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追放《クビ》から始まる吸血ライフ!~剣も支援も全てが中途半端なコウモリヤローとクビにされたが、実際は底の見えない神スキルだった件~

黒雫

20話 罪人・ロード〈後〉


 頭を下げているので三人の様子がわからないまま、10秒……20秒と、刻々と時間だけが過ぎていく。

 だがしかし、ここで反応を覗うために顔を上げるのは悪手だ。

 向こうが頭を上げて良いと言うまで、この体制を崩しちゃならない!

 三人で何かを相談するようにヒソヒソと話しているが、絶対に気にしちゃいけないんだ!!

「ロード、本当に反省してんだな……?」

 どれだけの時間が経っただろうか。

 不意にリュミナスがそう呟いたのを聞き逃さず、俺は何度も頷いた。

「そうか……。では、お前に判決を言い渡す」

「……はい」

 くそ、やっぱり裁判だったのかよ!

「お前がオレを抱き寄せてから、離すまでは約10秒……。それを3人で頭割りし、一人3つずつお前に願いを聞いてもらうことで許そうと思う。端数については、三人で協議して1つの願いを決めてある。何か異論はあるか?」

 意味がわからねぇ!!

 なんだよ、10秒を頭割りって?!

 そもそもメルシーとアリスにはなんもしてねぇだろ?!?!

 ……なんて、言えるはずもなく。

「わ、わかりました……。俺にできることなら、なんでもさせて頂きます……」

 俺の返事に満足したのか、三人は仕方ねぇと言わんばかりに息を吐きだしたり、ガッツポーズをしたり、不敵に笑ったりと違う反応を見せた。

「まずはすでに決定している、端数の願いだが。これについては、お前にとっても悪くない話だと思うぜ??」

「……内容は?」

「簡単なことですよ。今回のパーティーを臨時のものから正式なものにすることに、ロードさんも同意してくださいねってだけです」

「……ん?」

「ようは、あたしたちでパーティーを組むって話よ。ブレルS級ダンジョンを探索してる間も、凄く動きやすかったし。この四人なら、良いパーティーになるんじゃないかって話してたの」

 確かに俺が宿を出るときにアリスの姿はもうなかったし、約束通りの時間についたときにはすでに三人集まっていたが……。

 ん、待てよ。ということは……?

「ここまでの流れは、全てお前たちの計算通り……ということか?!」

 驚く俺に、ニィーっと笑う三人。

 くそ、はめられた……!!

「おい、勘違いするなよ? 確かに事前の打ち合わせ通りに事は進んだが、オレを襲ったのは事実なんだからな!?」

「はい。申し訳ありませんでした」

 リュミナスに手を出してしまった時点で、すでに俺は詰んでいた訳か。

 思わず不満を顔に出してしまっていたのか、アリスがやれやれと肩を竦める。

「ロードさんは乙女の純潔を奪ったんですよ? むしろ、これくらいで済んでラッキーくらいに思ってもらわないと」

「純潔は奪ってねぇ。純血は奪ったようだが」

「まぁ良いじゃないの。普通、こんな花園パーティーに加入できる男なんていないわよ? 男の夢でしょう??」

 さも光栄に思いなさい? とでも言いたげなメルシー。

 やっぱ引っぱたきてぇ。

「バカな男ならそうかもしれん。だが、普通の男はむしろ敬遠するもんなんだよ! 考えてもみろよ?! ただでさえ男率が高いってのに、周りからは数少ない女冒険者を独占してるようにか見えねぇんだぞ?! 夜道を歩くのがこえーよ!!」

「フフ、世の男どもの憧れになれたわけね。おめでとう、ロード」

 心底楽しそうに笑うメルシー。

 こいつはいつか絶対泣かせてやる。

「さて……。早速ですが、私は願い事を1つ叶えてもらいたいと思います!」

「早くないか……?」

「善は急げ、です!」

「……そうか。で、なんだ……?」

 一体どれだけ無茶ぶりが来るのやら……。

「そんなに心配そうな顔をしないでください。大丈夫です、無理なことはお願いしませんから!」

「お、おう……」

 それなら願うのをやめてくれと思うが、あの顔を見るにやめる気はさらさらなさそうだ。

「私にも吸血をしてください!」

「……は? はぁ?! 待て待て、何を言ってんだお前は?!」

「私がロードさんの初めてをもらいたかったのに……。これ以上誰かに先を越されるのはもう嫌なんです! さぁ、さぁ!!」

「お、落ち着け! な?!」

「落ち着いてます! 冷静です!! 大丈夫です!!!」

 全然大丈夫じゃねぇんだよ!

