【変態ゴレてん】変態少年が異世界に転生してゴーレムになったから魔改造を施したけれど変態は治りませんでした。追伸、ゴーレムでも変態でも女の子にモテたいです。
第9話【不良の喧嘩】
秘密基地の扉の前で立つ俺が森の中を見回すと、暗闇に混ざって数体の人影が動いていた。ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。その歩みは歪だ。まるでゾンビのようにフラフラと歩いてくるのだ。
俺は背後の穴の中に居るクレアに訊いた。
『パペットゴーストって、なんだよ。ゴーストって名前からしてアンデッド系のモンスターなのか?』
沈着冷静なクレアが答えた。
「パペットゴーストとはゴーレムの残骸に野良の霊魂が取り付いたモンスターだ。アンデッドだが、その戦力はゴーレムの性能に寄って変わるな」
それにしても暗い。姿が見ずらい。
『明かりが欲しいな、月明かりだけじゃあ暗いぞ』
「任せろ」
俺の言葉に応えてクレアが魔法を唱える。彼女の掌上から浮き上がった光の玉がフワフワと宙に浮き上がった。秘密基地の前に広がる野原を照らし出す。
「ウィル・オー・ウィスプ、光の精霊よ。これで明るいかしら」
『十分だぜ、助かる。光の精霊さんもサンキュー』
ウィル・オー・ウィスプの光に照らされて周囲が明るくなった。その光でパペットゴーストの姿もあらわになる。
森の中から歩み出てくるゴーレムたちは、身長170センチぐらいのデザインドールが二体、それに以前俺が入っていたのと同じ木人が一体だった。どれもこれも雨風に長くさらされていたのか薄汚くボロ臭い。
その他に50センチ程のフランス人形が一体だけ木人の足元に徘徊している。服装がボロボロなフランス人形は手に床屋が使っているような折り畳みのカミソリを持っていた。そのカミソリの刃だけが鋭利に殺伐と輝いている。
『計四体か……。あれって、襲ってくるよね?』
「ああ、お前は襲われるだろうな」
俺だけ?
『えっ、なんで?』
俺は振り返るとクレアの顔を見た。
『襲われるのは俺だけなの。お前は襲われないの?』
彼女は真面目な表情で言う。
「あれは昔私がゴーレム製造の練習で作った試作品だ。解体するのが面倒臭くて森に放置していた物に野良の霊魂が取り憑いたのだろう。だから、ゴーレムの法則で主である私を襲うことはないのだ。たぶんここにはお前を追って現れたのだろうさ」
『ええ~~……』
クレアが豊満な胸の前で腕を組んでから言う。
「この際だ、お前一人で戦ってみないか。私はお前の戦闘力を見てみたいのだ。何かと勉強に成るだろう」
『いや、あれはお前の不法投棄が原因でモンスター化した人形たちだろ。俺が戦うのはいいが、少しはお前も手伝えよ』
「ならば、危なくなったら手を貸そう。だから安心して戦え」
また勝手なことを言いやがる……。身勝手な女だな。でも、乳は大きい。しかも形が整っている美乳だ。だから許しちゃう。
『まあ、いいけれどさ……』
当然ながら俺はモンスターと戦ったことはない。ないが、前の世界では殴り合いの喧嘩程度ならばやったことがある。
俺が通っていた高校は田舎の不良高校だった。地元のヤンキーたちが集まる内申点の低い高校である。テストで名前が書ければ卒業出来るレベルの高校だ。IQの平均点は滅茶苦茶に低い。
その学校で俺はいろいろと揉まれた。自分が喧嘩をしたくなくとも絡まれるからである。だから、俺のスキルに喧嘩Lv2ってのがあるのだろう。
『喧嘩なんて、高校を卒業して以来だぜ』
俺は右腕をグルグルと回しながら前に出た。生前より体は重いが、パワーは上がってるから、一対多数でもなんとかなるだろうさね。
『ガッガッがっ……』
一体のデザインドールが両手を突き出して俺に掴み掛かろうと突進してきた。
『まるで、小学生の喧嘩だな』
俺は長い足を前に突き出してデザインドールの腹を蹴り飛ばした。木材と木材がぶつかり合う固い音が響くとデザインドールの体がくの字に曲がる。
俺は低くなったデザインドールの頭を両手で掴むと、引き寄せながら膝を突き上げた。顔面への膝蹴りだ。更に激しい木材音が響く。
