同期の御曹司様は浮気がお嫌い
5
「波瑠だけを大事にする。絶対に離れないし裏切らない」
ああもう……こんなに大きい気持ちをぶつけられたら受け止めきれない……。
「自信がないの……優磨くんに相応しくない……可愛くないし、貧乏だし、取り柄もないし……」
美人の元カノには敵わない。そばにいると優磨くんに恥ずかしい思いをさせてしまう。
「波瑠は可愛いよ。笑顔も泣き顔も、照れた顔も全部が可愛い」
恥ずかしくてまた優磨くんの胸に顔を隠す。
「お金なんて気にしない。波瑠がいれば他には何もいらない」
顔を上げられない。今優磨くんの顔を見たらきっと泣いてしまう。
「優磨くん……本当に違うの?」
「え?」
「今の女の人、本当に元カノじゃないの?」
顔を伏せたまま、疑問だけを優磨くんにぶつける。
「あれは彼女でも元カノでも何でもないよ。まず女として見てない。俺の姉だからね」
「え?」
思わず顔を上げてしまう。目の前に真剣な表情の優磨くんの顔がある。
「俺の姉の、城藤美麗」
お姉さん? 元カノじゃなくて?
「姉……」
「そう。俺の姉さん。だから泉さんに迎えに来てもらったの。波瑠の勘違いだよ。ピアスは姉さんが無理矢理泊まりに来た時に無くしたって言ってたやつ」
「そうなんだ……」
「ちなみにあのベッドで寝かせたこともないよ。姉さんはいつも書斎で寝てるから」
ああ、よかった……。
そう思ったら視界が霞む。目から涙が溢れる。
「波瑠?」
「お姉さん……そっかぁ……」
「やっぱ妬いてた?」
優磨くんの腕の中で小さく頷く。
安心した。優磨くんの元カノがあんな綺麗な人だったら勝てないじゃんって思ってしまったから。
「波瑠」
切ない声で名を呼ばれる。
「頼むから俺を好きって言って」
真っ直ぐ気持ちをぶつけてくれたこの人にもう言ってもいいよね、自分の正直な気持ちを。
「優磨くん……好き……」
そう言った瞬間優磨くんの唇が重なる。それは昨夜のキスと同じ、優しく触れて軽く噛んでゆっくりと舌が口の中に入ってくる。
「波瑠、おかえり。俺のとこに戻ってきてくれてありがとう」
「うん……ただいま。これからも優磨くんのところに戻ってきてもいい?」
「大歓迎……」
優磨くんは照れて私の肩に顔をうずめる。
この優しい人がいる限り、私の居場所はこの人のそば。そう思ってもいいよね。
「波瑠……お腹すいた……」
「朝ごはん食べてないの?」
「食べたけど、姉さんが来たからカロリー消費した。何か作って……」
「はいはい」
笑いながら返事をすると優磨くんは私の手を取りマンションの中に引っ張っていく。
それが今では嬉しくて、私は手を握り返す。部屋に戻るまでその手はずっと握られたままだった。
「あの……優磨くん?」
「なあに?」
「いい加減離れてほしいんだけど……」
背後に立つ彼の腕は私の腰に回り、後ろから抱きしめる格好になっている。料理を作っているときも片づけるときも、今もこうして洗濯物を干していても纏わりついて離れない。
「やっと遠慮なく触れられるようになったから」
そう言ってまた耳の後ろにキスをする。
「もう……暇なら手伝って」
私は優磨くんのパンツを肩の後ろに軽く放る。
「はい……わかりました……」
渋々優磨くんが離れて横に来ると洗濯バサミにパンツを挟む。
「今から干して乾くの?」
「ここの部屋高いから今日みたいな天気が良くて風がある日はすぐなんだよ」
地上ではそよ風でもこの部屋は高い位置にあるから風が強く感じることもある。洗濯物がよく乾いていいのだけれど、天気の悪い日は音がすごくて少々心配になる。
「へー、知らなかった」
何でも乾燥機にかけていた優磨くんは窓も滅多に開けないのだという。こんな部屋に住んでいるのにもったいないとつくづく思う。
「あとは? 何かやるの?」