 ジリジリと滲み寄ってくるアリスの顔はどこか狂気を帯びているようで、ハッキリ言ってとても怖い。

 咄嗟に部屋から逃げ出そうとするも、扉の前に立ちふさがるリュミナス。

「おい、反省してんだよな? なら、まさか逃げ出したりなんてしねぇよなぁ……?」

「お前は自分と同じ仲間を増やしたいだけだろ……?!」

 チッ、こうなれば仕方ない。

 少々お行儀は悪いが、窓から――。

「あら、ごめんなさいね? こっちも行き止まりよ。もう諦めなさい?」

「お前……!!」

 にっこりと笑うメルシーに苛立ちを覚えたのもつかの間、俺はアリスに捕まり押し倒された。

「さぁロードさん、どうぞ! カプッといっちゃってください!!」

「嫌だよ!! 俺は別に血を飲む趣味はねぇぞ?!」

「どうしてですか……? リュミナスさんは良くて、私はダメなんですか……? そんなに私の血は嫌ですか……?」

「そういうことじゃなくてな……?!」

 うるうると瞳をにじませ、今にも泣きそうな顔ですがりつくアリス。

 身体も密着しているし、こいつは俺をなんだと思ってんだ?!

 こちとら立派な男なんだぞ、もっと恥じらいを持ちなさい!!

「ロードさぁん……」

「ああもう、わかったよ! いいか、これは願い事のせいだ! 俺の意志じゃねぇぞ!!」

 誰に言い訳をしているのかわからないが、無性にそう叫びたくなったんだ。

 覚悟が揺るがないうちに、さくっと終わらせよう。

 俺はもう知らん。

 諦めた俺はアリスを抱きしめ固定すると、白く絹のような柔らかいに首筋に歯を突き立てた。

「あんっ……。私の血が、ロードさんの中にぃ……。んっ……んんっっ!」

 恍惚とした表情を浮かべながら、ビクビクと震えるアリス。

「凄いです……。あぁ、もうダメ……んんっ……んーーーーっっ!!」

 ひときわ強くビクビクと震えたアリスは、力なく俺の上に崩れ落ちるとぐったりとした様子でハァハァと息を荒くしていた。

 俺は一体何をしてんだろうな……。

 何とも言い難い複雑な気持ちと、何か大切なものを失ってしまったかのような喪失感を覚えながら、アリスを横に降ろして天井を眺めていると。

「お、おいロード! オレもその、無意識だったお前に血を吸われたってだけだと、なんか嫌だからよ! ちゃんと意識のある今、もっかい吸血して上書きしろ!」

「何を言ってんだお前は……」

「い、いいから早く! 願い事が1つ減らせるんだ、ラッキーだろ!!?」

 顔を真っ赤にしながら馬乗りになったリュミナスは、ずいっと首筋を俺の顔の前へと差し出す。

 もう、どうにでもしてくれ……。

 半ば自暴自棄になりながら、言われるがままに歯を突き立てる。

「くうっ……。や、やっぱりすげぇ……。こ、こんなの癖になるなって方が……んんっ」

 リュミナスが何か言っているが、もう俺は何も聞きたくないから知らん。

「あっ……。やばい……やばいよぉ……。んーーーっ!!」

 先ほど同様、ひときわ強く震えたリュミナスもまた、ぐったりとした様子で俺にもたれかかってくる。

 もはやそれが作業工程であるかのように、無心でアリスとは反対方向に降ろして天井を眺める。

 ああ、これでようやく――。

「ね、ねぇ? その、このままだとあたしだけ仲間外れみたいじゃない? それはちょっと寂しいし、ついでにお願いできるかしら??」

 訳のわからん説明をしながら、どこか興奮した様子のメルシーもまた、俺の上に重なって首筋を差し出す。

 毒を食らわば皿まで、ってか。

 ああいいぜ、こうなりゃとことんやったらーーーー!!

「んんんっっ?! こ、これは予想外ね……っ。ま、まさかこんなに……あぁんっ」

 俺は何も知らない。俺は何もしてない。俺のせいじゃない。俺には関係ない。

 必死に現実逃避しながら、その時を待つ。

「う、うそ……?! そ、そんなぁ……ダメ、ダメよぉ……。も、もう無理ぃ……んんんーーーっ!!」

 見慣れつつある光景に嫌気がさしながら、ハァハァと動けずにいるメルシーをどかすこともできず、ただひたすらに天井を眺め続ける俺。

 そこへ――。

《一定の熟練度に達したことで、『吸血Lv1』が『吸血Lv2』へとレベルアップします》

 という、頭の中で響く訳のわからないアナウンスと。

「おいリュミナス、そろそろ業務に――あぁ?!」

 扉をノックし、中に入って来たカイエンが驚く声が。

 同時に聞こえて来たのだった―――。


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