蹴られた衝撃に仰け反ったデザインドールの頭部に縦の亀裂が走っていた。人間なら脳震盪で勝負がついていただろうが相手は妖怪人形だから気絶なんかしてくれない。戦闘は継続される。
『もう一撃だっ!』
続いて左の大振りフック。ガンっと音が轟く。
俺に顔面を殴られたデザインドールの頭部が砕けて木っ端微塵に吹っ飛んだ。そして胴体だけが錐揉みしながらダウンする。
『うんうん、パワーは凄いな』
だが、頭を喪ったデザインドールがユラユラと立ち上がった。機能を停止していない。
『えっ、頭が砕けたのに動けるのかよ!?』
どうやらゾンビのように脳機能が停止したら終わりっていう法則は通用しないようだ。
大きな乳を抱えるように腕を組むクレアが秘密基地の前で言う。
「安心して、頭を失くせば目は見えていないから」
『そうなの……?』
頭を失くしたデザインドールは両手で空を探りながらふらついていた。クレアが言う通り辺りが見えていない様子だった。
「パペットゴーストの急所は胸のコアよ。コアから繋がる神経糸が手足を動かして目にもつながっているの。だからコアを壊せば動かなくなるわ」
心臓にあたるコアが急所で頭に脳は無い。だが、視界を認知するカメラのような物が目の代わりになっているのだろう。その辺は機械的な感じなのね。
だとするならば、俺も頭部や瞳を破壊されたら視力を失う事になる。それは気をつけないとならんな。
『なるほど』
俺は頭を失い彷徨うデザインドールに背後から近付いた。そして、背後から引き倒すように自分の膝に背中を乗せる。
プロレス技のシミット式バックブリーカーだ。
『ふぬっ!』
そのまま力を込めて膝上のデザインドールを腰からへし折った。バギバギっと激しい音が夜の森に鳴り響く。
『これでどうだ!?』
地面に転がったデザインドールの下半身は動かないが、上半身の腕は動いている。まだコアと神経が繋がっているのだろう。だが、這い回るのがやっとのようである。
『まだ動けるのかよ……』
しかし、もう戦力外だと思えた。
俺が半分になっているデザインドールを見下ろしていると、背後からもう一体のデザインドールに抱き付かれた。
『おっと、別のが来たか』
背後からの羽交い締め。なかなかの力で俺の体を締め上げてくる。それは、獲得したばかりの感触追加のお陰でなんとなく分かった。
俺が力任せに羽交い締めを振り払おうとしていると、眼前に回り込んだ木人がウッドボールな拳で殴り掛かってきた。
背後から羽交い締めにされている俺は動けない。だから木人に何度も殴られた。フック、フック、フックでタコ殴りである。
すると森に木霊する木製の響き。
『ああ、俺は殴られているのか?』
木人に殴られる度に視界が揺れる。だが、それだけだ。痛覚無効のためにダメージを感じない。ダメージが有るのか無いか分からない。でも、殴られている感触は確かに存在していた。だから、ウザったい。
『おらっ!!』
俺は力任せに体を捻って背後から抱き付いているデザインドールを柔道の払い腰風に投げ飛ばした。パワーは圧倒的に俺のほうが上らしい。
投げられたデザインドールの体が木人に激突して、二体して重なるように倒れ込む。
『おらっ!!』
俺は倒れているデザインドールの腹にサッカーボールキックを撃ち込んだ。力任せに蹴り飛ばされたデザインドールの体が飛んで行って太い木にぶつかりバラバラに砕け散る。関節という関節から分解されて木っ端微塵だった。
『次はお前だ!』
更に俺は木人の両足を両腕で脇の下に抱え込むと木人をグルグルと竜巻のように振り回す。今度はプロレス技のジャイアントスイングだ。
そして、木人の体を数回グルグル回すと投擲した。飛んで行く木人はデザインドールと同じ大木にぶつかるとバラバラに粉砕される。
残るはフランス人形のみ。
『よし、残るは一体だ』
刹那、背後から背中をカミソリで切りつけられた。切られた感触は分かったが、やはり痛くない。
俺は振り返ると同時に裏拳を振るう。その裏拳がジャンプ中であったフランス人形の顔面を殴り飛ばす。
殴られたフランス人形が森の中に飛んで行った。しかし、直ぐにフランス人形は立ち上がる。顔面にクモの巣のような皹が入っていたが目は見えているようだった。
