魔王の子供に転生した女子高生、悪魔が怖くて魔界から追放される。しかし天使様に見初められ人間界で無双する。
第192話 神守聖王国オリュンポス パート1
一方、パーシモンの町では・・・
「バルカン、神剣はまだできないのか」
アポロ公爵がバルカンを急かす。
「アポロ兄さん、神剣を作るには、最低10年はかかると言われています。それを1ヶ月で作るとなると、バルカンは己の寿命と引き換えにして、鍛治の能力を使わないといけないのです。これ以上日数を短縮すると、バルカンは神剣を作る前に死んでしまうかもしれないです」
とケレス団長がバルカンを庇う。
「バルカンの一族は、神剣を作るためにだけ生まれてきた一族だ。死と引き換えに神剣を作るのは、当然の責務であろう」
「その通りでございます。アポロ公爵様のお望みならば、3週間で神剣を完成させます」
とバルカンは答える。
「だめだ、それでは遅い。2週間で作れ。それが最大の譲歩だ」
アポロ公爵は焦っていた。
神守教会に援軍を送ることができず、神守教会から裏切り者と認定されてしまった。結果としては、神守教会は、ブラカリの侵攻は失敗して、神守教会の影響力は激減して、教皇も王都の総本部から姿をくらましてしまった。なので神守教会に手を貸さなかったのは正解であった。
しかし、神守教会を影から支えていたのは国王であり、このまま神守教会が衰退するとは思えないのである。アポロ公爵は、神守教会が力を取り戻して、いずれ報復をしてくるだろうと考えているので、神守教会と対立している、ネテア王妃様の派閥に入れてもらおうと必死であった。だから、バルカンの作る神剣がすぐにでも欲しいのであった。
「アポロ公爵様、ネプチューン侯爵様の使いの者が来ています」
「ネプチューンだと・・・わかった。会議室に通しておけ」
「わかりました」
「ケレス、お前はネプチューンはなぜ俺に使いを出した思う」
「共闘を求めているのだと思います。国王様はアレスが死んだ神守教会に見切りをつけて、神光教団の力を借りて、ブラカリへ再度攻め入るか、それとも、本命であるネテア王妃様を亡き者にしようとしているのかもしれません」
「確かに、それも一理あるな・・・。ケレスお前ならどうする」
「バルカンの話しでは、ブラカリを守るのに協力した冒険者は、かなりの実力者だと聞いています。その冒険者を敵にまわすのは得策とは思えません。なので、誠意を持ってネテア王妃様に懇願するのが良いと思います」
「バルカンもそう思うか?」
「はい。あの冒険者を敵に回すのはやめた方が良いと思います」
「そうか・・・考えておく」
そう言って、アポロ公爵は会議室に向かった。この時、アポロ公爵はブラカリに協力した冒険者とは『金玉』だと思った。しかしバルカンが言っているのは『ラスパ』のことであった。
「アポロ公爵様、お久しぶりです」
「まさか、ハデスをよこすとわな」
ハデスは、神光教団の教祖である。
「それほど、ネプチューン侯爵様がアポロ公爵様のお力が欲しいのです」
「そんな社交指令はいらないぞ。神守教会での派閥争いに負けたネプチューンが、俺をよく思っていないのは知っている。しかし神守教会がブラカリの侵攻で失敗し、大きな戦力を失った。そして俺は、援軍を取り止めて、神守協会からは裏切り者扱いだ。そんな俺の立場を嘲笑いに来たのか!」
「そんなことはありません。ドウェイン教皇は、『金玉』を軽視しすぎていたのです。『金玉』のソールとマーニは、この国最強の冒険者と言ってもおかしくないでしょう。それなのに、ドウェイン教皇はアレス1人に全権を委ねました。そして、その結果は神守教会の軍勢はほぼ壊滅しました。しかし、ネプチューン侯爵様ならそんな愚策は取りません」
「ほほう・・・それなら何かいい案があるのだな」
「もちろんです。しかしそれを実行するには、バルカンが作る神剣が必要なのです。噂によると神剣の製作に取り掛かっていると聞いています。それも、短期間で作り上げると」
「どこで、その情報を仕入れてたのだ」
「情報などすぐに漏れるものです。私たちの作戦には、神剣が2本必要なのです。1本は国王様より支給される予定です。そして、もう1本はアレスが持っていたグラムを使用したいのですが、今はブラカリの町が管理して、手出しができません。なので、バルカンの作る神剣が欲しいのです」
「わかった。バルカンの神剣はネプチューンに渡そう。それでだ、その見返りに、俺は何を手に入れることができるのだ」
「この作戦が成功した暁には、アポロ公爵様にはコーンウォリス伯爵の領地と栄誉称号を与えると国王様が言っておりました」
「それはいい話しだな。それで詳しい作戦を教えろ」
「わかりました」
「ケレス団長、少し変わられましたね」
とバルカンが言う。
「そうか?俺にはわからないが、最近それをよく言われるぞ。どう変わったのだ」
「そうですね。1番変わったのは、種族による差別がなくなったことです」
「どうも以前の記憶が曖昧なので、俺にはよくわからないが、種族なんて関係ないだろう。みんな仲良く暮らしたらいいじゃないのか」
「その通りです。アポロ公爵様も同じように考えてくれたら、いいのですが・・・」
一方、ガッリーナの町では・・・
「ドウェイン教皇様とあろうものが、私にどのような御用ですか?」
とネプチューン侯爵が言う。
「一旦和解をしようではないか」
「和解とはどう言うことですか?」
「お前を、神守協会から追放したことは、今でも後悔している。あの時お前の案を採用していれば、こんなことにはならなかっただろう。アレスの力を信じた俺が間違っていた。やはりハデスの力を利用すべきだったのだ」
「ドウェインよ、ハデスは今やハデス教祖として、このネプチューン領では皆から慕われている。神守教会の時代は終わったのだよ。これからは、ハデスを教祖とした神光教団の時代が来るのだ。国王様から、俺にネテア王妃を暗殺しろと依頼がきた。そして、お前はもう必要ないと言っていたぞ」
「国王様が、そんな事言うはずはないだろ」
「ブラカリでのお前の失敗で、国王様の支持者がかなり激減した。このままでは、国王様は国から追放される危険があるので、焦っているのだ。ハデスの能力は最強だ!それにアレスも俺の配下になった。これで、俺は強大なる力を持つ死体を2体手に入れたのだ。あと神剣さえ手に入れれば、俺はこの国の王にだってなれるはずだ」
「お前・・・何を考えておる。この国の王になるなんて発言したらどうなるかわかっているのか」
「問題ない。お前はもう、この世にはいないからな・・・」
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