「もう一通り終わったよ。掃除機はかけたいけど」
「じゃあそれは明日に回して今から出かけよう」
「え?」
「デートしよう」
優磨くんが微笑む。デートという言葉に顔が赤くなる。
「え……いいよ、着ていく服もないし……」
「それを買いに行くの」
「え?」
「波瑠って服全然ないじゃん。今から買いに行こうよ」
確かに会社に来ていく服を残して私服はフリマアプリで売ってしまった。それほどお金に困っていた時期があったのだ。
これまで服が少ないことに不便は感じなかったけれど、優磨くんには信じられないことらしい。
「ほら、支度して」
ほとんど強引に促されて優磨くんの車に乗せられる。
機嫌良さそうに運転する優磨くんとは反対に私は憂鬱な気分になる。優磨くんがデートだと思ってくれるのは嬉しいけれど新しく服を買うお金もないし、今は必要性を感じない。
車を止めた場所はお洒落な街として有名な場所だ。ハイレベルの大学や有名企業が多くあり、少し歩くと高級住宅地になる。店はどれも単価の高い飲食店や服屋ばかりだ。駐車場の店は私なら絶対に入らないだろう高そうな服屋だ。
「優磨くんはいつもこの辺で買い物するの?」
「服とかスーツはね」
優磨くんは嫌そうな顔をして「特にスーツは良いもの着ないと舐められる」と呟く。優磨くんのような人でも舐められることがあるのかと不思議に思う。
「波瑠」
名を呼ぶと優磨くんは私に手を差し出す。それがどういう意味か分かったから、私は優磨くんの手に照れながら自分の手を重ねる。
店に入ると私にはあまりにも場違いで逃げたくなる。飾られた服はどれもお洒落で、店員さんも美人で似合う服を着ている。
「彼女に合う服を見繕ってください」
優磨くんが店員さんに声をかけると「かしこまりました」と答えた店員さんに試着室に連れていかれ、何着か服を渡される。
締め切られたカーテンの中で私は戸惑った。値札のない服が多くて恐ろしくなる。何よりも量販店の服しか着ない私には可愛らしい服が似合うと思えない。
「波瑠?」
外から優磨くんが声をかける。
「大丈夫?」
「ああ、うん!」
慌てて渡された服を着てみた。鏡を見ると服はとてもかわいい。けれど似合っているのか疑問だ。
「どうかな……」
カーテンを開けると優磨くんは照れたように笑っている。
「うん……とっても可愛いよ……」
その言葉に私も恥ずかしくなる。本心なのかお世辞なのかわからない。
「とてもお似合いです」
店員さんに「こちらもどうぞ」と次の服も渡される。
結局何着も試着して、優磨くんはその全てを「買います」と告げる。
「いやいやいや……」
店員さんから聞いた総額が桁違いに高くて買えるわけがない。けれど優磨くんは「これで」とクレジットカードを店員さんに手渡す。
「だめだよ優磨くん!」
「なんで? 俺が買いたいのに?」
「でも……」
「全部波瑠に似合ってるよ。それも今から着て行こう」
私は試着した服をまだ着ている。「このまま着ていきます」と優磨くんが店員さんに言ったときには顔が青ざめた。
「次は靴だね」
大きな紙袋を持って店を出ると優磨くんは道路を見渡した。
「え? まだ買うの?」
機嫌よく車を走らせた優磨くんは数十メートル行ったところで再び車を停める。
これまた上品な靴が並ぶ店内に手を引かれると「彼女に合う靴を」と何足も履かされた。
ここまでぺたんこなパンプスを履いていたのに、新しくヒールの高いものに足が包まれる。
私の全身は今総額いくらなのだろう。自分が自分でなくなっていく感覚で倒れそうになる。
買ってもらった靴を履き、慣れない歩き方になる私に合わせて優磨くんもゆっくり歩いてくれる。
車に紙袋を入れると後部座席は埋まってしまった。
「次はアクセサリーとバッグだね」
「ちょっと待って!」
私は慌てて止める。
