモテたいです。

ヒィッツカラルド

第12話【亜種の犬面】

 俺とクレアは森の中の藪に隠れながら洞窟の様子を窺っていた。屈みながら先を見る。

『居るな、コボルト……』

「居るわね、コボルトが」

 やはりクレアが言う通り、件の洞窟にはコボルトが巣くっていた。

 俺たちが潜んでいる森の中から洞窟までは20メートルほどの距離がある。洞窟の前には膝の高さ程度の雑草が繁る広場になっていた。

 その広場の先に高さで30メートルほどの岩の崖があり、その崖の腹に横長の洞窟が口を開いている。

 洞窟の横幅は15メートルぐらいだ。天井は一番高いところで5メートルって言ったところだろうか。

 俺は洞窟と聞いていたからトンネルのような洞穴を想像していたが、実際は崖を掘り出した窪みのような横長な洞窟であった。中は広いが奥行きは浅そうだ。

 その窪みのような洞窟に数匹のコボルトが屯している。

 洞窟の前で三匹のコボルトが焚き火を囲んで何やら動物の串焼きを料理していた。焼かれているのは、ちょっと大きなネズミである。

 三匹のコボルトは粗末な服を着て、腰には武器を下げていた。短い剣、手斧、木の棍棒だ。

 焚き火を囲む三匹の他に、洞窟の奥で寝ている二体のコボルトの姿もあった。

 汚れたシーツを掛けて横になっていたり、壁に背を預けて大口を開きながら寝ているコボルトも居る。

 まだ時刻は早朝のはずだ。コボルトもお寝坊さんなのだろう。

 俺は横に潜むクレアに小声を真似したテレパシーで話し掛けた。

『起きているのが三匹で、寝ているのが二匹だな』

「違うは、寝ているのは四匹よ」

 俺は目を凝らしたが残りの二匹を確認出来なかった。

『どこに居るんだ……?』

「右の大岩の陰よ」

 確かに洞窟の中には幾つかの大岩がある。その陰で涼みながら寝ているのだろうか。

『お前には居場所が見えるのか?』

「風の流れで分かるわ」

『へぇ~……』

 ダークエルフって、すげ~な~……。普段の空気は読めないが、こんな時の風は読めるんだ~……。

『じゃあ、全部でコボルトは合計で7匹だな』

「そうよ」

『さっきの話だと、10匹以内なら俺ら二人でも勝てるんだろ』

「簡単な計算よ。コボルト1匹の戦力が数値だと1点。7匹で計7点。貴様の戦力が5点、私が4点。数値から見ても単純に私たちが上よ」

 なるほどね。コボルトが7点。俺らが5+4=9点。俺でも分かる数値の差だ。ならば勝てるよね。

『じゃあ、作戦はどうする?』

「正面から貴様が突っ込む。後方から私が魔法で援護する。それだけだ」

『単純な作戦だな……』

「コボルトが相手なら、それで十分よ」

『でも、数値的に俺たちが勝っているのは、2点だけじゃねえか?』

「理屈で考えるな、馬鹿者」

 俺はクレアの腰のレイピアを指差しながら言った。

『なあ、後方から魔法で援護するなら武器は要らんだろ。そのレイピアを貸してくれないか?』

「嫌よ」

『なんでだよ!!』

「貴様の腕力で折られたら堪らないだろ」

『じゃあ俺に素手で戦えと!?』

「お前はゴーレムだろ。その手は棍棒と同じだ。人間と比べれば、その拳が鈍器その物だ。素手で殴れ」

 俺は自分の拳を眺めながら呟いた。

 確かに硬そうだ。

『なるほどね~……』

 両拳両脚が棍棒並みの武器なのね。言われればその通りだわぁ。

「貴様も自分がゴーレムだと少しは自覚しろ。早く慣れたほうがいいぞ」

『はいはい、分かりましたよ~』

 俺は投げやりに言うと藪から立ち上がる。

 自分がゴーレムってのに慣れたくないわな……。それに今は乳を揉むために人間に成ることを目指している。それも忘れられない。

『じゃあ、俺は速攻で突っ込むぞ、援護を頼むぜ!』

「任せろ」

 俺はクレアの返事を聞くと藪から前に出た。洞窟に向かって走り出す。

 戦闘開始だ。

『おらっ、コボルトども、ぶっ殺すぞ!!』

「ガルルッ!?」

 俺の大きく放ったテレパシーボイスに反応したコボルドたちが立ち上がった。三匹が素早く武器を手に取る。

 すると二匹が俺に向かって走り出して、残りの一匹が寝ている仲間をお越しに回った。

『犬の癖に、役割が的確だな、おいっ!』

「「ガルルルルッ!!」」

