霧の中に悪魔がいる

full moon

夜の息づかい(16)

 テレビが映しているのは、何やら映画のようだ。

薄暗い監獄。

真っ直ぐに続く廊下の左右には、牢屋が連なっている。

その牢屋を男性が歩いている。

画面は三人称視点で、男性の背から映している。

時折、湿気で画面が白くぼやける。

画面が切り替わり、一つの牢屋を映す。

その牢屋の内側から、橙色の明かりが漏れている。

その明かりが廊下を朧げに照らす。

その牢屋の中には、娘と同じ位の年齢だろうか、幼女が居た。

明かりは、ランタンの灯りだった。

うずくまり、身を固くしている。

その前に立つ、一人の男性。背格好が先程の男性に似ている。

映像は、その男性を背から映している。

男性は、腰を締めていたベルトを取り、鞭のように持つ。

そして、そのベルトを幼女に打ち付ける。

幼女は唇を噛み、声を殺して耐えている。

しかし、ベルトを打ち付ける度に、幼女の目が虚ろになる。

遂には、意識を失い、生気が抜けたように倒れた。

幼女が倒れると、男性は手を止めた。

幼女の両膝と頭に腕を通して抱きかかえる。

牢屋の中の薄汚れているベッドの上に横にした。

映像は、男性を正面から映す。

男性の顔にランタンの明かりが当たる。

右半面が暗くて見えない。

男性は、一つニヤリと口角を上げた。

徐に、ポケットから、注射器を取り出した。

異様に長い針を幼女へ挿した。

映像は男性を映しているので、どこに挿したのかはわからない。

何やら透明な液体が注射器に溜まっていく。

注射器一杯にすると、幼女から注射針を抜く。

満悦した表情を浮かべて、その溜まった液体を見ている。

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