人生やり直しますか?それとも転生しますか??

ノベルバユーザー529291

例えばこんな世界なら


享年36歳
それが、俺「三津木直哉」の短い人生を終えた・・・いや、終えたと思った歳だった。
『お久しぶりです。』
そいつの第一声はそんな言葉だった。
そこに立っていたのは、見まごうことなく俺三津木直哉その人だった。
鏡かと思い手を伸ばせば、俺の手は、いつの間にかなくなっていた。
いや、手だけではない、足も体も、見える範囲で確認できる部分に何一つ、俺の体は残っていなかった。
そんな俺の戸惑いを無視して奴は話し出した。
『混乱してるところ悪いですけど、僕のこと思い出してもらいますね~。』
俺が何か言葉を発するよりも早く、俺の意識は揺さぶられ、ありえない光景を思い出した。
それは、俺が13歳の時に死に、この部屋に来た時の姿だった。
そうだった、俺はいじめに耐えられず自殺したんだ、そして、この部屋に来たんだ・・・
『人生やり直しますか?それとも転生しますか??』
そいつの第一声はそんな言葉だった。
言っている意味が分からず、死んだと思ったのに生きている感覚に驚愕し、絶望した自分に奴は丁寧に状態を教えてくれていた。
この場所は転生とやり直しを選べる場所で、転生を選べば生きている時の"徳"等が加味され様々な転生を行われる。
人以外にも様々な動植物へと転移先があり、徳が高ければそれらの選択すら可能になるとの事だったが、俺は享年13歳だ。
徳もそれほど高くなく、逆にマイナス面が多いとの説明をされた。
それでも、最初はもう一度あの苦痛に満ちた生活を送るぐらいならと転生を選ぶつもりだった。
そんな俺にそいつは言ったのだ。
『一部の記憶を持ち帰れたらどうですか?』
これは俺にだけ与えられたチャンスではないが、一番間違えてはいけないことを覚えておけば同じような目には合わない。
様々な図でそいつは子供の俺に説明した。
そんな話を聞くうちに、俺はそいつの口車に乗せられてやり直しを選んだのだ。
「ああ、思い出したぞ糞ったれ!何が大人になれば人生バラ色だ!!学校あんなところを作り出した社会なんかに期待なんかできるわけがなかったんだ!!!おかげで俺は30でリストラされて再就職もできずに食いっぱぐれて最後は自殺だ!!!!最初と何ら変わねぇんだよ糞が!!!!!」
この後、俺の無いはずの頭からアドレナリンが出てたのか延々とそいつを罵倒した。
何を言ったのかすらよく覚えていない。
不満をすべてぶちまけて、それでも俺は怒りのままにそいつを凝視した。
言いたいことはすべて言ったが収まらないこの怒りを、もっとこいつにぶつけることはできないかと思っていた時に、そいつはまた話し始めた。
『それでも享年は延びました、どうします、転生します?今ならそうですね、動物の中でも小型の奴にならなれると思いますよ。』
そういってすやすやと眠る猫や犬の映像を出した。
「ふざけんな!あいつらだって飼われる相手を選べなければ最悪数日もしないでのたれ死ぬ、誰が好き好んでなるか!!」
『アハハ、よくわかってますね、でも、徳をためなきゃろくな選択肢はありませんので、私はやり直しをお勧めしますよ。』
36にもなって、俺はこんな奴に返す言葉も思いつかない自分に嫌気がさした。
だが、やり直してどうなる?
中学生の頃の自殺を避けるために媚を売るべき相手を覚えてやり直した、結果がくそみたいな学校にしか入れず、社会に出てもうだつが上がらず、結果何とか入った会社も不況のあおりで大量解雇、結果は30代でリストラされ、再就職もできず貯金も底をついてクレジットカードも止まり、泣く泣く実家に戻れば罵声の後に、両親ともに病気で介護が必要になり、介護と罵声に耐えかねて結局自殺だ。
『おやおや、こんなに大きくなったのに、まだいじめの対応を考えるんですか?』
「うるせえ!そこ超えないとまた自殺コースだろうが!!」
『本当にそうですか?』
俺の顔をしてそいつはそう首を傾げた。
・・・そうだ、中学のいじめなんて、社会に出てみれば大したもんじゃない。
いや、むしろ、中学だって頑張れば別のところに行くっていう道があった。
それをしなかった結果があの中学に入り、底辺高校中退の工場勤務30でリストラっていう糞みたいな生活になったんだ・・・
ある!
あいつらに関わらず、しかも、俺のことを欠陥品扱いした親父たちにも文句を言われないであろう道が・・・
「そうだ、勉強していい中学に入れば・・・私立の中学校に入れば、俺の人生は変わる・・・」
『おや、いい答えですね。』
「俺の体で気色悪い笑いを浮かべるな!」
俺はその顔を見てそう口にしたが・・・
『おやひどい、あなた自身の顔ですよ。』
そう、特大ブーメランだった。



享年48歳
それが、俺「三津木直哉」の短い人生を終えた・・・いや、終えたと思った歳だった。
『お久しぶりです。』
そいつの第一声はそんな言葉だった。
そこに立っていたのは、見まごうことなく俺三津木直哉その人だった。
鏡かと思い手を伸ばせば、俺の手は、いつの間にかなくなっていた。
いや、手だけではない、足も体も、見える範囲で確認できる部分に何一つ、俺の体は残っていなかった。
そんな俺の戸惑いを無視して奴は話し出した。
『混乱してるところ悪いですけど、僕のこと思い出してもらいますね~。』
俺が何か言葉を発するよりも早く、俺の意識は揺さぶられ、ありえない光景を思い出した。

『人生やり直しますか?それとも転生しますか??』

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