『当たりが浅かったかな』
『キィキィキィキィーー!!』
奇声を上げながらフランス人形が飛んできた。俺は拳を背後に大きく振りかぶる。そして、タイミングを合わせた拳を後ろから前に豪快に振るった。
『おらっ!!』
全力のストレートパンチが空中でフランス人形の胴体を捕らえる。すると鈍い音が轟く。そのパンチ力でフランス人形の体を突き破って俺の拳が背中から飛び出ていた。拳打が貫通したのだ。
『キィ……』
それでフランス人形は動かなくなった。コアがパンチで破壊されたのかな。
俺の腕に串刺しにされたフランス人形の手足がダラリと下がる。もう動かない。
四対一だが俺の圧勝である。
俺は右腕に突き刺さっていたフランス人形を取ると地面に放り捨てた。まるで糸の切れたマリオネットのようにフランス人形が転がる。
『まあ、こんなものだろう』
言いながら俺は、まだ動いているデザインドールの上半身を踏み潰した。胸に大きな亀裂が走ると上半身だけの人形は動かなくなる。
クレアが冷静な評価を口にした。
「ダメージは受けたが、なかなかの戦力だな」
『ダメージ?』
ダメージなんて受けた感触は無かった。だから俺は首を傾げる。
「背中を切られているぞ。私に見せてみろ」
『このぐらいへっちゃらだ。痛くないし』
感触追加は取ったが痛覚無効は健在だ。だから痛みの感覚は感じられないのだろう。なんか、都合が良くって便利だわ〜。
クレアが溜め息を吐いてから言う。
「お前の体は人間でないのだぞ。自己回復もせんのだ。そこから脆くなって、いずれは体が崩れるぞ」
『なるほど……』
「修理してやる。しゃがめ」
『うぃ』
俺は素直にしゃがんだ。
するとクレアが俺の背後に立って魔法を唱え始める。俺の背中に添えられた彼女の掌が淡く輝いていた。
『治癒魔法で修理なのか?』
「治癒魔法ではない。傀儡系魔法、アーティファクトリペアだ。これで良し」
どうやら修理が終わったらしい。簡単なものである。でも、背中で見えないから、どんな風だか分からない。
「魔法での修理は、時間が過ぎているほど難しくなる。長い時間放置していると、パーツから交換になるぞ」
『ああ、分かったよ』
「老化無効でも、老朽化は無効じゃあないんだからな」
『なるほど、老化ではなく老朽化か……』
俺って、【生命】じゃないんだ、【物】なんだな……。
「よし、じゃあ、秘密基地に入ろうか。流石に私は眠いぞ。もう深夜だからな」
俺は全然眠くない。睡眠無効のお陰だろう。
そして俺はクレアに続いて秘密基地に入って行った。洞穴のような狭くて粗末な階段を下る。
俺は背後の穴の中に居るクレアに訊いた。
『パペットゴーストって、なんだよ。ゴーストって名前からしてアンデッド系のモンスターなのか?』
沈着冷静なクレアが答えた。
「パペットゴーストとはゴーレムの残骸に野良の霊魂が取り付いたモンスターだ。アンデッドだが、その戦力はゴーレムの性能に寄って変わるな」
それにしても暗い。姿が見ずらい。
『明かりが欲しいな、月明かりだけじゃあ暗いぞ』
「任せろ」
俺の言葉に応えてクレアが魔法を唱える。彼女の掌上から浮き上がった光の玉がフワフワと宙に浮き上がった。秘密基地の前に広がる野原を照らし出す。
「ウィル・オー・ウィスプ、光の精霊よ。これで明るいかしら」
『十分だぜ、助かる。光の精霊さんもサンキュー』
ウィル・オー・ウィスプの光に照らされて周囲が明るくなった。その光でパペットゴーストの姿もあらわになる。
森の中から歩み出てくるゴーレムたちは、身長170センチぐらいのデザインドールが二体、それに以前俺が入っていたのと同じ木人が一体だった。どれもこれも雨風に長くさらされていたのか薄汚くボロ臭い。
その他に50センチ程のフランス人形が一体だけ木人の足元に徘徊している。服装がボロボロなフランス人形は手に床屋が使っているような折り畳みのカミソリを持っていた。そのカミソリの刃だけが鋭利に殺伐と輝いている。
『計四体か……。あれって、襲ってくるよね?』
「ああ、お前は襲われるだろうな」
俺だけ?
