魔王の子供に転生した女子高生、悪魔が怖くて魔界から追放される。しかし天使様に見初められ人間界で無双する。
第29話 ラディッシュの町パート1
私に、声をかけてきた女性を見ると、頬を膨らまして、ぷっいっと顔をそむけた。私は、魔王の子供である。天使様には、失礼だが、天使と思われて、イラッとしたのである。
私がそっぽを向いたので、女性が困惑している。すると、馬車から、別の女性が降りてきた。
「助けていただいて、ありがとうございます。私の護衛が、何か失礼なことを、言ったのなら、申し訳ございませんでした。私は、馬車の中から、あなたの魔王の様な、圧倒的な力を見て、驚愕してしまいました」
魔王の様な・・・・私はその言葉に素早く反応した。先程とは違い、顔が緩み、ニヤけてしまった。
「いえいえ、そんな魔王様のような力は、私にはありません。私は、ただの通りすがりの冒険者ですから」
私の、あきらかな態度の変わり様に、少し驚いているが、機嫌が戻って安心しているみたいだ。
「いえいえ、まだ幼いのに、オークスターを一振りで、首を落とすなんて、大魔王級の強さだと思います。今回は、お嬢様を助けていただいて、本当にありがとうございます」
護衛の女性が、魔王と言われて、喜んでいる私の姿を見て、ここぞとばかりに、私を持ち上げるのであった。
しかし、そんなみえみえのお世辞に、のってしまう私ではない・・・こともない。私は、とても良い気分になってしまったのである。いわゆる、ナチュラルハイである。
「困っている人を、助けるのは当然です。そう言えば、何人か負傷している人が、いるみたいだけど、大丈夫ですか?」
「お気遣いありがとうございます。私以外の護衛兵の9名、冒険者が2名、が瀕死の状態です。なかには腕や、足を失った者もいます。私たちでは、もう助けることはできません。まだ生きていることが、奇跡なことです」
「私が治してあげるよ」
瀕死の状態までいくと、レベルの低い治癒魔法では、助けるのはことは難しい。さらに、四肢の欠損となると高位の治癒魔法が必要だ。
しかし、私はラファエル様から授かった身体的、精神的な治癒の能力がある。それに加えて、アズライール様から授かった、魂を助ける能力を使えば、蘇生だって可能である。私にかかれば、治せないものはないのである。
私は、とても気分がよかったので、目立たない行動をするつもりが、後々に、大事になるほどの、魔法を使ってしまったのである。
「これで、もう大丈夫です。私は急ぎますので、これで失礼します」
「もう、行かれるのですか?私はこの辺りの領主の娘です。お礼をしたいので、ラディッシュの町に、寄って行きませんか?」
領主の娘・・・。これはまずい事になったかも。わたしのチートが、バレるかもしれない。レーザービームで、オークの大群を殲滅したのを、見られていない事を祈ろう。
「領主様のご息女様でしたのね。それでしたら、明日お伺いいたします。丁度明日に、お伺いする予定がありますので」
そう告げると、私は逃げるように、飛び去ったのであった。
「あの女の子は、何者だったのかしら」
「通りすがりの冒険者と、言っていましたが、頭には白い2本のツノ、背中には天使の様な白い翼が生えた可愛い女の子の冒険者なんて、聞いたことはないわ」
「あれ程の実力があれば、すぐに噂になるはずよ」
「魔王に、憧れているみたいだから、あの町の関係者かもしれないわ。それなら亜人というのも納得できるわ」
「私は、馬車の中から、遠くの空が、白く輝いたと思ったら、無数の光が、オークの大群に降り注ぐのを見たのよ。あの光のような魔法で、オークの大群を、殲滅したのだと思うわ。まるで殲滅の魔王のように・・・」
「あーー、失敗してしまった」
私はかなり、やらかしてしまった。力を使い過ぎたかもしれない。いろいろと聞かれたら、面倒である。何か聞かれた時の、逃げ道を用意しとかないといけない。
まず、宿屋に戻ったら、ロキさんに説明しないと、厄介になりそうだ。
しかし、あの場から逃げて来たので、せっかく倒した、オークスターの、装備品を忘れたのは、もったいなかった。
私は宿屋に戻ると、トールさんも、戻って来ていたので、皆さんに、今日の出来事を説明した。ロキさんと、ポロンさんはかなり驚いていた。いろいろ質問されると思ったが、トールさんが、そんなことより、例の唐揚げを作ってくれと、急かすので、私は、宿屋の調理場を借りて、唐揚げを作ることにした。
「こいつは、絶品だな。俺は前から、このパーティーには、料理人が必要だと思っていたんだよ。悲願が達成して、俺は嬉しいぞ」
トールさんは本気の涙を出しながら、喜んでいた。
私は、料理の保管を、考えていたので、1人で、夜中まで料理作りをがんばっていた。トールさんの盗み食いと、戦いながら。
翌朝、ラディッシュの町へ向かう前に、ポロンさんが、どうしても翼を、見てみたいと言うので、私は、皆さんに翼を、披露したのであった。
「カワイイ」
そう言うと、ポロンさんは、私を抱きしめてきた。
「苦しいです。ポロンお姉ちゃん」
「ごめんね。可愛いから、つい抱きしめてしまったわ」
「出かけるぞ。でも、ルシスは空を飛んで行くか?」
「私もみんなと、一緒に行きたいです」
そう言うと、私は馬車に乗り込み、ラディッシュの町へ向かった。
          
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