ああもう……こんなに大きい気持ちをぶつけられたら受け止めきれない……。
「自信がないの……優磨くんに相応しくない……可愛くないし、貧乏だし、取り柄もないし……」
美人の元カノには敵わない。そばにいると優磨くんに恥ずかしい思いをさせてしまう。
「波瑠は可愛いよ。笑顔も泣き顔も、照れた顔も全部が可愛い」
恥ずかしくてまた優磨くんの胸に顔を隠す。
「お金なんて気にしない。波瑠がいれば他には何もいらない」
顔を上げられない。今優磨くんの顔を見たらきっと泣いてしまう。
「優磨くん……本当に違うの?」
「え?」
「今の女の人、本当に元カノじゃないの?」
顔を伏せたまま、疑問だけを優磨くんにぶつける。
「あれは彼女でも元カノでも何でもないよ。まず女として見てない。俺の姉だからね」
「え?」
思わず顔を上げてしまう。目の前に真剣な表情の優磨くんの顔がある。
「俺の姉の、城藤美麗」
お姉さん? 元カノじゃなくて?
「姉……」
「そう。俺の姉さん。だから泉さんに迎えに来てもらったの。波瑠の勘違いだよ。ピアスは姉さんが無理矢理泊まりに来た時に無くしたって言ってたやつ」
「そうなんだ……」
「ちなみにあのベッドで寝かせたこともないよ。姉さんはいつも書斎で寝てるから」
ああ、よかった……。
そう思ったら視界が霞む。目から涙が溢れる。
「波瑠?」
「お姉さん……そっかぁ……」
「やっぱ妬いてた?」
優磨くんの腕の中で小さく頷く。
安心した。優磨くんの元カノがあんな綺麗な人だったら勝てないじゃんって思ってしまったから。
「波瑠」
切ない声で名を呼ばれる。
「頼むから俺を好きって言って」
真っ直ぐ気持ちをぶつけてくれたこの人にもう言ってもいいよね、自分の正直な気持ちを。
「優磨くん……好き……」
そう言った瞬間優磨くんの唇が重なる。それは昨夜のキスと同じ、優しく触れて軽く噛んでゆっくりと舌が口の中に入ってくる。
「波瑠、おかえり。俺のとこに戻ってきてくれてありがとう」
「うん……ただいま。これからも優磨くんのところに戻ってきてもいい?」
「大歓迎……」
優磨くんは照れて私の肩に顔をうずめる。
この優しい人がいる限り、私の居場所はこの人のそば。そう思ってもいいよね。
「波瑠……お腹すいた……」
「朝ごはん食べてないの?」
「食べたけど、姉さんが来たからカロリー消費した。何か作って……」
「はいはい」
笑いながら返事をすると優磨くんは私の手を取りマンションの中に引っ張っていく。
それが今では嬉しくて、私は手を握り返す。部屋に戻るまでその手はずっと握られたままだった。
「あの……優磨くん?」
「なあに?」
「いい加減離れてほしいんだけど……」
背後に立つ彼の腕は私の腰に回り、後ろから抱きしめる格好になっている。料理を作っているときも片づけるときも、今もこうして洗濯物を干していても纏わりついて離れない。
「やっと遠慮なく触れられるようになったから」
そう言ってまた耳の後ろにキスをする。
「もう……暇なら手伝って」
私は優磨くんのパンツを肩の後ろに軽く放る。
「はい……わかりました……」
渋々優磨くんが離れて横に来ると洗濯バサミにパンツを挟む。
「今から干して乾くの?」
「ここの部屋高いから今日みたいな天気が良くて風がある日はすぐなんだよ」
地上ではそよ風でもこの部屋は高い位置にあるから風が強く感じることもある。洗濯物がよく乾いていいのだけれど、天気の悪い日は音がすごくて少々心配になる。
「へー、知らなかった」
何でも乾燥機にかけていた優磨くんは窓も滅多に開けないのだという。こんな部屋に住んでいるのにもったいないとつくづく思う。
「あとは? 何かやるの?」
「もう一通り終わったよ。掃除機はかけたいけど」
「じゃあそれは明日に回して今から出かけよう」