『えっ、なんで?』
俺は振り返るとクレアの顔を見た。
『襲われるのは俺だけなの。お前は襲われないの?』
彼女は真面目な表情で言う。
「あれは昔私がゴーレム製造の練習で作った試作品だ。解体するのが面倒臭くて森に放置していた物に野良の霊魂が取り憑いたのだろう。だから、ゴーレムの法則で主である私を襲うことはないのだ。たぶんここにはお前を追って現れたのだろうさ」
『ええ~~……』
クレアが豊満な胸の前で腕を組んでから言う。
「この際だ、お前一人で戦ってみないか。私はお前の戦闘力を見てみたいのだ。何かと勉強に成るだろう」
『いや、あれはお前の不法投棄が原因でモンスター化した人形たちだろ。俺が戦うのはいいが、少しはお前も手伝えよ』
「ならば、危なくなったら手を貸そう。だから安心して戦え」
また勝手なことを言いやがる……。身勝手な女だな。でも、乳は大きい。しかも形が整っている美乳だ。だから許しちゃう。
『まあ、いいけれどさ……』
当然ながら俺はモンスターと戦ったことはない。ないが、前の世界では殴り合いの喧嘩程度ならばやったことがある。
俺が通っていた高校は田舎の不良高校だった。地元のヤンキーたちが集まる内申点の低い高校である。テストで名前が書ければ卒業出来るレベルの高校だ。IQの平均点は滅茶苦茶に低い。
その学校で俺はいろいろと揉まれた。自分が喧嘩をしたくなくとも絡まれるからである。だから、俺のスキルに喧嘩Lv2ってのがあるのだろう。
『喧嘩なんて、高校を卒業して以来だぜ』
俺は右腕をグルグルと回しながら前に出た。生前より体は重いが、パワーは上がってるから、一対多数でもなんとかなるだろうさね。
『ガッガッがっ……』
一体のデザインドールが両手を突き出して俺に掴み掛かろうと突進してきた。
『まるで、小学生の喧嘩だな』
俺は長い足を前に突き出してデザインドールの腹を蹴り飛ばした。木材と木材がぶつかり合う固い音が響くとデザインドールの体がくの字に曲がる。
俺は低くなったデザインドールの頭を両手で掴むと、引き寄せながら膝を突き上げた。顔面への膝蹴りだ。更に激しい木材音が響く。
蹴られた衝撃に仰け反ったデザインドールの頭部に縦の亀裂が走っていた。人間なら脳震盪で勝負がついていただろうが相手は妖怪人形だから気絶なんかしてくれない。戦闘は継続される。
『もう一撃だっ!』
続いて左の大振りフック。ガンっと音が轟く。
俺に顔面を殴られたデザインドールの頭部が砕けて木っ端微塵に吹っ飛んだ。そして胴体だけが錐揉みしながらダウンする。
『うんうん、パワーは凄いな』
だが、頭を喪ったデザインドールがユラユラと立ち上がった。機能を停止していない。
『えっ、頭が砕けたのに動けるのかよ!?』
どうやらゾンビのように脳機能が停止したら終わりっていう法則は通用しないようだ。
大きな乳を抱えるように腕を組むクレアが秘密基地の前で言う。
「安心して、頭を失くせば目は見えていないから」
『そうなの……?』
頭を失くしたデザインドールは両手で空を探りながらふらついていた。クレアが言う通り辺りが見えていない様子だった。
「パペットゴーストの急所は胸のコアよ。コアから繋がる神経糸が手足を動かして目にもつながっているの。だからコアを壊せば動かなくなるわ」
心臓にあたるコアが急所で頭に脳は無い。だが、視界を認知するカメラのような物が目の代わりになっているのだろう。その辺は機械的な感じなのね。
だとするならば、俺も頭部や瞳を破壊されたら視力を失う事になる。それは気をつけないとならんな。
『なるほど』
俺は頭を失い彷徨うデザインドールに背後から近付いた。そして、背後から引き倒すように自分の膝に背中を乗せる。
プロレス技のシミット式バックブリーカーだ。
『ふぬっ!』
そのまま力を込めて膝上のデザインドールを腰からへし折った。バギバギっと激しい音が夜の森に鳴り響く。
『これでどうだ!?』
地面に転がったデザインドールの下半身は動かないが、上半身の腕は動いている。まだコアと神経が繋がっているのだろう。だが、這い回るのがやっとのようである。
『まだ動けるのかよ……』
しかし、もう戦力外だと思えた。
俺が半分になっているデザインドールを見下ろしていると、背後からもう一体のデザインドールに抱き付かれた。
『おっと、別のが来たか』
背後からの羽交い締め。なかなかの力で俺の体を締め上げてくる。それは、獲得したばかりの感触追加のお陰でなんとなく分かった。
