私の世界がなんだかとてもおかしい?件

sono

百四十三話

私、澤口松子はなんとも言えない浮遊感を感じながら、目が覚めた。

銀色に輝く翼で空を飛んでいる北乃雲雀に、私は抱えられていた。

「目が覚めた?松子ちゃん」

抱えている雲雀が、目を覚ました私に問いかける。

雲雀の瞳の縁には、涙を湛えていた。

「雲雀…。晃穂は…?」

「晃穂は…もう…」

私は雲雀に晃穂の安否を聞いた。雲雀は言いづらそうに首をかすかに横に振った。

「晃穂、無事なの!?どうなの!?」

「晃穂は私たちを逃したあと、あのビルに、まだ残ってるわ…」

「えぇ!?晃穂まだあのビルの中にいるの!?早く助けに行かないと!?」

「そうしたいのは山々なんだけど、私は二人抱えて飛べないの!わかって松子ちゃん!」

晃穂の心配をして、もがく私を必死に抱きしめる雲雀。

「松子ちゃんを下ろしたあと、晃穂を助けに行くわ。約束する…!」

「うん、わかった…。絶対に助けに行ってね、お願い雲雀…」

私たちがそう言った瞬間、ビルの最上階あたりの部分が倒壊し、崩れ落ちた。

「晃穂!?いやぁぁぁぁっあっぁぁっぁぁ!!」

晃穂がいた辺りは、瓦礫が空中に散開し、跡形も無くなっていた。


それから数ヶ月後、晃穂の行方は杳としてわからなかった。

私たちはあのあと、ビルのあたりを隈なく探したが、晃穂は見つからなかった。

倒壊したビルは元の通り、復興し何事もなかったように社員たちがせわしなく出入りしている。

そう何事もなかったように、世間は日常を取り戻していた。

ビル倒壊はただの事故として、処理されていた。

晃穂のいない世界は、どこか空虚だ。晃穂を思い出すと涙が溢れてくる。

でも、晃穂は死んだわけではない。そう信じていた。

晃穂はよく言っていた。アンドロイドはそう簡単には死なないと…。

晃穂のことだから、しれっと帰って来そうな気がする。

晃穂、私はずっと待っているからね。晃穂のことずっと好きだから…!

私は涙でぼやけた世界を見渡した。私の世界はなんだか霞んでおかしかった…。

後書き

この小説はこれで終了です。

初めて小説書きました。拙い文章ですが、読んでいただいた方々ありがとうございました。

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