「え?」
「デートしよう」
優磨くんが微笑む。デートという言葉に顔が赤くなる。
「え……いいよ、着ていく服もないし……」
「それを買いに行くの」
「え?」
「波瑠って服全然ないじゃん。今から買いに行こうよ」
確かに会社に来ていく服を残して私服はフリマアプリで売ってしまった。それほどお金に困っていた時期があったのだ。
これまで服が少ないことに不便は感じなかったけれど、優磨くんには信じられないことらしい。
「ほら、支度して」
ほとんど強引に促されて優磨くんの車に乗せられる。
機嫌良さそうに運転する優磨くんとは反対に私は憂鬱な気分になる。優磨くんがデートだと思ってくれるのは嬉しいけれど新しく服を買うお金もないし、今は必要性を感じない。
車を止めた場所はお洒落な街として有名な場所だ。ハイレベルの大学や有名企業が多くあり、少し歩くと高級住宅地になる。店はどれも単価の高い飲食店や服屋ばかりだ。駐車場の店は私なら絶対に入らないだろう高そうな服屋だ。
「優磨くんはいつもこの辺で買い物するの?」
「服とかスーツはね」
優磨くんは嫌そうな顔をして「特にスーツは良いもの着ないと舐められる」と呟く。優磨くんのような人でも舐められることがあるのかと不思議に思う。
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名を呼ぶと優磨くんは私に手を差し出す。それがどういう意味か分かったから、私は優磨くんの手に照れながら自分の手を重ねる。
店に入ると私にはあまりにも場違いで逃げたくなる。飾られた服はどれもお洒落で、店員さんも美人で似合う服を着ている。
「彼女に合う服を見繕ってください」
優磨くんが店員さんに声をかけると「かしこまりました」と答えた店員さんに試着室に連れていかれ、何着か服を渡される。
締め切られたカーテンの中で私は戸惑った。値札のない服が多くて恐ろしくなる。何よりも量販店の服しか着ない私には可愛らしい服が似合うと思えない。
「波瑠?」
外から優磨くんが声をかける。
「大丈夫?」
「ああ、うん!」
慌てて渡された服を着てみた。鏡を見ると服はとてもかわいい。けれど似合っているのか疑問だ。
「どうかな……」
カーテンを開けると優磨くんは照れたように笑っている。
「うん……とっても可愛いよ……」
その言葉に私も恥ずかしくなる。本心なのかお世辞なのかわからない。
「とてもお似合いです」
店員さんに「こちらもどうぞ」と次の服も渡される。
結局何着も試着して、優磨くんはその全てを「買います」と告げる。
「いやいやいや……」
店員さんから聞いた総額が桁違いに高くて買えるわけがない。けれど優磨くんは「これで」とクレジットカードを店員さんに手渡す。
「だめだよ優磨くん!」
「なんで? 俺が買いたいのに?」
「でも……」
「全部波瑠に似合ってるよ。それも今から着て行こう」
私は試着した服をまだ着ている。「このまま着ていきます」と優磨くんが店員さんに言ったときには顔が青ざめた。
「次は靴だね」
大きな紙袋を持って店を出ると優磨くんは道路を見渡した。
「え? まだ買うの?」
機嫌よく車を走らせた優磨くんは数十メートル行ったところで再び車を停める。
これまた上品な靴が並ぶ店内に手を引かれると「彼女に合う靴を」と何足も履かされた。
ここまでぺたんこなパンプスを履いていたのに、新しくヒールの高いものに足が包まれる。
私の全身は今総額いくらなのだろう。自分が自分でなくなっていく感覚で倒れそうになる。
買ってもらった靴を履き、慣れない歩き方になる私に合わせて優磨くんもゆっくり歩いてくれる。
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