俺が力任せに羽交い締めを振り払おうとしていると、眼前に回り込んだ木人がウッドボールな拳で殴り掛かってきた。
背後から羽交い締めにされている俺は動けない。だから木人に何度も殴られた。フック、フック、フックでタコ殴りである。
すると森に木霊する木製の響き。
『ああ、俺は殴られているのか?』
木人に殴られる度に視界が揺れる。だが、それだけだ。痛覚無効のためにダメージを感じない。ダメージが有るのか無いか分からない。でも、殴られている感触は確かに存在していた。だから、ウザったい。
『おらっ!!』
俺は力任せに体を捻って背後から抱き付いているデザインドールを柔道の払い腰風に投げ飛ばした。パワーは圧倒的に俺のほうが上らしい。
投げられたデザインドールの体が木人に激突して、二体して重なるように倒れ込む。
『おらっ!!』
俺は倒れているデザインドールの腹にサッカーボールキックを撃ち込んだ。力任せに蹴り飛ばされたデザインドールの体が飛んで行って太い木にぶつかりバラバラに砕け散る。関節という関節から分解されて木っ端微塵だった。
『次はお前だ!』
更に俺は木人の両足を両腕で脇の下に抱え込むと木人をグルグルと竜巻のように振り回す。今度はプロレス技のジャイアントスイングだ。
そして、木人の体を数回グルグル回すと投擲した。飛んで行く木人はデザインドールと同じ大木にぶつかるとバラバラに粉砕される。
残るはフランス人形のみ。
『よし、残るは一体だ』
刹那、背後から背中をカミソリで切りつけられた。切られた感触は分かったが、やはり痛くない。
俺は振り返ると同時に裏拳を振るう。その裏拳がジャンプ中であったフランス人形の顔面を殴り飛ばす。
殴られたフランス人形が森の中に飛んで行った。しかし、直ぐにフランス人形は立ち上がる。顔面にクモの巣のような皹が入っていたが目は見えているようだった。
『当たりが浅かったかな』
『キィキィキィキィーー!!』
奇声を上げながらフランス人形が飛んできた。俺は拳を背後に大きく振りかぶる。そして、タイミングを合わせた拳を後ろから前に豪快に振るった。
『おらっ!!』
全力のストレートパンチが空中でフランス人形の胴体を捕らえる。すると鈍い音が轟く。そのパンチ力でフランス人形の体を突き破って俺の拳が背中から飛び出ていた。拳打が貫通したのだ。
『キィ……』
それでフランス人形は動かなくなった。コアがパンチで破壊されたのかな。
俺の腕に串刺しにされたフランス人形の手足がダラリと下がる。もう動かない。
四対一だが俺の圧勝である。
俺は右腕に突き刺さっていたフランス人形を取ると地面に放り捨てた。まるで糸の切れたマリオネットのようにフランス人形が転がる。
『まあ、こんなものだろう』
言いながら俺は、まだ動いているデザインドールの上半身を踏み潰した。胸に大きな亀裂が走ると上半身だけの人形は動かなくなる。
クレアが冷静な評価を口にした。
「ダメージは受けたが、なかなかの戦力だな」
『ダメージ?』
ダメージなんて受けた感触は無かった。だから俺は首を傾げる。
「背中を切られているぞ。私に見せてみろ」
『このぐらいへっちゃらだ。痛くないし』
感触追加は取ったが痛覚無効は健在だ。だから痛みの感覚は感じられないのだろう。なんか、都合が良くって便利だわ〜。
クレアが溜め息を吐いてから言う。
「お前の体は人間でないのだぞ。自己回復もせんのだ。そこから脆くなって、いずれは体が崩れるぞ」
『なるほど……』
「修理してやる。しゃがめ」
『うぃ』
俺は素直にしゃがんだ。
するとクレアが俺の背後に立って魔法を唱え始める。俺の背中に添えられた彼女の掌が淡く輝いていた。
『治癒魔法で修理なのか?』
「治癒魔法ではない。傀儡系魔法、アーティファクトリペアだ。これで良し」
どうやら修理が終わったらしい。簡単なものである。でも、背中で見えないから、どんな風だか分からない。
「魔法での修理は、時間が過ぎているほど難しくなる。長い時間放置していると、パーツから交換になるぞ」
『ああ、分かったよ』
「老化無効でも、老朽化は無効じゃあないんだからな」
『なるほど、老化ではなく老朽化か……』
俺って、【生命】じゃないんだ、【物】なんだな……。
「よし、じゃあ、秘密基地に入ろうか。流石に私は眠いぞ。もう深夜だからな」
俺は全然眠くない。睡眠無効のお陰だろう。
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