五十五話

「相撲とってみるでごわすか？」

相撲女子高生が晃穂を相撲に誘った。

「いいでありますか？やったであります！相撲初体験であります！」

晃穂はぴょんぴょん跳ねて喜んだ。相撲で喜びすぎだろ？

「では、連れの方行司をお願いするでごわす」

「え？私？」

どうしよう？行司なんてやったことがない。

「はっけよい残ったと、言ってもらえばいいでごわす」

「わかりました。はっけよい残った！」

秋葉原の街中で恥ずかしすぎる。そもそもなんで相撲なんてとってるんだ。

言った瞬間、晃穂と相撲女子高生が、がっぷり四つに組んだ。

「残った残った…」

一応行司の真似事をしてみる。ちなみにはっけよいとは、八卦よいということらしい。

残ったとは負けないで勝ち残ってほしいということらしい。諸説あるらしいが。

あとでちょっと調べてみた。


二人はまだ組み合っている。

相撲女子高生は汗が滝のように流れている。晃穂もかなり汗かいていた。

アンドロイドって汗かくのか？

二人とも顔を真っ赤にしてる。かなり力が入っているらしい。

二人の女子高生が抱き合っているように見えるからか、野次馬が増えてきた。

恥ずかしいので、私は二人から距離を取った。

組み合っているということは、二人の力が均衡しているということか？

不意に晃穂が体制を崩した。その隙を見逃さず相撲女子高生は上手投げで晃穂を投げた。

「おぉー！太ったお姉さんが勝ったぞ！」

野次馬から喝采と拍手が起こった。太ったとは失礼だろう。

「あ、あれは望乃里のぞみのさと」

「知っているのか！？じいさん！」

「両国あたりで一人で相撲の稽古に日夜励むアンドロイド女子高生じゃ！」

勝手に野次馬が解説してくれた。望乃里という名前なのか。晃穂と力が均衡しているから、もしやと思ったがアンドロイドだったとは。

晃穂と望乃里は礼をして相撲を終わらせるのかと思いきや、またがっぷりと四つに組んだ。

まだ、やるのかよ！？汗がこちらまで飛び散って来そうだ。

二人はまたずっと組み合っている。同じような光景だ。しかし、野次馬は盛り上がっていた。

「うぉ！望乃里の浴びせ倒しが出たー！」

野次馬の言うとおり望乃里が晃穂を投げていた。

晃穂が二回も負けるなんて。望乃里というアンドロイドはもしかして強いのか？