 牙を剥いた二匹のコボルトが俺に迫る。そして、早くもクレアが後方で援護魔法を放った。

「ドライアードスネアっ!」

 すると一匹のコボルトが足を止めた。コボルトの両足に半透明な茨が絡み付いて移動を妨げている。

『足止めの魔法か。やるなクレアも。これでまずはタイマンだ!』

「ガルルルルッ!!」

 俺は走り迫るコボルト一匹と差しの勝負になった。ショートソードを振りかぶったコボルトが俺に切りかかる。

 だが、俺のストレートパンチのほうが早くコボルトの顔面を殴っていた。固い木製の拳がコボルトの犬顔を打つ。

『どうだぁ、ゴラァ!!』

「キャン!」

 鼻血を散らしたコボルトがよろめいた。その隙に俺は犬頭の顎と額を鷲掴む。そして、力任せに首を捻った。

『えりゃ!』

 ゴキゴキっと鈍い粉砕音がコボルトの首から聞こえてくる。完璧に折ってやった。

 首の骨を折られたコボルトは膝から崩れ落ちる。その剥き出しの瞳は虚ろで生気が消えうせていた。口や鼻から血を垂らしている。即死だろう。

 生き物の命を絶つ──。

 俺は初めてじゃない。

 実家は田舎で農家だった。

 庭にニワトリを飼っていて、そのニワトリが食卓に並ぶ事は珍しくなかった。

 母ちゃんに言われて飼っていたニワトリを絞めた事が何度もある。だから、動物の首の骨を折るのも慣れていた。

 それに、小学生の高学年ごろには猪の肉を一人で捌けるようになっていた。熊も何度か捌いた。以外に丹頂鶴の肉が美味しいのも知っている。

 命を絶つことに、躊躇も差別もない。生きるために他の命を絶つのは自然なのだ。

 動物を殺すのが可愛そうだと文句を言っている野郎がスーパーでトンカツを買って食う。矛盾だと俺は思う。

 それならば徹底した草食主義のヴィーガンのほうが、まだ正しく思える。

 俺は倒したコボルトを見下ろしながら言う。

『安心しろ、お前たちの死は無駄にしないぞ。お前らの分まで俺が生きてやる!』

 俺は拳を背後に振りかぶりながらドライアードスネアで足を止められているコボルトに迫った。そして、全力で拳を打ち込んだ。

『ううらぁ〜〜!!』

 地面スレスレに振るった拳がコボルトのボディーを突き上げる。

 コボルトは移動も回避も出来なかった。

 直撃。

 俺の拳がガードを突き破る。

『どらっ!!』

「キャンっ!!」

 更に俺はコボルトの体にめり込んだ拳を振り切ろうとしたが、コボルトの足に絡み付いた茨の魔法がそれを邪魔した。コボルトの体は飛ばずに止まる。

『うらっ!!』

 代わりに俺は逆の拳で二撃目を繰り出した。

 背後に振りかぶった拳を上から下へと虹を描くように振るう。

 拳は頭に直撃。ガッンっと音が鳴る。

 俺の打ち下ろした拳がコボルトの脳天を殴り付けて首が縮こまっていた。そして、ワンテンポ遅れてコボルトが大量の血を口から垂れ流す。それから後ろにパタリと倒れた。事切れたようだ。

『よし、二匹目撃破だっ!!』

 俺が一歩前に踏み出すと、洞窟の前でコボルト5匹が呆然とこちらを見ていた。犬の顔が青い。怯えているコボルトも多い。犬人間が震えているのだ。

 そして、俺と視線が合うと、コボルトたちは武器を捨てて逃げ出した。キャンキャンっと鳴きながら蜘蛛の子を散らすように洞窟の前から走り出す。

『あれれ……、逃げるの?』

 俺は呆れながらコボルトたちを見送った。すると俺の背後にクレアが寄って来る。そのころには戦闘の空気は冷めていた。

「まあ、逃げるのも仕方ないだろう。戦力差がコボルトにも一目で理解が出来たのだろうさ」

『そうなのか……?』

 俺は痒くもないのに頭をポリポリとかく。少し物足りない。もっと暴れたかったのだ。

「戦力の差が大きすぎる。向こうの戦力は7点で、こちらは20点だからな」

『20点……。5+4で9点だろ?』

「何を言っているのだ、貴様は?」

『えっ……?』

「5×4は20だろ。貴様は計算も出来ないのか」

『掛け算なのかよ!!』

「当然だ。ゴーレムとゴーレムマスターのコンビだぞ。足し算で戦力を計算するほうが間違いだ」

「なるほどね……」

 まあ、労せずに勝てたからいいのかな。それに、これで洞窟もゲットだしさ。



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